MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

幸福学×経営学(前野隆司、小森谷浩志、天外伺朗)

『幸福学×経営学』(前野隆司、小森谷浩志、天外伺朗)(◯)

 ホワイト企業対象の委員3名で綴る本書。「社員の幸せ、働き街、社会貢献」の3つを軸にした企業経営。「働く=幸せ」と素直に思える経営の探求。幸せの4つの因子(やってみよう、ありがとう、なんとかなる、ありのままに)を満たすことで幸福を得られる。「幸福な状態で働く人々は、会社に何をもたらすのか」。幸福学と経営学をコラボさせるとどんな企業になるのか、楽しみの尽きない一冊でした。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯何が人を幸せにするのか

①地位財:短期スパンの幸せをもたらす。カネ、モノ、社会的地位など、そのを他人より多く所有していることによって満足を得る財のこと。周囲との比較でしか満足を得られないもの。

②非地位財:長期スパンの幸せをもたらす。他人や周囲との比較と関係なく喜びが得られるもの。治安がいい、有害物質が少ない、などの環境要因。健康状態などの身体的要因。自由や自主性、愛情、社会への帰属意識といった形のな心的要因。

③フォーカシング・イリュージョン

 間違った方向を指してしまうこと。要するに、カネ・モノ・肩書きなどの地位財を目指して物質的にリッチになればなるほど、人生の一瞬一瞬がもっと楽しくなるかというと、実はそうではない。

 

◯4つの因子

①やってみよう因子(自己実現と成長の因子)

 やる気がない⇨やってみよう!⇨本当にやりたいことをやっている!

②ありがとう因子(つながりと感謝の因子)

 なんともならない⇨なんとかなる!⇨何でも何とかなる!

③なんとかなる因子(前向きと楽観の因子)

 人の目が気になる⇨ありのままに!⇨本当に人の目を気にせずにブレない

④ありのままに因子(独立と自分らしさの因子)

 つながりも感謝もない⇨ありがとう!⇨あらゆる物事への感謝と貢献

 

◯幸せな社員は会社に何をもたらすのか

①やってみよう因子(自己実現と成長の因子)

・社員の幸せ度は、仕事の満足度よりも、仕事の成果に関係する傾向がある。

・幸せでリラックスしている人は、クリエイティビティのテストのスコアが高い傾向がある。

・幸せな人々は、上司から高い評価を受ける傾向がある。

・幸せなリーダーがいるサービス部門は顧客からより高い評価を得る傾向がある。

 

②ありがとう因子(つながりと感謝の因子)

・幸せな人は、信頼できる友人や同僚の数が多い傾向にある。

・上司による仕事のパフォーマンス評価は、仕事への満足度とは相関しないが、幸せとは相関する。

・ポジティブな感情が強い傾向を持つ社員は、上司から好意的な評価を受ける傾向がある。

・販売部門の人々の感情のポジティブなトーンが高いほど顧客満足度は高い傾向がある。

・仕事を行う際にポジティブな感情を示す人は、親切で、同僚を助けるなど、仕事上すべきこと以上の行動をする傾向がある。

 

③なんとかなる因子(前向きと楽観の因子)

・ポジティブな感情が強い傾向を持つ社員は、仕事の自律性、仕事の意味、仕事の多様性が重要とされるような仕事を任される傾向がある。

・ポジティブな感情を示す社員は、他の社員を助け、組織を守り、生産的な提案をし、組織内で自分の能力を向上させる傾向がある。

・ポジティブなムードで仕事をしている人は、離職率が低く、会社への報復的行動をしにくく、組織市民としての行動を行い、仕事で燃え尽きにくい傾向がある。

・ポジティブな感情の多い社員は欠勤しにくい。

・穏やかでポジティブな感情の多い社員は、他の社員とのコンフリクトが少なく、仕事を辞めにくい傾向がある。

・楽観的なCEOは、パフォーマンスが高く、経営する会社への投資のリターンも高い傾向がある。

 

④ありのままに因子(独立と自分らしさの因子)

・働く社会人の研究によると、幸福度は、本質的に価値のある経験、すなわち個人が自分自身として行いたいことと関係している。

・幸せな社員は、意思決定の際に、時間や努力のコストを度外視してまでアウトカムを最大化しようとするのではなく、最適で満足度の高い意思決定をする傾向がある。

 

◯ 業績は幸福度に比例する

・社員のパフォーマンスは、従業員満足度との相関が高くない一方、「社員幸福度」との相関は高い。

・満足度は、人の人生における部分的な充足を測る指標。

・幸福度は、個人としての人生全般にわたる充足を測る指標。

 

ホワイト企業の3つの因子

①いきいき因子

 今の仕事やその会社で働くこと自体に喜びや楽しさを感じているという、直接的な働きがいに関する因子。

・私は、この会社で働くことを通して喜びを感じている。

・私は、今の仕事に誇りを持っている。

・私は、休日明けに出勤するのが楽しみだ

・私は、仕事を通じて、毎日が充実している。

 

②のびのび因子

 互いを尊重し合う自由闊達な社風の中でのびのびと仕事ができているかを表す因子。

・私は、会社から大切にされている実感がある。

・私は、自分の努力や資質が認められていると感じている。

・私は、職場において、自由に発言できる。

・私は、一緒に働いている人たちに対して感謝している。

 

③すくすく因子

 自分の成長をどれだけ実感できているかを表す因子。

・私の仕事は、能力を発揮でき、チャレンジしがいがある。

・私の職場は、スキルや能力を伸ばす機会や風土がある。

・私は、仕事を通じて、自分が目指す姿に近づいている。

・私は、仕事を通じて、人として成長している。

 

 結局、長く続く、強い組織を作るには、ここに至るんだなということを実感。働く人にとって、仕事は人生の一部。必要不可欠なんだけど、それだけじゃない。働く人、一人ひとりが人生の主人公であって、貴重な一人の人間。そんな尊重しあえて、頑張りあえる組織が作れたらいいなぁと思える身近なテーマの一冊でした。

幸福学×経営学 次世代日本型組織が世界を変える

幸福学×経営学 次世代日本型組織が世界を変える

 

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