『真理のことば』(中村元)(◯)
本書は20世紀を代表する仏教研究家である著者が、1985年にNHKラジオ第二放送で全26回の連続講義をされた講義録を4巻にまとめた第2巻です。第2巻では、「ダンマパダ」(真理のことば)をはじめとした原始仏典が解説されています。タイトル通り、現代にも通じる真理を語ったことば。ブッダの言葉だけでは今一つ理解できないなと思うところ、著者の解説がものすごくわかりやすいので、原始仏教の入門書としても適しています。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯ダンマパダとは
・パーリ語で「ダンマ」とは、「人間の心理」「人間の生きる道」、「パダ」は「ことば」という意味。漢訳ではダンマは「法」、パダは「句」と訳される。
◯ものごとは心に基づく
・ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によって作り出される。もしも汚れた心で話したり行ったりするならば、苦しみはその人につき従う。車を引く(牛の)足跡に車輪がついていくように〔一〕
・ものごとは心にもとづき、心を主とし、心によって作り出される。もしも清らかな心で話したり行ったりするならば、福楽はその人に付き従う。影がそのからだから離れないように〔二〕
⇨つまり、物理的にあるいは外形的に見れば同じような行為でも、それを行った人の心が清らかであるか、それとも汚れたものであったかということによって、その意義がまるきり違ってくる。
・「かれは我を罵った。かれは我を害した。かれは我に打ち勝った。かれは我から強奪した」という思いを抱く人には、恨みはついに息(や)むことがない〔三〕
⇨「あいつはこういうことをしやがったな、けしからん」と、こう思っている間は心にわだかまりがある。それは相手の人に伝わる。そうすると、今度は向こうからまた仕返しをしようとする。結局恨みの止むことがない。
・「かれは我を罵った。かれは我を害した。かれは我に打ち勝った。かれは我から強奪した」という思いを抱かない人には、ついに恨みが息(や)む〔四〕
⇨「相手がけしからんことをした」というのを気にかけている間は、こっちにもわだかまりがあるけれども、こちらがもうそれを忘れてしまえば、自ずからわだかまりは消えてしまう。
・実にこの世においては、怨みに報いるに恨みを持ってしたならば、ついに恨みの息(や)むことがない。恨みを捨ててこそ息(や)む。これは永遠の心理である〔五〕
・「われらはこの世において死ぬはずのものである」と覚悟をしよう。このことわりを他の人々は知っていない。しかし、人々がこのことわりを知れば、争いはしずまる〔六〕
⇨「この世の命が限られているものである」と自覚することが、命をありがたく楽しいものとして送っていく、そのよすがになる。そういう気持ちを実際の生活に具現すること、体現すること、それが仏教の実践。
◯父母と子の守るべきこと
・子は父母に対し奉仕すべきである。
①彼らを養おう
②彼らのためになすべきことをしよう
③家系を存続しよう
④財産を相続しよう
⑤祖霊に対して適当な時々に供物を捧げよう
・父母は子を愛する
①悪から遠ざけ
②善に入らしめ
③技術を習学させ
④適当な妻を迎え
⑤適当な時期に相続をさせる
◯師弟関係の礼儀と心得
・弟子は師に奉仕すべきである
①座席から立って礼をする
②近くに侍する
③熱心に聞こうとする
④給紙する
⑤うやうやしい態度で学芸を受ける
・師は弟子を愛する
①善く訓育し指導する
②善く習得したことを受持させる
③すべての学芸の知識を説明する
④友人朋輩の間に彼のことを吹聴する
⑤諸方において庇護してやる
◯妻への奉仕と夫の心構え
・夫は妻に奉仕すべきである。
①尊敬すること
②軽蔑しないこと
③道を踏み外さないこと
④権威を与えること
⑤装飾品を提供すること
・妻は夫を愛する
①仕事をよく処理し
②眷属をよく待遇し
③道を踏み外すことなく
④集めた財を保護し
⑤なすべきすべての事柄について巧妙にして且つ勤勉である
◯友人・朋輩に尽くす
・良家の子は友人・朋輩に尽くす
①施与と
②親しみある優しい言葉と
③一つのために尽くすことと
④協同することと
⑤欺かないこと
・友人・朋輩は良家の子を愛する
①彼が無気力な時に護ってくれる
②無気力な時に、その財を護ってくれる
③恐れおののいている時に、庇護者となってくれる
④逆境に陥っても彼を捨てない
⑤彼ののちの子孫をも尊重する
◯囚人と奴僕・傭人
・主人は奴僕・傭人に奉仕しなければならない
①その能力に応じて仕事をあてがう
②食物と給料とを給与する
③病時に看病する
④素晴らしい珍味の食物をわかち与える
⑤適当な時に休息させる
・奴僕・傭人は主人を愛さなければならない
①主人よりも朝早く起き
②主人よりものちに寝に就き
③与えられたにもののみを受け
④その仕事をよく為し
⑤主人の名誉と称賛とを吹聴する
難しいなと思ったら、本書のような講義録やYouTube動画が入りやすいと思います。だんだん理解が深まってきたら、さらに専門的な本へと進み、深掘りしていくのがいいかなと思います。仏教はとても範囲が広いのでマイペースにゆったりと読み進めていきたいと思います。