MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

乱読のセレンディピティ(外山滋比古)

『乱読のセレンディピティ』(外山滋比古

 『思考の整理学』で有名な「知の巨人」とも称される著者。その著者が、「知的刺激ということからすれば、乱読に勝るものは少ないように思える」と言われ、「本はナメるように読むのが良い」との考えが揺らいだ読み方について述べられたのが本書です。本べったりになっていると、読んでいるつもりが本に呑み込まれて、自分を見失ってしまい、知識は得られても、自ら考える力は育たない。私も、考えてみればいろんなジャンルを併読で読んでおり、乱読スタイルを持っているなぁと思いながら本書を読み進めてみました。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯本は買うもの

・もらった本は面白くないもの。感心するのは買った本である。書いた人間の顔がチラホラするようでは本当の読書にならない。どんな優れた著者の本でも、近い人の心を揺さぶるのは難しい。

・本を選ぶのが、意外に大きな意味を持っている。人からもらった本がダメなのは、その選択ができないからであり、図書館の本を読むのがおもしろくないのも、いくらか他力本願なところがあるから。溢れるほどの本の中から、何を求めて読むか、それを決めるのが大変な知識活動になる。

 

◯最もおもしろい読書法

・手当たり次第、本を買って、読む。読めないものは投げ出す。身銭を切って買ったものだ、どうしようと自由である。本に義理立てして読破、読了をしていれば、物知りにはなるだろうが、知的個性はだんだん小さくなる。新刊は新しすぎる、古本は古い。ちょうど読みごろの出版後5〜6年という本は、手に入れることもままならない。図書館はここで役立つ。

・本は読み捨てで構わない。本に執着するのは知的ではない。ノートを取るのも、一般に考えられているほどの価値はない。本を読んだら忘れるに任せる。書物は心の糧。いくら栄養が高いと言って、同じものばかり食べていたら失調を来たし、メタボリック症候群になる。

 

◯速読と遅読

・早く読むのは雑になりやすい。きめ細かなところは読み取ることができない。考えてみると、音読のすすめは、適度の速さで読めるということ。音声の速度は一定の枠がある。いくら早口の人でも1分間に千字を発することはできない。音読と黙読は、読み取る意味が大きく違うということに気づくには、相当の読書経験を要する。速読と遅読では言葉の漢字が違うのである。

 

◯失敗を恐れない

・いくら賢い人でも、乱読すれば、失敗は避けられない。しかし、読めないで投げ出した本は、完読した本とは違ったことを教えてくれていることが多い。失敗を恐れない、それが乱読に必要な覚悟である。失敗はいけない、失敗するなという常識からすれば、乱読は賢明ではないとなる。人間は失敗によって多くのものを学ぶ。ときとして成功よりも大きなものが得られることもある。そう考えると、乱読が、指定参考書などより実り多きものであることがわかる。

 

◯乱読の効用

・乱読の良いところは、早く読むことである。専門、あるいは知識を得るための読書は知らず知らずのうちに遅読になりやすい。言葉は、残像を伴っている。時間的現象であるから、丁寧な読書では、残像に助けられる読みが困難である。

・一般に乱読は速読である。それを粗雑な読みのように考えるのは偏見である。ゆっくり読んだのでは取り逃すものを、風のように早く読むものが、案外、得るところが大きいということもあろう。乱読の効用である。本の数が少なく、貴重で手に入りにくかった時代に、精読が称賛されるのは自然で妥当である。しかし、今は違う。本があるれるように多いのに、読む時間が少ない。そういう状況においてこそ、乱読の価値を見出さなくてはならない。

 

◯不利な条件のすすめ

・自分でものを考える力をつけるには、近くに、強力な人や本があるとかえってよろしくないようである。むしろ遠くにありて読み、遠くにあって考えるものにセレンディピティは起こる。成功からは新しいものが生まれない。失敗、誤解の元において偶然の新しいアイデアが生まれる。あえて良い条件から離れ、不利なところで努力する方が新しいものを見つけることができる。