『大乗の教え(上)』(中村元)
高野山大学のレポート作成のために読んだ本です。
レポートのテーマは、「ナーガールジュナ(龍樹)の「空」の思想について(3,800〜4,000字)」
内容としては、まずナーガールジュナの諸著作を整理し、次に、いくつかの著作を取り上げ、その著作において「空」の考え方がどのように説き示されているかを論じ、そして、『般若経』のいかなる教えを背景としているかをまとめるというものです。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯般若経典における空観
・ナーガールジュナの空の思想の背景には、般若経の教えがある。
・空観とは、一切諸法が空であり、それぞれのものが固定的な実体を有しない、と観ずる思想である。「我々は固定的な法という観念を抱いてはならない」(『金剛経』六節)。
・なぜなら、一切諸法は他の法に条件づけられて成立しているものであるから、固定的・実体的な本性を有しないものであり(無自性)、本体を持たないものは空であるからである。
・そして、「諸法が空であるならば、本来、空であるはずの煩悩などを断滅するということも、真実には存在しないことになる」(『金剛経二七節』)。実践はかかる空観に基礎づけられたものでなければならないとされる。
・個別の経典ににおける「空」ついて、代表的なものは次のとおり。
(1)『般若波羅蜜多心経』
経典の中で「空」に関する主な部分を取り上げると以下の通りである。
①照見五蘊皆空。度一切苦厄。
・真実の認識というものを身につけて行われたときに、五蘊はみな空であると見極められた。この、じっと真実を見つめるということによって、我々の苦しみをお救いになった。
②色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。受想行識亦復如是。
・我々の物質面(色)というものは実は空である。空というものは実は物質的な形として展開するものである。受想行識も同じである。我々の存在を構成する五蘊の他の四つが「受・想・行・識」であり、「受」は感受作用、「想」は識別作用。我々の存在を構成する五つはいずれも空である。そして、空がまた色・受・想・行・識として現れ出ている。
③是諸法空相。不生不滅。不垢不淨不増不減。是故空中。無色。無受想行識。無眼耳鼻舌身意。無色聲香味触法。無眼界。乃至無意識界。
・高い立場から見ると、ただ偉大なる一つの理があるだけ。したがって、汚れることもなく、浄くなることもない、増えることなく、減ることもない、ただ偉大なる真実がそこにあるだけ。だから、空の中には物質的な形もなく、感受作用も表象作用も形成作用も識別作用もない。(このあと、六根、十二処、十八界について説かれているがここでは省略)
(2)『金剛般若経』
・『金剛般若経』は、空の思想の立場に立って実践の心がけを述べている。
・すなわち、我々の日常の実践、行いというものは空の思想に基礎付けられたものでなければならない。我々は何かにこだわったり、滞る傾向がある。しかし、何ら滞ることなくして真実の心、さとりの心を起こすべきである(「応無所住而生其心」(住するところ無くしてその心を生ずべし))ということを説いている。
正直、書籍を読んでレポートをまとめている時には、わかったような気になっても、一晩寝れば「なんだっけ?」となり、全然理解できていない自分がいることに気づきます。まぁ、学問としての仏教に興味がある私にとっては、修行をしたいわけでも、悟りたいわけでもないので、学びと忘却を繰り返す中で、日々意識しながら徐々に良いものを取り入れていければOKかなと思っています。