MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

なぜ「やる気」は長続きしないのか(デイヴィッド・デステノ)

『なぜ「やる気」は長続きしないのか』(デイヴィッド・デステノ)

 理性や意志だけで「やる気」は長続きするのか?実は、そうではなく、①感謝、②思いやり、③誇りという3つの感情を養う方が、自分の願望や目標を、より効果的に、苦労の少ない形で追求できる。この3つの感情を使えば、人間は忍耐強く、誘惑にも負けないようになり、同時に自制心ややり抜く力も強化できる。しかも、失敗、ストレス、孤独の苦しみから自分を守ってくれる社会的な絆をほとんど苦もなく築き上げられる。そんな内容が様々な実験結果とともに紹介されています。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯アリとキリギリス

・決断を下したとしても、すぐに十分な成果を感じられないことが多い。即座に現れる成果と未来に現れる成果のどちらにとってもプラスになるのであれば、ジレンマは起こらない。

・難しいのは、決断が今もたらす費用や便益と、しばらく時間が経った後にもたらす費用や便益が同じではない、選択と費用の便益が、長期的に見た時に一貫していない場合である。

・時が経つにつれて違った結果が展開されるような種類の状況は、異時点間選択のジレンマとして知られている。異時点間選択に関して言えば、減価償却はいわば逆の作用を果たす。まだ所有していないものや報酬の知覚価値はそれが手に入るのが未来であればあるほど減少していく。そのため、例えば工場の組み立てラインから出てきたばかりの新車でも、6週間後に乗れるのと、半年後に乗れるのでは、後者の方が価値が低いように見えてしまう。

 

◯風の中のロウソク

・自制心は風の中で揺らぐロウソクの火のようにもろい。実行機能を利用して感情や欲望を抑えると、記憶力が悪くなってしまう。仕事や練習に取り組んでいる時に、自分の快楽に対する欲求や困難なことに対するフラストレーションを押し殺していると、新たな誘惑に直面したときの意志の力が減退するばかりでなく、現在集中していること自体が学びづらくなってしまう。あなたの脳は感情を押さえ込んでいるとき、それ以外のことはあまりうまくできなくなる。

 

◯3つの感情

・感謝、思いやり、誇りの3つの感情を活用する戦略には、理性、習慣、意志の力を利用する戦略より有利な点がある。

①繰り返し使っても力が衰えることがない

②目の前にある報酬を得ようとしてコントロールを失うことがない

③同時に人生の別の領域でも良い決断ができるようになる

 

◯感謝

・理学の観点から言えば、感謝は過去ではなく、未来に関すること。他の人と協力する気持ちになっているとき、感謝は他人の価値観を変えてしまう。感謝することによって、人間はこれから起こる出来事を良い方向に持っていこうとして、その瞬間、頑張ろうとい気持ちにさせてくれる。

・感謝の大きなメリットの一つは、これが人に進んで何かを与える心構えを取るための最も素早い、簡単な方法であること。

 

◯思いやり

・思いやりは、他の人から何らかの助けや恩恵を受け取っていなかったとしても、他人を気遣う意欲を起こしてくれる。こうして時間やお金などのリソースを捧げて、他の人の役に立つための第一歩を踏み出し、好循環が開始される。

・自分への思いやりが一般的に低い学生は、物事を先延ばしすることが多く、予想通り成績も振るわなかった。

・思いやりは未来をよくするような類の決断や行動を取るよう、私たちを仕向けてくれる。感謝の気持ちと同じように、思いやりは体を癒してくれることに気づくことも大切。精一杯頑張って意志の力を使うのとは違って、思いやりはストレスや不安を原因とするダメージから心と体を守るクッションの役割を果たしてくれる。

 

◯誇り

・誇りの根底にあるものは、自分が何らかの分野で秀でていることを、自分が意識していること。他人から素晴らしいとか、役に立つといった評価を受けるかどうかとは無関係に、人間はほとんどどんな能力にも誇りを抱くことができる。

・誘惑に直面したとき、誇りは自制心を高める方向に心の計算を変えてくれる。誇りの感情は、困難に直面したとき、長い目で見て自分の利益となる技術を獲得できるよう奮起させ、忍耐力を高めてくれる。

・誇りの感情とその人が頑張れる理由には何の関係もない。一生懸命努力するのは、そこにやりがいを感じているから。誇りは後付けに過ぎない。つまり、人が自分の好きなことをしている場合、その人がいつ誇りを抱いたかを知るのは容易ではない。

・ある問題に対処するのに必要な技術が身についていると信じること(自己効力感)自体が、その問題に取り組む意欲を高める。ポジティブなフィードバックをもらった参加者は誇りを感じるのみならず、その作業を上手くこなすために必要な技術が自分にはあるという信念も抱いている。この情報こそが、誇りの感情を引き出す要。

 

 長続きするものとしないもの、何が違うのか。そのカギが見つけづらかったのですが、そのヒントになる一冊でした。長続きしない→3つの感情に着目→次の行動(工夫)を考えるという流れを作っていきたいところです。

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