『能力を磨く』(田坂広志)(◯)
「AI時代に活躍する人材「3つの能力」」と題された本書。現在の高度知識社会の中で求められる5つの能力のうち、これからの時代に求められる3つの能力(③〜⑤)について深く掘り下げられています。
①基礎的能力(知的集中力と知的持続力)
②学歴的能力(論理的思考力と知的持続力)
③職業的能力(直観的判断力と知恵の体得)
④対人的能力(コミュニケーション力とホスピタリティ力)
⑤組織的能力(マネジメント力とリーダーシップ力)
ネット革命やAI革命の本質は、人間を不要にする革命ではなく、「人間が機械やコンピュータでは代替できないより高度な仕事に取り組めるようになる革命であり、人間の能力をさらに大きく拡大させる革命」。これからの時代に身につけておくべき能力について気づきが大きい一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯AIが代替できない能力
①クリエイティビティ(創造力)
②ホスピタリティ(接客力)
③マネジメント(管理力)
⇨これら3つの能力は、「職業的能力」「対人的能力」「組織的能力」に含まれる。
◯クリエイティビティを考える問い
①そもそも、実社会で働く人間にとっての「創造性」とは何か?
②その「創造性」を発揮するには、どのような能力が求められるのか?
③その能力は、どのようにすれば、日々の仕事の中で身につけられるのか?
◯ホスピタリティを考える問い
①そもそも、実社会で働く人間に求められる「コミュニケーション力」とは何か?
②「コミュニケーション力」の中でも、最も高度なコミュニケーション力とは何か?
③その高度な「コミュニケーション力」は、どのようにすれば身につくのか?
◯マネジメントを考える問い
①「マネジメント」という概念は、どのような概念へと成熟していくのか?
②「リーダーシップ」という概念は、どのような概念へと成熟していくのか?
③その成熟したマネジメント力とリーダーシップ力は、どうすれば身につくのか?
◯職業的能力
・この能力の本質は、経験や体験を通じてしか掴めない「体験的知恵」であり、この能力は「文献的知識」とは異なり、AIによって容易に置き換えられない能力。
・職業的能力とは、「技術」と「心得」が組み合わさったもの。
・「知識」とは言葉で表せるもの。「知恵」とは言葉で表せないもの。
・「書物を通じて知識を習得する」(学ぶ)ということと、「経験を通じて知恵を体得する」(掴む)ということが全く違うということを心に刻んでおかなければならない。
・これからの時代は、「書物で学べる知識」よりも「経験でしか掴めない知恵」をどれほど身につけているかが、人間の存在価値になっていく。
・「反省の技法」と「私淑の技法」を身につけなければならない。
・「反省の技法」
1)技術の振り返り→心得の振り返り
2)直後の反省対話
3)深夜の反省日記
・「私淑の技法」
私淑とは、優れた能力を持っている人物を、心の中で「師匠」と思い定め、その人の仕事をする姿から、言葉を超えて、直接、その技術や心得を学ぶこと。
◯対人的能力
・「反省の技法」
1)会議や商談の後、参加者や顧客の無言のメッセージを推察する。
2)会議や商談の後、自分の無言のメッセージが相手にどう伝わったかを想像する。
・「共感」とは、相手の姿が自分の姿のように思えること
・本当の共感力を身につけるためには、「苦労」の経験が必要。なぜなら、我々は、自分自身に、それなりの「苦労」の経験がなければ、何かに苦労している人に対して、本当には「共感」できないからである。
・2つの問い
1)自分はこれまで、人生や仕事において、どのような「苦労」を経験してきたか?
2)その経験から、他の人々が背負う苦労への「共感」をどれほど持っているか?
3)自分は「人生における苦労」というものを、どう見ているか?
◯組織的能力
・人間にしかできない究極のマネジメントは、「心のマネジメント」。
・「心のマネジメント」とは次の2つのことを行うマネジメント。
1)共感協働のマネジメント
部下やメンバーが、自発性や創造力、協調性や共感力をいかんなく発揮し、互いに協力しあって優れた仕事を成し遂げられるようにすること。
2)働きがいのあるマネジメント
部下やメンバーが、仕事に意味と意義を見出し、働きがいや生きがいを感じられるようにすること
・「心のマネジメント」とは、部下やメンバーの「心」をマネジャーやリーダーの都合の良い方向に変えていこうとするマネジメントではなく、部下やメンバーの視点に立ち、その「心」が自然に、互いの共感力を高めたり、仕事に働きがいを感じたりできるように支援するマネジメントである。
・「働きがいのマネジメント」「創発的マネジメント」
部下やメンバーの「心の状態」を変えようとするものではなく、部下やメンバーの「心の状態」が良き方向に変わっていく「場」を生み出すマネジメント。
・「成長支援のマネジメント」
現在は別種の技法とされている「カウンセリング」と「コーチング」であるが、この2つの技法は、「心のマネジメント」という意味で、これから、互いに深化しながら、融合していく。
・「聞き届け」
ただ聞くだけではなく、相手が語る言葉を、深い共感の心を持って、自身の心の奥底まで届くような思い出「聴く」という技法。
私の場合は、自分の成長の過程の中で必要に迫られ、コーチングを学び、そこからカウセリングも学び、知識・スキルから心の問題、目に見えない世界の学びを深めて現在に至っています。本書を読むと、自分が必要と思って取り組んでいる内容と時代の流れがマッチしているんだなあと思い、良い流れを感じます。コーチングもカウンセリングも明確な線引きは自分の中にはなく、対話の中で時にコーチング、時にカウンセリングが出てくる感じ。対話の流れで行ったり来たり。相手に寄り添い横の関係で聞いて、その上で解決に向けて一緒に考えていく姿勢。そんな関係が気付けば、時代を超えて幸せに生きていける気がします。