『日本酒の科学』(和田美代子)(◯)
本書は、日本酒初心者の著者が、菊正宗研究所長監修のもと、日本酒とは何か、というテーマを皮きりに、原材料や微生物にスポットを当てた日本酒へのこだわり、特に生酛作りの話に多くの部分が割かれています。日本酒の製造工程もわかりやすく書かれており、日本酒を飲む際の背景知識としても役立つ一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯使用原料と精米歩合
①吟醸酒
・使用原料:米、米麹、醸造アルコール
・精米歩合:60%以下
②大吟醸酒
・使用原料:米、米麹、醸造アルコール
・精米歩合:50%以下
③純米酒
・使用原料:米、米麹
・使用原料:米、米麹
・精米歩合:60%以下
・使用原料:米、米麹
・精米歩合:50%以下
・使用原料:米、米麹
・精米歩合:60%以下または特別な製造方法
⑦本醸造酒
・使用原料:米、米麹、醸造アルコール
・精米歩合:70%以下
・使用原料:米、米麹、醸造アルコール
・精米歩合:60%以下または特別な製造方法
◯ 一麹ニ酛三造り
①精米
②洗米
③蒸米
④麹作り:蒸米に種麹を振りかけ、麹菌を繁殖させる
⑥醪(もろみ)造り:酒母に麹、蒸米、水を加えて醪を造り、発酵させる
⑦搾り:醪を絞って酒を取り出す
⑧ろ過・火入れ
⑨貯蔵・瓶詰め
◯酒米
・酒米に求められる特性
①精米中に砕けにくいこと
②米粒が大きいこと
③「心白」の形と大きさ、位置が程よいこと
④外硬内柔であること
・雄町:米が柔らかで 溶けやすく 、味に膨らみのある濃醇な味の酒になる。
・五百万石:クセのないスッキリとした味わいの酒に仕上がる。
・美山錦:山田錦、五百万石に次ぐ作付面積。秋田・長野で吟醸酒によく使われている。
・出羽燦々:美山錦の改良種。淡麗で綺麗な酒ができる。
・山田錦:現在の最高品種。味や香りがふくよかで広がりのある酒質になる。
◯仕込み水
・「灘の男酒、伏見の女酒」
灘の水(宮水)は比較的硬度が高いので、発醇が進みやすく、後味の引き締まった味になり、伏見の水(御香水)は軟水で、ここで作られた酒は発酵が穏やかで、まろやかな味 。
鉄を嫌う日本酒造りの現場では、水だけではなく、タンクや桶といった道具にも、クギなど鉄分が溶け出す素材は禁物。
◯麹
・日本酒は米のデンプンからの糖分(グルコース)を原料として酵母がアルコール発酵したもの。ただし、原料の水には糖分が含まれていない。そのため、デンプンわ糖分に変える糖化が必要。その糖化の働きをするのが麹。
◯ラベルを読み解く
①アルコール分
②原材料名(水は書かない)
④種類(「日本酒」と書くことも可)
⑤内容量
⑥製造時期
⑦製造者の名称及び製造場所在地
吟醸酒、大吟醸酒、純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒、特別吟醸酒、本醸造酒、特別本醸造酒
◯こだわりの「吟醸酒」
・精米歩合は普通酒の平均は70%ほどだが、吟醸酒は60%以下、大吟醸酒は50%以下。
・精米時間も二昼夜かかる。
・麹造りも特別にじかんをかけ、一晩中寝ずの管理をする。
・精米した白米を洗うのも手作業。
・普通酒の場合15〜20日で済む発酵時間も30〜40日かかる。
◯生酒、生貯蔵酒、生詰め酒
・通常、貯蔵前と瓶詰め前の二度の加熱殺菌(火入れ)を行う。「生」というのは、この火入れをしない酒のこと。一般的には、生鮮食品を扱うように買ったらすぐに冷蔵庫に入れ、数日のうちに飲みきるタイプ。
・「本生」「生々」などと呼ばれる「生酒」は火入れをまったくしない。
・「生貯蔵酒」は、火入れをせずに貯蔵するが、瓶詰め前に火入れをする。
・「生詰め酒」は、火入れして貯蔵後に、火入れせずに瓶詰めしたもの。「生詰め酒」の代表的なものが「ひやおろし」。早春に火入れしてから貯蔵し、夏を越す間に熟成させ、秋に出荷される。
日本酒を選ぶときも、飲むときも、ちょっとした豆知識があるだけで楽しくなりますね。日本酒は銘柄が多いだけに、選ぶのも迷いますが、大きく日本酒の種類や原材料で分類してみるのもいいですね。