MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

サブスクリプション(ティエン・ツォ)

サブスクリプション』(ティエン・ツォ)(◯)

 日本語訳は2018年10月に発行。購入から2年近く積読本に並んでいましたが、最近サブスク契約するものも多く、関心が高まったので一気に読んでしまいました。本書は、前半がサブスク事例、後半がサブスクのビジネスモデル構築にあたっての経営の着眼点をまとめた内容です。本書発行から数年が経ち、サブスクがますます日常化している中、従来のビジネスモデルと対比しながら考えることで、得られる示唆も多く、サブスク基本書としてお勧めできる一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯はじめにより

・デジタルの世界で、何十億という消費者の関心が所有から利用へと加速度的に移行しており、サブスクリプション・エコノミーが爆発的に拡大している。それなのにほとんどの企業はまだ製品を売ろうとしていて、この先100年ビジネスを続けていくための正しい備えができていない。その結果、誰がこの巨大な機会を掴むかわからない。今、サブスクリプション・ビジネスに移行しなければ、数年後、生き残りのために移行しようとしても、移行できるビジネスそのものがなくなっている可能性がある。

 

◯加速する自動車業界のサブスクリプション

・車のサブスクリプションというのは、リースの言い換えに過ぎないのでは?そうではない。リースは利用者を特定の車に縛り付けるが、サブスクリプションではさまざまな車種に乗ることができる可能性がある。

サブスクリプションでは、車を持つことに伴う厄介な側面(登録・保健・保守)は気にしなくても良い。リースだと、保険は自分で入る必要がある。

・カー・サブスクリプションの多くは、月ごとに契約することができる。

 

◯サブスク会社の問い

①会員にとって、この新しいサービス(または新しいルート)の価値は何か?

②会員は私たちが提供しようとしているようなサポートを受けているか?

③会員はいつまで会員であり続けてくれるのか?

④我が社の成長率はどうなるのか?外からはどう見えるのか?

⑤利用状態のどこを見れば、どこにリソースを重点配分すれば良いかわかるのか?

⑥どの会員がチャーン(解約・離脱)しそうか?

 

マーケティング「4つのPが変わる」

・従来の4P:製品(Product)、価格(Price)、プロモーション(Promotion)、場所(Place)

・最初のP(製品)がS(サービス)に変わるのがサブスクリプション・エコノミー。

・場所:問題は今日、ほとんどのメーカーが顧客との関係を掌握していないということ。サブスクリプション・モデルの最大の利点は、顧客との間に真の1対1の関係を構築し、顧客の行動を理解し、カスタマー・ジャーニーを適切に導けるようになるということ。小売とのウィン・ウィンだけでなく、加入者を含めたウィン・ウィン・ウィンと可能性を広げることができる。

・プロモーション:3つのストーリーテリング。①製品の物語(それはいかにニーズに応えるのか)、②市場の物語(必要としているのは誰か)、③サービスとユーザーを広いソーシャルな文脈で結び合わせる物語(それはなぜ求められているのか)

・プライシングとパッケージング(価格と結び付けられた商品特性の組み合わせ):価格は物理的な製品に対してつけるのではなく、それを使うことで得られる結果に対してつけなくてはならない。機能追加による収益化。ニーズの拡大につれて利用者が新しい機能を追加的に利用することでもたらされるもので、一般的には基本サービスを売り、機能が追加購入されるのを待つという方法が考えられる。

 

ファイナンス複式簿記の問題点」

・伝統的な損益計算書は、継続的に出たり入ったりする金額と、そうではない1回ごとに出入りする金額を区別していない。

・営業及びマーケティング費は、過去の販売に際しての支出額に等しい。それは本質的に埋没費用である。サブスクリプション・ビジネスにおける営業及びマーケティング費は、将来のビジネスを推進するために行使される。

・これまでの損益計算書は過去を映し出す写真である。サブスクリプション・ビジネスの損益計算書は、将来に何が見えるかを記述するものだ。

 

 みなさんは、どんなサブスクを契約されているでしょうか。私の場合、iCloudAmazon prime&Alexaといった代表的なものに加え、イラスト&写真コンテンツ、動画コンテンツといったセミナー資料作成のための素材収集にもサブスクを活用しています。将来的には、自動車のサブスクは魅力的に感じます。リースとは違い、車種変更可能、月単位契約といった契約形態がいいなぁと感じました。本書のほか、『2025年人は買い物をしなくなる』『僕らはそれに抵抗できない』『アフターデジタル』といった書籍を合わせて読むと未来の購買について考えが高まると思います。

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