『明日のコミュニケーション』(佐藤尚之)(◯)
2011年発売の本書。コミュニケーションデザインの第一人者が、ソーシャルメディア戦略について語った一冊。発売から12年経ち、本書を読むと、その先見性に驚かされます。現在は、さらにその先のステージへ向かっているのかもしれませんが、まずはソーシャルメディア戦略の土台を理解する上で役立つ内容です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯ソーシャルメディアの勘所
ソーシャルメディアにおけるコミュニケーション視点での11のキーワード
①「共感」を纏わない情報は広まらない
・ソーシャルメディア上の流通貨幣は「共感」である。
・共感には2種類ある。①情報そのものへの共感、②発信元への共感。
②発信元への共感がとても大切
③有益である可能性が高い情報に受動的に出会う
④情報に出会う順番が変わる
・「マスメディア→ネットで検索」という順番だった情報摂取が、「ソーシャルメディア→友人やネットやマスメディアで確認」に変わってきている。
・AISASで「AI→S」となっていた順番が、「S→I」となる。
・「あれ?アテンションって無くなるんじゃないの?共感がないと情報に出会えなくなるんじゃないの?」
・AISAS:Attention(注意)→Interest(興味)→Search(検索)→Action(購入)→Share(共有)
⑤ネットはネガな場所からポジな場所になり、企業が利用しやすくなった
・リアルでの人間関係が持ち込まれることにより、ネット上でも、リアルと同じような「真っ当な行動」が基本になった。
⑥友人・知人からのお節介なオススメが簡単に得られ、大きな影響力を持つ
⑦情報は「肯定されるもの」になり、企業もどんどん発言しやすくなる
→facebookは褒める記号だけにした。(最近ではYouTubeもいいねだけになっている)
⑧情報や商品に「友人の共感」という重み付けがされる
⑨検索より友人・知人の言葉
⑩等身大の生活者初情報が、かつてないほど人に影響を与えるようになる
⑪企業はオープンかつ透明であることを求められるようになっていく
◯SIPS
・Sympathize(共感する)
ソーシャルメディア上では共感を纏った情報が主に流れてくる。ソーシャルメディア上の流通貨幣は共感。そこで、友人や知人の共感を纏った情報や商品に出会い、共感するところからすべてが始まる。
・Identify(確認する)
共感を覚えた情報や商品が本当に自分の価値観に合っているかどうか、本当に自分に有益かどうかを、検索だけでなくあらゆる手段を用いて確認するというプロセスが入る。
・Participate(参加する)
「購入」というプロセスを「参加」に含めている。
参加には4つのレベルがある。
①エバンジェリスト(伝道者)
②ロイヤル・カスタマー(支援者)
③ファン(応援者)
④パーティシパント(参加者)
共感した約75%は商品を購入したり、サービスを利用したりする。逆に、友人・知人が批判した企業やブランド・商品は、そのイメージが大きく損なわれ、実際に購入をやめる人が出てきている。批判を読んだ人の約5割が購入を控えている。
・Share & Spread(共有&拡散する)
生活者の参加行動は、ソーシャルメディア上でコメントされ、もしくはリツイートやいいね!され、広く共有されていく。
・AIDMA、AISASとの大きな違いは、入り口が注意(Attention)から共感する(Sympathize)に打ちっている点と、購入(Action)がなくなり、参加する(Participate)に移っている点。
・マスメディアではアテンション、つまり目立って注意喚起することが大切だった。だがソーシャルメディア上では、アテンションは逆効果。大声で叫ぶようなアテンションは、共感を纏わない。
ソーシャルメディアは、情報を発信する側にも受ける側にもどちらにもなり得る時代。情報が溢れかえっているからこそ、誰が発信するかが大事なのであって、その「誰が」を知ってもらうためにも、また情報の発信が必要。そう考えると、「誰と繋がっているか」ということが大切な時代とも言えます。ネットでの繋がりと、リアルでの繋がり、どちらも大切にしながら、自分ならではのネットワークと発信力を磨いていきたいものです。