『新・魔法のコンパス』(西野亮廣)(◯)
3年前に発売された『魔法のコンパス 道なき道の歩き方』の文庫版ですが、内容はガラッと書き直されています。新しいルールと普遍のルール。このルールを押さえた上で、「お金」、「広告」、「ファン」の切り口から、時代の歩き方について書かれた一冊です。本書に掲載されている、2019年3月の近畿大学卒業式でのスピーチは、ぜひ動画で見ていただいた方が、臨場感が伝わっていいと思います。
キンコン西野 伝説のスピーチ「人生に失敗など存在しない」平成30年度近畿大学卒業式
(印象に残ったところ・・本書より)
◯お金
・お金は「他者に提供した『価値』の対価」
・お金の教育を受けて来なかった多くの日本人は、往往にして「お金=我慢の対価」というマインドに陥っている。
・収入の大きさを決めているのは、「大変さ」でも「技術力」でもない。「希少価値」だ。一つの分野で戦い続ける(専業)という選択は「希少価値を上げにくい争いに参加している」と考えた方がいい。
・希少価値を広げるには、1/100×1/100×1/100=100万分の1。3つの分野で1/100の存在になる。ここで収入をフルに増やすのではなく、3割くらい余力を残して、時間を作り、その時間を全く違う分野に1万時間投下する。副業家になることで、お金を生む力がぐんと膨れ上がる。
◯広告
・やるべきことは、広告を打つことではなく、”広告効果のある”広告を打つこと。「3年前はその広告は効き目があったけど、今も本当に効くの?」と疑い続けることも大事。
・SNS時代はお客さんが発信力を持っている。その発信力を使うことが何よりも大切で、「ニュースを出す」のではなく、「ニュースになる」ように仕掛ける。常に「お客さん」が主語になるように設計すること。
・クリエイターとオーディエンスの中間層である「セカンドクリエイター」の数が間も無く一番多くなる。現代の広告は「セカンドクリエイターをいかに巻き込むか?」にある。
・「集客」の根幹にあるのは、「人間は確認作業でしか動かない」という現実。ボクらは、テレビやネットやパンフレットで”一度見た場所”を旅行先として選ぶ。つまり、ボクらはネタバレしているものにしか足を伸ばさない。「ネットで(無料)で見られたら、会場に来てもらえない」という理由からスマホの撮影やSNSの投稿を禁止しているイベントがあるけど「集客」のことを考えると全く逆。人は冒険に憧れて、冒険を避ける生き物だ。ネタバレを恐れてはダメ。ネタバレから始まる。
・リピート度=「満足度」ー「期待値」
・リピーターづくりの要は、一にも二にも「期待値コントロール」。くれぐれも「広告効果があるから!」といって、満足度を超えてしまうような広告は出しちゃいけない。
◯ファン
・勝ちがあって、負けがあって、リベンジがあって「物語」になるわけで、読者の感情曲線をきちんと上下に振ってあげなきゃいけない。皆、「負け」を避けたがるけど、「負け」のない物語なんて売り物にならない。
・キミが販売する「物語」を作る上で、大前提として踏まえておかなきゃいけないのは、人間の満足度(幸福度)は「ハイスコア」ではなくて、「伸び率」だということ。
・話を「プロジェクト」に置き換えてみると、例えば、キミが事業計画書を完璧に書いて、一度もピンチを迎えることもなく、計画通りにプロジェクトをゴールへ導いたとする。そのときキミの上司を始め、たくさんの仕事関係者がキミの仕事っぷりを労ってくれると思う。「成功者」と称える人もいると思う。だけどどうだ?その仕事で、一度もドラマを見せなかったキミやキミのプロジェクトに一体どれだけの「ファン」が生まれただろう?
・「負け」がないと「勝ち」の感情が薄れてしまう。ファンを熱狂させるには、この感情曲線を念頭に置いて、然るべきタイミングで「負け」を作らなきゃいけない。
・「ヨット理論」
キミは、なるべく「追い風」が吹くことを願っていて、それが無理なら「無風」であることを願い、「向かい風」だけは避けたいと考えているのでは?ヨットは「追い風」だと前に進むし、「向かい風」でも帆の傾け具合で前に進む。一番厄介なのは「無風」で、このときヨットはピクリとも動かない。キミの人生もそうだ。もし「向かい風」が吹いているのなら、そいつはキミの身体を大きく前に進めてくれるエネルギーとなるから、その風は避けずに正しい帆の角度を探るといい。キミが本当に避けなきゃいけないのは「無風」だ。定位置にいるようだけど、実際のところはジリジリと後退している。周りが前に進んでいるのだから。
最後の「ヨット理論」はとてもわかりやすく表現されていると思います。ついつい「無風」を求め、その状態がいいことを正当化してしまいますが、確かに、止まっているようでジリジリ後退している。だから、心がざわつくくらいがちょうどいい。「自分のやりたいこと×心のざわつき」。これが今の私のテーマなので、まさにぴったりの表現に出会えました。