『「幸せ」をつかむ戦略』(ダン・アリエリー、冨永朋信)
行動経済学に関する著書を多数執筆されているダン・アリエリー教授に対し、マーケター富永氏が「幸せ」について聞いたインタビュー録です。ダン・アリエリー教授の行動経済学本にハマったこともあり、どんな話をされるのだろうと興味津々で購入しました。様々な実験を繰り返され、蓄積したノウハウをもとに、人が幸せに過ごすために必要なこととは?
(印象に残ったところ・・本書より)
◯パートナーとの関係が年々悪くなるワケ(人間の適応力)
・人間は「物事に慣れる」というとてつもなく大きな能力を持っている。
・家は年々愛着が増すが、パートナーとの関係が年々悪くなるのは、一切動かないために背景に溶け込んでいくものと、注意を弾くために私たちが適応できないものの差。
・もし相手の髪毛の色が気に入らなかったとしたら、慣れると思う。けれど行動については、いつまでも無視し続けてはいられない。結婚相手が毎朝ジョークを言うとすれば、注目しないわけにはいかない。毎朝ジョークを繰り返すから、時間が経てば経つほど、どんどん鬱陶しくなる。
・良い均衡はとても脆弱だが、悪い均衡はとても安定している(最後通牒ゲーム)。
・身勝手に自分にとって良いことをするとき、長期的には良くないかもしれないことを理解する必要がある。短期よりも長期について考えなければならない。なぜなら短期的で近視眼的な最適化は必ず低い成果を生み出すから。
◯幸せの2タイプ
①睡眠欲、食欲、性欲など人間の根源的な欲求が満たされることによる幸せ。損得で考えたときに、得が増大する幸せ。行動と幸せの実感が直結しており、スイッチを押せば時差なく幸せが実感される回路のようなもの。
②他者と関係を築くことによる幸せ。困難なことを達成する幸せ。1つの行動だけで足りることは通常なく、行動を連続して行なっている間はそれ自体が負荷となり、ポジティブな感覚とはならない。しかし、連綿と続けた行動がマラソンのゴールやチームワークの結実のような形になると、大きな幸せが実感される。
◯結果ではなく過程に報いるべし
・私たちがすべきことは、個人の力が及ぶ範囲で良い行いにご褒美を与え、個人の力の及ぶ範囲の悪い行いを罰すること。
・「100%の確率で達成できると思う目標は?」「50%の確率で達成できると思う目標は?」を両方聞く。
・「向こう3ヶ月であなたは何を達成したいですか。自分が何を達成したいかを教えて欲しい」と聞く。それで3ヶ月経ったら「やりたかったことを達成できたか」と聞く。達成できたかどうかは本人が一番よくわかっている。達成できなかったら「何が妨げになりましたか?」と聞く。
「慣れ」についてモノと人とでは逆の結果が出る点は興味深く感じました。愛着や慣れによる無意識化など感情に触れる部分なので、内省的にも役立ちそうな観点でした。