『記憶力を強くする』(池谷裕二)
本書は、神経生理学、システム薬理学を専門分野とし、海馬の研究を通じて、脳の健康や老化について探求している著者による脳科学に基づく記憶力強化についてまとめられた一冊です。ちょっと難しいところも多いですが、必要なところをかいつまんで読むだけでも参考になります。一つ学んだことは、「記憶力アップのためにも睡眠は大事」ということ。睡眠効果を改めて考えるきっかけにもなりました。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯記憶の種類
・短期記憶:30秒〜数分以内に消える記憶、7個ほどの小容量
・長期記憶
①エピソード記憶(故人の思い出)
②意味記憶(知識)
③手続き記憶(身体で覚える物事の手順)
◯年齢に見合った記憶の仕方がある
・中学生の頃までは、意味記憶の能力が高いですから、試験内容を「丸暗記」してテストに臨むという無謀な作戦でもなんとかなる。
・この年齢を越えた頃から少しずつエピソード記憶が優勢になってくるので、丸暗記作戦はいずれ通用しなくなる。この事実に気づかずに、いつまでも同じような勉強方法を繰り返していると、自分の記憶力に限界を感じるようになる。そういう人に限って「もう若い頃のようには覚えられない」記憶力の低下を嘆く。
・歳をとって、エピソード記憶が増してくると、丸暗記よりも、むしろ論理だった記憶能力がよく発達してくる。
◯記憶のビタミン
・まず物事に興味を持つことが大切。歳をとると、しばしば物事に対する情熱が薄れてくる。ひとつのことに集中できなくなる。感動も薄くなる。すると記憶力はてきめんに低下する。
・実は、歳をとって記憶力が落ちたと錯覚してしまう最大の原因はここにある。感動できない大人になっている。
・常に環境の刺激に対して敏感になり、海馬にθ(シータ)リズムを作るだけの緊張感を保ち続けなければ記憶力は増強しない。
◯レミニセンス(追憶)効果
・現在の脳科学の見解によれば、夢は脳の情報を整え、記憶を強化するために必須な過程。記憶は夢を見ることによって保存される。つまり、寝ることは、物事をしっかりと覚えるための大切な行為。
・何か新しい知識や技法を身につけるためには、覚えたその日に6時間以上眠ることが欠かせないという研究結果が発表された。一睡もせずに詰め込んだ記憶は、側頭葉に刻み込まれることなく数日のうちに消えてしまう。テストと直前に徹夜で詰め込んだ知識が、すぐに忘れ去られてしまうことは、皆さんもきっと経験していることでしょう。
・寝ている間に記憶がきちんと整理され、その後の学習を助けた結果であると考えられている。
・1日に6時間まとめて勉強するくらいなら、2時間ずつ3日に分けて勉強した方が、途中に睡眠が入るために能率的に習得できる。
◯カフェイン
・最も身近な「記憶力増強薬」は、コーヒーの成分カフェイン。カフェインには、覚醒作用があるので、嗜好品としてだけでなく、仕事中の眠気や、居眠り運転などを防ぐ目的で愛飲されている。そして、脳研究者たちは、カフェインに記憶力を促進する作用があるらしいと、ずいぶん昔から気づいていた。
睡眠とカフェイン、これならすぐに意識的に取り入れられそう!記憶力に効くと思うだけで効果も増しそう。認知しておくこと自体が、大切なことですね。
記憶力を強くする―最新脳科学が語る記憶のしくみと鍛え方 (ブルーバックス)
- 作者: 池谷裕二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/01/19
- メディア: 新書
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