MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

後世への最大遺物(内村鑑三)

『後世への最大遺物』(内村鑑三)(◯)<2回目>

 古典的名著です。志を考えるときに一度は読んでおくといいなと思っている書籍です。その名の通り、後世に何を遺すのか。若い頃には思わなかったことも、だんだん歳を重ねるごとに意識に入ってくる。会社でも人生でも同じ。自分がやっている意味はなんだろうか。他に何ができるのか。生まれてきた意味は?志が定まっている人にとって、味わい深い一冊だと思います。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯遺物

・何を置いて逝こうという問題。何を置いて我々がこの愛する地球を去ろうかということ。

 

◯お金

・後世へ我々の遺すものの中にまず第一番に大切なものがある。お金である。我々が死ぬときに遺産金を社会に遺して逝く。己の子供に遺して逝くばかりでなく、社会に遺して逝くということ。

・お金を残すものを賤しめるような人はやはり金のことに賤しい人。ケチな人。

・金というのは、いつでも得られるものであるということは、我々が始終持っている考え。実際、金の要るときになってから金というものは得るに非常に難しいもの。

・富を一つに集めることのできるものは、これは非常に神の助けを受くる人でなければできないこと。富というものを一つにまとめるということは一大事業。

・実に金儲けは、やはり他の職業と同じように、ある人たちの天職である。金儲けのことについては、少しも考えを与えてはならぬところの人が金を儲けようといたしますると、その人は非常に穢(きたな)く見えます。

・金は後世への最大遺物の一つでございますけれども、遺しようが悪いと随分害をなす。それゆえに金を溜める力を持った人ばかりでなく、金を使う力を持った人が出てこなければならない。

 

 

◯事業

・金を遺物としようと思う人には、金を溜める力とまたその金を使う力とがなくてはならぬ。この2つの考えのない人、この2つの考えについて十分に決心しない人が、金を溜めるということは、はなはだ危険のことだと思います。

・私が金より良い遺物はなんであるかと考えてみますと、事業です。事業とはすなわち、金を使うことです。

 

◯思想

・もし私に金を溜めることができず、また社会は私の事業をすることを許さなければ、私はまた一つ遺すものを持っています。なんであるかというと、私の思想です。

・もし、この世の中において私が私の考えを実行することができなければ、私はこれを実行する精神を筆と墨とを持って紙の上に遺すことができる。あるいはそうでなくとも、それに似たような事業がございます。すなわち、私がこの世の中に生きている間に、事業を成すことが出来なければ、私は青年を薫陶して私の思想を若い人に注いで、そうしてその人をして私の事業を成さしめることができる。つまり、「著述する」ということと、「学生を教える」ということ。

・思想そのものをだけを遺してゆくには文学による他ない。文学というものの要は全くそこにあると思う。文学というのは我々の心の常に抱いているところの思想を後世に伝える道具に相違ない。それが文学の実用。

・金も遺すことができず、事業も遺すことはできない人は、必ずや文学者または学校の先生となって思想を遺して逝くことができるかというに、それはそうはいかぬ。しかしながら、文学と教育は、工業をなすということ、金を溜めるということよりも、よほど優しいことだと思います。なぜなれば独立でできることであるからです。ことに文学は独立的の事業である。

 

◯勇ましい高尚なる生涯

・最大の遺物とは何であるか。私が考えてみますに、人間が後世に残すことができる、そうしてこれは誰にも遺すことのできるところの遺物で、利益ばかりあって害のない異物がある。それは何であるかならば「勇ましい高尚なる生涯」である。これが本当の遺物ではないかと思う。

・他の遺物は誰にも遺すことのできる遺物ではないと思います。しかして高尚するとなる勇ましい生涯とは何であるかというと、私がここで申すまでもなく、諸君も我々も前から承知している生涯であります。

・すなわちこの世の中はこれは決して悪魔が支配する世の中にあらずして、神が支配する世の中であるということを信ずることである。失望の世の中にあらずして、希望の世の中であることを信ずることである。この世の中は悲嘆の世の中で亡くして、歓喜の世の中であるという考えを我々の生涯に実行して、その生涯を世の中への贈物としてこの世を去るということであります。その遺物は誰にも遺すことのできる遺物だろうと思います。

 

 お金⇨事業⇨思想⇨勇ましい高尚なる生涯(生き様)。自分はどこまで考えて、行動してるだろうかって考えることが増えてきた近頃。自分らしい生き方で何かの役に立ち、貢献できる人であり続けたいなぁって思っています。仕事もそう。ライフワーク的に取り組んでいるコーチング&コンサルティングもそう。この読書ブログもそうかもしれません。あらためて、自分らしい生き方を考えてみようって思いました。

後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)

後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)

 

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