MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ニュータイプの時代(山口周)

ニュータイプの時代』(山口周)(◯)

『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』でおなじみの著者の最新刊です。21世紀の初頭にかけて高く評価されてきた、従順で、論理的で、勤勉で、責任感の強い「オールドタイプ」に対して、自由で、直感的で、わがままで、好奇心の強い「ニュータイプ」。社会がVUCA化(不安定・不確実・複雑・曖昧)しているからこそ、これからはニュータイプの人材が求められるということについてまとめられた一冊です。100年時代を生き抜く、働き抜くために役立つ考え方だと思います。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯6つのメガトレンド

①飽和するモノと枯渇する意味
②問題の希少化と正解のコモディティ化
③クソ仕事(目的や意味が明確化されない仕事)の蔓延
④社会のVUCA化

 Volatility(不安定さ)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)
スケールメリットの喪失
⑥寿命の伸長と事業の短命化

 

ニュータイプはあるべき理想像を描く

・「ありたい姿」を明確に描くことができない主体には、問題を定義することができない。

・「問題の不足」という状況は、そもそも私たち自身が「世界はこうあるべきではないか」あるいは「人間はこうあるべきではないか」ということを考える構想力の衰えが招いている。

・問題を生み出すことができないというのは、要するに「あるべき姿=ビジョン」が不足している。

 

◯市場で「意味のあるポジション」をとる

・意味がある・ない×役立つ・役立たないの4象限。役に立つことよりも、意味があることの方に高い経済価値が認められるようになる。

・モノが飽和し、モノの価値が中長期的な低落傾向にある時代だからこそ、これからは「役に立つモノ」を生み出せる組織や個人にではなく、「意味」や「ストーリー」を生み出すことができるニュータイプに、高い報酬が支払われる時代がやってくる。

 

◯直感が意思決定の質を上げる

・企業の意思決定があまりにも論理偏重に傾くとパフォーマンスは低下する。理由は、①差別化の喪失(正解のコモディティ化)、②方法論としての限界(VUCA化する世界)、③論理では意味を作れない。

・過剰なものは論理と理性によって、希少なものは直感と感性によって生み出されている(左:過剰なもの、右:希少なもの)

1)正解 > 問題

2)モノ > 意味

3)データ > ストーリー

4)利便性 > ロマン

5)説得 > 共感

6)競争 > 共創

 

◯「偶然性」を戦略的に取り入れる。

・「偶然に」もっと効率的な新しいルートを発見すれば、生産性は飛躍的に高まる。

・短期的な生産性を高めるためにはエラーも遊びも排除して、ひたすらに生産性を高めるために頑張るのが得策かもしれないが、そのようなことを続ければ中長期的な視点で飛躍的に生産性を高めるための偶然の発見はもたらされない。

・「何の役に立つのか」という問いに対して明確に回答できる試みだけに経営資源が投入されていれば、偶然がもたらす大きな飛躍は得られない。不確実な世界において、いたずらに「何の役に立つのか」ということを追求して「遊び」のもたらす偶然の機会を排除しようとするのはオールドタイプの思考様式。

 

◯ルールより自分の倫理観に従う

・システムの変化があまりに早く、明文化されたルールの整備がシステムの進化に追いつかない世界においては、自然法的な考え方が重要になってくる。システムに引きずられる形で、いつ後出しジャンケン的に改定されるかわからない明文化されたルールよりも、自分も内側に確固として持っている「真・美・善」を判断する方が、よほど基準として間違いがない。

 

◯自分の価値が高まるレイヤーで努力する

・「努力」に意味がないのではなく、ポイントは「努力のレイヤーを上げる」こと。努力には階層がある。

・そのままひたすら頑張る「レイヤー1の努力」。様々な情報を集めて次の仕事を見つけるという「レイヤー2の努力」。レイヤー1の努力だけに依存して状況を打開しようとするオールドタイプの行動様式を続けていれば、どうやっても成果の出ない場所で不毛な努力をし続けるということになりかねない。

 

◯他者を自分を変えるきっかけにする

・VUCAな世界において、過去に学習したパターンを当てはめて短兵急に「ああ、あれね。わかってる」と考えたがる性癖は大きな誤謬につながる恐れがある。

・容易にわかることは、過去の近くの枠組みを累積的に補強するだけの効果しかない。本当に自分が変わり、成長するためには、安易に「わかった」と思わず、相手の言っていることを傾聴し、共感することが必要になる。

 

 この本は、まさにこれからのニュータイプな人の姿を描いていると感じました。これだけ変化が早く、今の小学生の半数以上が今ない仕事に就く時代。大人の頭は凝り固まっているかもしれません。「経験していないこと=不安」が蔓延し、経験値(過去)に理由を求め、理屈付けをし、安心しようとする感覚があったらそれは黄色信号が点滅しているかもしれません。

 これからの時代に合わせられるような柔軟性、それを支える基礎力(ここは普遍)、そして時代が変わっても変わらないことを兼ね備えた未来型人間になるべく日々何を積み重ね、どういう思考・在り方を作り上げていくか、引き続き、自分自身で実験を続けていこうと思います。

 人間はすぐには変われないから、先に変わるとそれだけで希少価値になると思います。

ニュータイプの時代

ニュータイプの時代

 

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