MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

覚えない記憶術(樺沢紫苑)

『覚えない記憶術』(樺沢紫苑)(◯)

 本書は、精神科医でありベストセラー本を次々と出版されている著者が、インプットで記憶するのではなく、アウトプットをうまく取り入れて、記憶を定着化させる具体的な取り組みをまとめられた一冊です。Facebookのいいね!14万、Twitterフォロワー12万人、メルマガ発行部数15万部、インターネットを使った情報発信18年(本書出版時点)、毎年3冊以上出版、医師としてのお仕事、講演多数、年間読書量300冊以上など、驚くほどのものすごい量のインプットとアウトプットを循環させていらっしゃる著者の実践と理論がまとまっているので、とても参考になります。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯記憶は事前順が9割

・記憶は、理解、整理、記憶、反復の4ステップで定着する。

・記憶そのものに時間を使うよりも、事前準備としての理解と整理にしっかりと時間を使うことで、記憶力が悪い人でも無理なく記憶することができる。

 

◯記憶の大原則「アウトプット」

・何度もアウトプットして「この情報は重要です」ということを脳に教える。

・1週間に3回復習すれば忘れなくなる。」

・「書く」ことは、単なる脳内に存在していたデータが「行動」に影響を及ぼしたことになる。

・「メモ」は復習1回分に相当する。運動神経を刺激して記憶を強化する。「記憶の索引」を作る。

・「読む」と記憶が強化される。声に出すことは、顎、舌、唇などの筋肉を動かすこと。そのために運動神経からの刺激が筋肉に伝達される。

・「シャドー読み」:実際に声に出さないけど、声を出しているかのように、口を動かしながら暗記する方法(満員電車などで便利)。

・「シャドー書き」:実際にペンを持って書くのではなく、指をペンがわりにして書く。運動野が刺激される(満員電車などで便利)。

・「意味記憶」は覚えにくく忘れやすい。「エピソード記憶」は覚えやすく忘れにくい。

・人に教えるのは、「ストーリー化」「理解度のチェック」「知識の整理」「復習と反復」ができるという一石四鳥のスーパー記憶術。

 

◯全体を俯瞰する

・全体像がわかっていると「記憶」はものすごく楽にできる。全体の構成、流れ、展開を理解する。

・本を読む場合、まずは全体像の構成を把握し、それから細部を読んで、深めていく。具体的には、目次を見て、本をパラパラめくり、面白そうな記述を見つけたら、いきなりその部分を読む。パラパラめくっては、立ち止まってじっくり読む。数回繰り返すと、5分くらいでその本の一番「おいしい部分」、自分が「一番知りたかった部分」は読み終わる。

 

◯記憶のゴールデンタイムは「寝る前」

・寝る前の15分は「記憶のゴールデンタイム」

・暗記したらそのまま何もせずに布団に直行して眠るのが一番記憶定着を促進する。

・寝ると余計な情報が入らないので、記憶の定着を妨害する因子である「記憶の衝突」が起きない。

 

◯分散記憶術

・「集中学習」は「分散学習」よりも忘れやすい。

・一度に長時間やるよりも、勉強時間を分割して繰り返すことで脳のパフォーマンスを最大化できる。

 

◯休憩スケジュール記憶術

・勉強も仕事も、最初と最後は集中力が高まり、記憶力や作業の効率が高まる。

・「さぁやるぞ!」の初頭効果、「もうすぐ終わるぞ!」の終末効果。

 

◯火事場の馬鹿力記憶術

・人間は追い詰められるとノルアドレナリンという脳内物質が出る。注意力が高まり、結果として物事を素早く判断できるようになり、それと同時に記憶力、学習能力、作業遂行能力などほとんどの脳機能が高まる。

・同時に、追い詰められた時には、アドレナリンという物質も出て、こちらは筋力、瞬発力、心肺能力を高める。

 

◯制限時間記憶術

・時間制限をするとドーパミンが分泌される。

・「ToDoリスト」を書く場合も、項目ごとに30分、60分などと制限時間を書き込むか、または「13時まで」のように終了時間を書き込む。

 

◯カフェ仕事記憶術

・海馬とは、脳の中で「記憶」「学習」「情報処理」と深く関わりのある部分。海馬には、「場所細胞」というものがあって、場所を移動するだけで、この「場所細胞」が刺激され、シータ波を発生させる。シータ波は記憶力が亢進する周波数。

・場所を移動するだけで、海馬を活性化し、記憶力をアップさせ、学習効率、仕事効率を高めることができる。

・海馬が嫌うのは「マンネリ」

 

◯記憶していることは、想起できる

・人間の記憶というのは想起(思い出すこと)は障害されやすいが、記憶そのものは脳の奥底にかなり長期にわたってしっかりと保存される。

・記憶を想起する「きっかけ」、つまり「記憶の索引」さえあれば、簡単に想起することができる。

 

◯音楽

・音楽は、学習、記憶、読解などにはマイナスに働く。作業、運動にはプラスに働く。

 

◯未完了の仕事を完了させる

・完了しない課題をたくさん抱えると、勉強や仕事の効率は間違いなく低下する。

・「2分ルール」:2分でできることは「今」やってしまう。懸案中、継続中、未完了の仕事をどんどんこなして、1つでも減らすことが、脳メモリの空き容量を増やすコツ。

 

 インプットしたことは3度アウトプットする。アウトプットすることで記憶を定着化させる。このためには、読書なら、①線引きしながら読む(線引きもアウトプットの効果がある)、②書評にまとめる、③誰かに話す。セミナーなら、①ノートにメモする、②学び・感想をシェアする、③Facebookなどで投稿する、といったところでしょうか。3回のアウトプットを意識することで、学びの定着はかなり変わってきそうですね。そんな気づきのあった一冊です。

覚えない記憶術

覚えない記憶術

 

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