MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

神々との対話(中村元)

『神々との対話』(中村元

 高野山大学のレポートのために読んでいた一冊。仏教経典「サンユッタ・ニカーヤ」の前編です。神々とは、仏典の中に登場するもので、ブッダがさとりを開くべく修行しているときに、心によぎる声(自問自答する相手のようなもの)のこと。どちらかというと前向きな問いであったり、問答の結果前進・加速させるような役割があります。また、神々を納得させたとして、ブッダの悟りに箔を付ける効果も狙っているようです(仏典はブッダ が行ったことを後世においてまとめたものであり、こうした箔をつけるようなところがしばしば見られます)。「サンユッタ・ニカーヤ」の後編が『悪魔との対話』でこちらは、修行をすることそのものや様々なブッダの行動を引き留め俗世に引き戻そうするネガティブな心の声。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯「歓ぶ」(第1編第2章歓喜の園)

・傍に立って、かの神は、尊師のもとで、この詩句をとなえた。

「子ある者は子について喜び、また牛のある者は牛について喜ぶ。執着するよりどころによって、人間に喜びが起こる。執着するよりどころのない人は、実に喜ぶということがない」

・尊師曰く

「子ある者は子について憂い、また牛のある者は牛について憂う。執着するよりどころによって人間に憂いが起こる。実に、執着するよりどころのない人は、憂うることがない」

 

◯「心」(第1編第7章打ち勝つ)

・神曰く

「世間は何ものによって導かれるのか?何ものによって悩まされるのか?いかなる一つのものに、一切のものが従属したのであるか?」

・尊師曰く

「世間は心によって導かれる。世間は心によって悩まされる。心という一つのものに、一切のものが従属した」

 

◯「妄執」(第1編第7章打ち勝つ)

・神曰く

「世間は何ものによって導かれるのか?何ものによって悩まされるのか?いかなる一つのものに、一切のものが従属したのであるか?」

・尊師曰く

「世間は妄執によって導かれる。世間は妄執によって悩まされる。妄執という一つのものに、一切のものが従属した」

 

◯「束縛の絆」(第1編第7章打ち勝つ)

・神曰く

「世間は何ものに束縛されているのか?それの経めぐり歩きは、何であるか?それは、何物を捨て去ることによって「ニルヴァーナ」と呼ばれるのであるか?」

・尊師曰く

「世の人々は快楽に束縛されている。人々がくよくよ思慮するのは、逸れてよろめき歩くことである。妄執を断じて捨てることによって「ニルヴァーナ」と呼ばれるのである」

 

◯「縛る」(第1編第7章打ち勝つ)

・神曰く

「世の人々は何ものに縛られているのであろうか?それの経めぐり歩きは、何であるか?何を断つことによって一切の束縛の絆を断ち切るのであるか?」

・尊師曰く

「世の人々は快楽によって縛られている。人々がくよくよと思慮するのは、逸れてよろめき歩くことである。妄執を断つことによって一切の束縛の絆を断ち切るのである」

 

◯「断ち切って」(第1編第8章断ち切って)

・神曰く

「何ものを断ち切って、安らかに臥すのであるか?何ものを断ち切って、悲しまないのであるか?いかなる一つのものを滅ぼすことを、あなたは好ましく思うのですか?ゴータマよ」

・尊師曰く

「怒りを断ち切って、安らかに臥す。怒りを断ち切って、悲しまない。その根は毒であり、その頂きは甘味である怒りを滅ぼすことを、聖者たちは称讃する。神よ。それを断ち切ったならば、悲しむことがない。」

 

◯「財」(第1編第8章断ち切って)

・神曰く

「この世で、人にとって最上の財は、何であるか?何を良く実行したならば、幸せをもたらすか?実に諸々の飲料のうちで優れて甘美なるものは、なんであるか?どのように生きる人を、最上の生活と呼ぶのか?」

・尊師曰く

「「信」は、この世において人の最高の財である。徳をよく実行したならば、幸せをもたらす。真実は、実に諸々の飲料のうちでも優れて甘美なるものである。明らかな智慧によって生きる人を、最上の生活と呼ぶ。」

 

  神々との対話を一部抜粋しましたが、このように疑問をぶつけてブッダが回答するという形式により布教活動にもつながる内容です。現代で言えば、FAQ(よくある質問)、質疑応答集とでもいった感じでしょうか。質疑になった途端頭に入りやすくなるのは、普及しやすさを狙ったものかなぁと思います。これも経典。仏典というのは、いろんなスタイルがあっておもしろいなと思います。 

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