MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

人生の哲学(渡邊二郎)

『人生の哲学』(渡邊二郎)

 まだ私には早かった一冊。生と死、愛、自己と他者、幸福論、生きがいといった、人生そのものと言っていいテーマについて論じた一冊。とても魅力的に感じ、買ってみましたが、まだ深く入っていけるようではありました。おそらくそのテーマを深く見つめたいという気持ちが湧いてきたときに、グッと深く入って読めると思います。とはいえ、これも成長のステップだと、将来改めて読んだ時との違いを感じられるよう、一応ざっと最後まで目を通しました。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯人生の五つの根本問題

①死

②愛

③他者

④幸福

⑤生きがい

 

◯死を考えることの意味

・「哲学的存在論的」な死の問題。人間の有限性と限界性への徹底した理解の上にのみ、私たちは人間に対する慈悲や優しさ、憐憫や愛情の念も生い育つと思う。滅びゆく哀れな存在であるからこそ、すべての人をいとおしみ、愛する心根が育つのである。

 

◯労苦の積極的な引き受け

・「人間は楽しみを求め、苦しみを避けるものだなどという人たちの説明は間違っている。人間は、もらった楽しみに退屈し、自力で獲得した楽しみの方を遥かに好むものである。しかも何よりも人間は、行動し征服する事を好む。人間は、苦しめられたり屈服したりすることをまったく好まない。だから、行動を伴わない楽しみよりも、むしろ行動を伴う苦しもの方を選ぶのである」

・「いやなことを我慢するものでなく進んで行う。これが、心地よさの基礎である」。それゆえ、「少しは生きる苦労があった方がいいし、あまり平坦な道は歩まない方がいい」。「役に立つ仕事はそれ自体で楽しみである」。そのとき、「どんなに辛い仕事のうちでも、人は疲れを感じず、気分も参らず、軽やかである。そのあとで人は、完全にくつろぎ、最後にぐっすりと眠る」。

・「仕事に専念している幸福な人々を見るが良い」とアランは言う。「幸福はいつでも私たちから逃げていくとよく言われる。けれども、人からもらった幸福についてなら、それは正しい。人からもらった幸福などと言うものは、およそ存在しないからである。しかし自分で作る幸福は、決して欺かない。それは学ぶことであり、そして人は、絶えず学ぶものである」。「力の結果でもあり力の源泉でもあるような自由な仕事」こそは、心を楽しませる。「いやいやながら我慢するのではなく、行動すること」。これが肝要であるとアランは説く。

 

◯幸福という義務

・慎み深く、礼儀を守って、愚痴をこぼさず、親切さと喜びを分かち合うように努力すること、こうした、しっかりした大人の振る舞いの交換が、幸福を作り出すとされる。およそ、「規則は、人の気にいるものであり」、「逆に、規則の欠如は、人を不快にする」。「剥き出しの人間は、凶暴なものである」、「人がもし、公平な見物人の立場にとどまっているならば」、「入ってくるものは悲しみであろう」それゆえ、「幸福であろうとし、それに身を入れることが必要である」。それどころか「幸福は見た目にも美しい」。「幸福であることは、他人に対しても義務である」。「私たちを愛してくれる人たちのために私たちがなしうる最良のことは、やはり自分が幸福になることである」。そして「あらゆる幸福は、医師と抑制のものである」。そうアランは語っている。

 

ラッセルの幸福論

ラッセルにおいては、「たいていの人の幸福」は、食と住、健康、愛情、成功した仕事、そして仲間から尊敬されること」にあるとされ、特別に不幸でない限り、「人間は、自分の情熱と関心が内部へではなく外部へと向けられている限りは、幸福を掴むことができるはずである」。といなされている。逆にいえば、「私たちを自分自身のからに閉じ込める情念は、最悪の牢獄の一つである」。

 

 幸福論的なところが最もとっつきやすく、生と死のようなテーマは、本当の意味で、死が視野に入っていないから、あまり深みが増さなかったのかと思います。 

 本書は、内容自体はとても簡潔に区切られているのでとっつきやすいと思います。読み手が試される一冊です。

人生の哲学 (角川ソフィア文庫)

人生の哲学 (角川ソフィア文庫)

  • 作者:渡邊 二郎
  • 発売日: 2020/01/23
  • メディア: 文庫
 

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