『自分の時間』(アーノルド・ベネット、訳・解説:渡部昇一)
100年以上前に発行された本書。1908年に雑誌の中で紹介され、その後、1912年、1920年の2度にわたり出版された「時間」に関する実用書です。誰にも平等に与えられた時間。この1日24時間をいかに有効に使うのか。タイムマネジメントというよりは、時間の捉え方、考え方という観点から書かれています。従って、ノウハウ本、ハウツー本ではなく、時間に焦点を当てた在り方本という感じです。読み継がれるには訳がある!ボリュームも少なく読みやすいですよ。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯無意識が生み出す膨大な「もったいない時間」
・1日を生きる上での根本姿勢の重大な誤り。1日に取り組む気構えが間違っているために、自分の精力や興味の2/3が削がれてしまっている。
・朝10時から夕方6時までの勤務時間があくまで本当の意味での「1日」だとみなし、勤務時間の前の10時間と後の6時間は、単なるプロローグとエピローグに過ぎないと思っている。
・1日の2/3の時間を、単に1/3を占める勤務時間に付随している時間に過ぎないとしてしまうなら、完全に充実した1日を過ごすことなど、どうやって望めようか。
◯頭の中に「内なる1日」をつくる
・普通の人が充実した完全な1日を送りたいと思ったら、頭の中で、1日の中にもう一つの別の1日を設けるようにしなければならない。
・「内なる1日」は、ひとまわり大きな箱の中に入っている小さな箱のようなもので、夕方6時に始まって、翌朝の10時に終わる、16時間の1日。この16時間はすべて、もっぱら自分の心と身体を成長させ、同胞を啓発することにだけ使う。
◯「週3回の夜90分」が人生の明暗を分ける
・夕方6時に、あなたはまだ疲れているわけではないという事実を直視し、受け入れる。夜の時間が、食事のために真ん中で中断されないよう配慮すること。そうすれば、少なくとも3時間というゆとりある時間を持てることになる。
・まず手始めに、一晩おきに1時間半、何か精神の向上になるような意義のあることを、継続してやってみてはどうか。それでもまだ3晩残る。「週3回の夜の90分」を、1週間の全時間の中で、最も重要な時間になるようにしてもらわなければならない。
◯1週間を6日として計画する
・1週間を7日と考えるよりも6日として考えた方が能率が上がり、より充実した生活ができる。
・その場の思いつきではなく、あらかじめきちんと決めた計画(本業以外に何かをやろうという計画)を実行するのは、週6日に限定しておくべきである。
・「自分で計画したことにも従事せず、その時々で気まぐれに思いついたことだけをやる日」を7日間のうちに1日設けている。だから週1回の休日が持つ本当の意味を(つまり精神に及ぼす効用を)十分に理解できている。
◯毎朝の30分が自分の中に奇跡を起こす
・週に6日、毎朝の少なくとも30分間、そして週に3晩1時間半ずつ、合計すると週7時間半になる。この7時間半で満足するように提案したい。この7時間半をフルに活用すれば、その週全体が活気と情熱に溢れたものとなり、退屈きわまりない職業にさえ関心が増すようになる。
・例えば、毎朝毎晩10分間だけ体操をしているとする。そのおかげでその日1日体調が非常に良く、ますます丈夫になり、やがて体つきそのものまで見違えるほど頑健になったとしても、少しも驚くまい。それなら、毎日平均1時間余りの時間を、精神を豊かにするようなことに使い、そのために、あらゆる精神活動が活気を帯び、それがいつまでも続いたとしても、どうして驚くことがあろうか。
◯小さな一歩から出ないと「習慣」は変わらない
・習慣を変えることこそ至難のわざ。変化というのは、それが改善のためであっても、必ず不便や不快感を伴う。
・習慣を変えるなら、あまり大きなことを公言せず、さりげなく始めなさい。
本書からの学びとしては、1日の中心となる時間(例えば「仕事時間」)を中心に1日が回っていますが、残りの時間に焦点を当てて、その時間をもう一つの時間として自分の精神や知力・体力の向上に充てること。1日を2つの軸で回す工夫を行うことです。タイムマネジメントのような時間術、ハウツーではない上位概念の考え方を知る良いきっかけとなりました。