共感力(編:ハーバード・ビジネスレビュー編集部)
『共感力』(編:ハーバード・ビジネスレビュー編集部)(◯)
本書は、「共感」をテーマにした、ハーバードビジネスレビューの論文集です。私たちは共感的に物事を考え、話してくれる相手に対して非常に好感を持ち、親和的に振る舞いたくなります。闘争力を持たない私たち人類にとっては、群れを組織することこそが生き延びるための武器であり、共感力はいわば、私たちにとっての最終兵器でもあったようです。そんな、人類が生きていく上で大切な共感力に対する様々なアプローチを知ることができる一冊です。意外な研究結果が多いのも魅力です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯『共感力とは何か』(ダニエル・ゴールマン)
・共感の3タイプ
①認知的共感:他者の視点を理解する力
②情動的共感:他者の感情を汲み取る力
⇨相手の感情に対する自分の反応に意識的に注意を向け、他方では、表情や声の調子などから相手の感情は幅広く読み取る。
③共感的関心:相手が自分に何を求めているかを察知する力
⇨他者の痛みを感じる力を保ったまま、自分の苦悩とうまく付き合うことが求められる。
◯『部下への思いやりは叱責に勝る』(エマ・セッパラ)
・思いやりは信用しようとする意思を強化するもの。人々はリーダーの信頼性に対して非常に敏感だが、思いやりを示されるとリーダーへの信頼感を強める。簡単に言えば、共感を示してくれる上司に対して、人の脳はポジティブに反応する。
・部下が重大なミスを犯した時に思いやりをもって対応する方法
①少し時間をとって冷静になる
②部下の立場に自分を置いてみる
③許す
◯『優れた聞き手はどう振る舞うか』(ジャック・ゼンガー、ジョセフ・フォークマン)
・私たちの経験上、ほとんどの人は次の3つのことをすれば良いと思っているが、私たちが最近行った研究では、こうした振る舞いは優れた傾聴スキルの特徴とは程遠いことが示されている。
①相手が話している時に話さない。
②表情や相づちを通じて、自分が効いているということを相手に知らせる。
③相手が言ったことをほぼ一言一句繰り返せる。
・4つの主要な研究結果
①良い傾聴は、相手が話している間に黙っていれば良いというものでは決してない。
②良い傾聴は、相手の自己肯定感を育むようなやり方を伴う。
③良い傾聴は、協調的な会話のようなものである。
④良い聞き手は、提案を投げかける傾向がある。
・良い聞き手は、相手が言っていることをしっかり吸収するスポンジのような存在だ。そう考える人が多いのに対し、この調査結果からわかるのは、良い聞き手はむしろ、遊具のトランポリンに似ているということだ。つまり、アイデアのキャッチボールが弾むようにできる人だと言える。
・傾聴のいろいろなレベル
①安全な環境を作り出す。
②相手に注意を集中させて、適切なアイコンタクトを取る。
③相手が言わんとしていることの本質を理解しようと努める。
④非言語的手がかりを観察する。
⑤目の前の話題に関する相手の感情や気持ちを、徐々に理解していき、見極め、受け入れる。
⑥相手が置いている前提が明らかになるような質問を投げかけ、その人が新たな視点で問題を捉えられるようにサポートする。
◯『子育て経験がある上司とない上司、どちらが育児の苦労に共感してくれるか』(レイチェル・ルタン、メアリー=ハンター・マクダネル、ロラン・ノルドグレン)
・過去に苦境を乗り越えた経験を持つ人は、似たような苦境にあり克服できないでいる人に対して、特に厳しい見方をする傾向が強いようだ。
・「どの程度辛かったかを思い出せない」状態と、「自分の力で乗り越えることができた」という気持ちが組み合わさると、どうなるか。その苦境は克服できるはずだという考えが生まれ、克服できず苦しんでいる他者への共感が薄れてしまう。
・多くの人々は、共感してくれる可能性が実は最も低い相手に、直感的に共感を求めてしまいやすい。
・「相手の立場に立って考えてみればいい」。この言葉は、同じ立場を経験済みの人に対しては、まさに言ってはならないことなのかもしれない。
◯『共感するにも限度がある』(アダム・ウェイツ)
・共感力の持つ限界を理解できないと、個人や組織の業績を損なうことにもなりかねない。以下のような問題が起こりうる。
①共感による消耗は激しい。
②共感できる量には限度があり、ゼロサム状態になる。
⇨配偶者に多くの共感を向ければ、自分の母親に向ける分は少なくなる。
③共感は倫理観を蝕むことがある
⇨人間は他者のためになる場合の方が不正を犯しやすい。
・共感の行き過ぎを抑制する方法
①仕事を分ける
②犠牲を少なくする
③従業員に休憩を取らせる
・人々に話しかけること〜どのように感じるか、何が必要か、どう考えるかと尋ねること〜は、単純なことと思われるかもしれないが、その方が間違いが少なく、従業員やっ組織にとっての負担も軽くなる。
論文の中で特に印象に残ったのは、「経験者は同じ出来事に対して実は共感力が低い」という事実でした。これは、はまってしまいそうなパターンです。「経験していない人に何がわかるの?」ってついつい言いたくなるところ、経験者は「なんでそんなことも乗り越えられないの?」という上から目線、「こういう風にすれば乗り越えれられるよ」と言ったHowの定時に走りがちで、共感からは程遠いところにいる存在なんですね。内省的にも役立つポイントでした。
ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] 共感力 (ハーバード・ビジネス・レビュー EIシリーズ)
- 作者: ハーバード・ビジネス・レビュー編集部,DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2018/11/08
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- この商品を含むブログを見る