MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

決定力!(チップ・ハース&ダン・ハース)

『決定力!』(チップ・ハース&ダン・ハース)(◯)

 いい本でした!意思決定で陥りそうな思考の罠にどのように対処すれば良いのか。ティーンエイジャーの意思決定とビジネス上の意思決定はほぼ同じ罠に陥る。行動経済学、行動心理学に基づく意思決定の悪しきパターンを提示した上で、その対応策を考える一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯意思決定の4つの罠

スポットライトの中にあるもの(=一番手に入りやすい情報+その情報に対する私たちの解釈)を選んでしまう。スポットライトを動かせば、意思決定の4つの罠に勝てる。

視野狭窄

・選択に直面する⇨でも「視野狭窄」によって選択肢を見逃してしまう

②確証バイアス

・選択肢を分析する⇨でも「確証バイアス」によって都合の良い情報ばかり集めてしまう

③一時的な感情

・選択する⇨でも「一時的な感情」によって間違った選択をしがちになる

④自信過剰

・選択の結果を受け入れる⇨でも未来の出来事について「自信過剰」に陥りやすい

 

◯4つの罠を克服するWRAPプロセス

①選択肢を広げる

②仮説の現実性を確かめる

③決断の前に距離を置く

④誤りに備える

 

視野狭窄から抜け出すには

機会費用を考える

「この選択をしたら何をあきらめなければならないか?」

「同じ時間とお金で何ができる?」

・選択肢の消去テストを試す

「今考えている選択肢がどれも選べないとすると、他に何ができる?」

・実は意思決定の65%は、「◯◯はやめる」などの決意表明(選択肢がない意思決定)と「〜べきか否か」(一つの選択肢について考える意思決定)であり、実際には選んでいない。

 

◯マルチトラックする

・2つ以上の選択肢を並行して検討する

⇨複数の選択肢を同時に検討すれば、問題の輪郭がわかる

・「予防焦点」:悪い結果を避ける

・「促進焦点」:良い結果を追求する

⇨この2つの選択の観点を「AかBか」(or)ではなく、「AもBも」(and)で考える

・選択肢がない「〜べきか否か」よりも、選択肢が複数ある意思決定の方が成功と評価される割合が高い。

 

◯自分と同じ問題を解決した人を見つける

・アドバイスを記録することで、「問うべき疑問」「参照すべき原則」「検討すべきアイデア」が詰まったプリリストが出来上がる。

・チェックリストはミスを予防するのに役立つが、プレイリストは新しいアイデアを刺激する

 

◯逆を考える

・確証バイアス:思い込みを裏付ける情報を探そうとする。

⇨逆を考えることで、厄介な認知のバイアスの多くを抑えられる

・組織内で建設的な反対意見を生み出すことが必要

・信頼できる情報を集めるには、反証的な質問をするといい

・究極の反証:強制的に直感の”逆を考える”には?

 

◯ズームインとズームアウト

・私たちは直感よりも”平均値”を信じることが多い

・内部の視点:特定の状況に対する自分自身の評価

・外部の視点:自分と同じ状況では一般的にどんなことが起きているのか。外部の視点の方が正確だが、ほとんどの人は内部の視点に偏る。

・ズームインして現実のより繊細なイメージを掴むこと

 

◯ウーチングする

・ウーチング:全力投球する前に、小さな実験を行って自分の仮説を検証すること

 

◯一時的な感情を乗り越える

・10・10・10プロセス:10分後にどう感じるだろう?10ヶ月後は?10年後は?

⇨感情を平坦にならすのに役立つ

・10・10・10プロセスが役立つからと言って、長期的な視点がいつも正しいとは限らない。10・10・10プロセスは感情を唯一の選択肢にしないようにするためのもの

・単純接触効果:私たちは馴染みのあるものを好む

・損失回避:利益の喜びよりも損失の痛みの方が大きい

・傍観者の視点

・「親友が同じ状況にいたら、なんとアドバイスするか?」

⇨自分よりも他人について考えたときの方が事実に気づきやすい。

・他人へのアドバイスには2つの大きな利点がある。

①意思決定の最重要な要素を自然と優先できる

②一時的な感情を脇に置いておけること。

 

◯核となる優先事項を貫く

・意思決定に苦しむのは、核となる優先事項同士が対立しているサインであることが多い

・核となる優先事項を明文化することで、現在や未来の葛藤を解決しやすくなる

⇨この初歩的なアドバイスも実際に守っている人は少ない。その理由は2つ。

①ほとんどの人は、必要に迫られるまで優先事項を定めない。

②優先事項を定めることと優先事項を守ることは違う。

 

◯未来を幅で考える

・未来は点ではなく”幅”だ

・未来を幅で考えるには、スポットライトを左右にくまなく照らし、想定される出来事の全体像を描き出す必要がある。そして、悪い状況(事前検屍)と良い状況(前祝い)の両方に備えれば、曲面を有利に運ぶことができる。

 

◯アラームをセットする

・小分けは抑制に効果的

・リスクに上限を設け、上限に達するまで安心を手に入れることができる。

 

◯プロセスを信じる

・WRAPプロセスを日常的に使えば、公平感を生み出すことができるだろう。

・なるべく多くの人を意思決定に巻き込み、全員に納得してもらうこと。

 

 これまで読んできた意思決定の本の中では、最も分かりやすい内容でした。各留意点を整理することで、意思決定に悩んだ際の次の行動がとりやすくなると思います。これは、コンテンツ化してお伝えしたいことが詰まっており、ワクワクします。

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