MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

人は、誰もが「多重人格」(田坂広志)

『人は、誰もが「多重人格」』(田坂広志)(◯)

 主催するオンラインサロンで、今週の勉強会のテーマにしている本書。もともと『知性を磨く!スーパージェネラリストの時代』の続編として出版された本書。「思想、ビジョン、志、戦略、戦術、技術、人間力」という7つの知性を垂直統合するためには、置かれた立場と状況を合わせ、自分の中の「様々な人格」を切り替えて対処する「多重人格のマネジメント」が必要。その多重人格のマネジメントとは、表層人格、深層人格、抑圧人格があり、どの人格にも気づき、使い分けることによって、才能開花を目指す内容です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯多重人格のマネジメントとは

・自分の中にある様々な人格の、どの人格の存在も認識しており、置かれた状況や場面に、どの人格で処するのかを、意識的に判断し、瞬時に、人格の切り替えができること。

・「精神病」との違いは、「精神病」は、ある人物の中に複数の人格があり、一つの人格が表に出ているとき、別の人格の存在に気づかない状態や、その別の人格が自分であることに気づかない状態。

 

◯多重人格をマネジメントする事例

・「仕事のできる人」とは、「場面や状況に応じて、色々な人格を切り替えて対処できる人」です。例えば、先日銀行に行った時、象徴的な場面があったのでご紹介しましょう。

・その日は、銀行口座についての少し煩雑な手続きをするために行ったのですが、あいにく、窓口にいたのは「研修生」というバッヂをつけたスタッフでした。

・しかし、その後ろには、先輩行員が座って、適宜、指導をしながら業務を進めるという、いわゆるOJTの状態でした。

・予想通り、研修生が、煩雑な手続きに手間取りながら操作していると、その先輩行員は、待たされている私の気持ちを感じ取り、すぐに前に出てきて、にこやかに応対し、操作を始めました。

・一方で、横で見ている研修生に対しては、表情を崩さず、「この処理の時は、この操作をするのよ」と手短に指導をしていきます。そして、すべての手続きが終わると、その先輩行員は、またにこやかに「お待たせしました」と挨拶をし、続けて、「ご依頼の処理は、このように、間違いなく処理されています」と念のために確認をしました。

・私は、その先輩行員の熟練した仕事ぶりに感心しながら銀行を後にしましたが、これがまさに、「仕事のできる人」の典型的な姿です。

 

◯「才能」の本質は「人格」

・自分の中に隠れている「幾つもの人格」に気づき、それらに光を当て、意識的に育て、状況や場面に応じて適切な人格で処することを覚えるならば、自然に「いくつもの才能」が開花していく。

・それゆえ、自分の中に眠る「いくつもの才能」を開花させたいと思うなら、自分が意識していなかった「幾つもの人格」に気が付き、その「多重人格のマネジメント」を行うことが不可欠。

 

◯ペルソナ

・人は誰もが、心の中に「様々な人格」を持っているが、日常の仕事や生活においては、その立場や状況にふさわしいと思う「表の人格」を意識的・無意識的に選んで生きている。

・ペルソナが硬い※と、本来持っている「様々な人格」のうち、「ペルソナ人格」以外の多くの人格を、深層意識で抑圧してしまう。

 ※ペルソナが硬いとは、ある立場や状況で装っている「ペルソナ」を立場や状況の変化に合わせて、柔軟に他の「ペルソナ」に切り替えることができないこと。

・そのため、その抑圧された「様々な人格」に伴う「様々な才能」が開花できなくなる。

 

◯「多重人格のマネジメント」を実践すると、「豊かな人間性」が開花する3つの理由

①「相手を理解し、「相手の気持ちがわかるようになる」から。

②「相手の状況や心境に合わせて、適切な人格で対処できる」から。

③自分の中に「様々な人格」を静かに見つめる、「もう一人の人格」、すなわち、「静かな観察者」が生まれてくるから。

⇨「静かな観察者」は、エゴを適切にマネジメントする存在。

 

◯「表層人格」を開花させる4つの技法

①自分が、今の仕事に「どのような人格」で取り組んでいるかを、自己観察する。

②自分が、仕事以外の世界で「どのような人格」を表しているかを、自己観察する。

③「仕事のできる人」が、仕事でどのように「人格」を切り替えているかを、観察する。

④自分の仕事において、表に出して活用する「人格」を、切り替える。

 

◯「深層人格」を開花させる3つの技法

①優れたプロフェッショナルを「師匠」として、その「師匠」から「人格」を学ぶ。

②自分の中の「隠れた人格」が開花する仕事を選ぶ。

③「日常とは違う場」で表れる「日常とは違う人格」を体験する。

 

 性格分析や行動分析的なものではなく、感情まで落とし込んで、自分の感情のどこに目が向き、どこは避けていて、相反する感情をどちらも活かす思考や行動とはどういうものなのか、把握していくことで、より深い理解が得られると思います。本書の内容は考えれば考えるほど深く、実際に行動するとなるとその難しさもより感じますが、それだけに、取り組み甲斐のある内容でもあります。

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