MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

イシューからはじめよ(安宅和人)

『イシューからはじめよ』(安宅和人)(◯)

 圧倒的に生産性が高い人の共通していること、それがこの「イシュー」、つまり「何に答えを出すべきなのか」ということについてブレることなく活動に取り組むこと。本書は、マッキンゼー出身の著者による、考えるべきことを考える手法がまとめられた一冊。問題解決をテーマとした書籍はたくさんありますが、本書はその中でも最初に読んでみる価値がある良書だと思います。実際売れていますし。

 

(印象に残った所・・本書より)

◯本書の代表的な考え方

・「問題を解く」より「問題を見極める」

・「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」

・「知れば知るほど知恵が湧く」より「知りすぎるとバカになる」

・「1つひとつを速くやる」より「やることを削る」

・「数字のケタ数にこだわる」より「答えが出せるにこだわる」

 

◯バリューのある仕事

・どれだけのインプット(投下した労力と時間)で、どれだけのアウトプット(成果)を生み出せたか。

・バリューのある仕事とは、「解の質」と「イシュー度」がともに高いこと。

・一心不乱に大量の仕事をすることで、バリュー度を高めようとしてもムダ。

・「イシュー度」の低い仕事はどんなにそれに対する「解の質」が高かろうと、受益者(顧客等)から見たときの価値はゼロに等しい。

 

◯仮説を立てる

・強引にでも前倒しで具体的な仮説を立てることが大切。

①イシューに答えを出す(仮説が単なる設問をイシューにする)

②必要な情報・分析すべきことがわかる

③分析結果の解釈が明確になる

・言葉で表現するときのポイント

①主語と動詞を入れる

②Whyより、Where,what,how

 

◯良いイシューの3条件

①本質的な選択肢である

②深い仮説がある

③答えを出せる

 

◯イシュー特定のための情報収集

①一次情報に触れる

②基本情報をスキャンする

③集めすぎない、知りすぎない

 

◯イシュー特定の5つのアプローチ

①変数を削る(見極めのポイントを整理する)

②視覚化する

③最終系からたどる(ギャップを整理する)

④「So,What?」(だから何?)を繰り返す

⑤極端な事例を考える

 

◯イシュー分析とは?

・「ストーリーライン」+「絵コンテ」

・ストーリーラインづくりは、「イシューの分解」+「ストーリーラインの組み立て」

・ストーリーラインの2つの型

①Whyの並び立て:理由や具体的なやり方を並列的に立てる

②「空・雨・傘」:課題の確認、課題の深掘り、結論

・絵コンテの3つのステップ

①軸の整理

 単に「◯◯について調べる」ではなく、「どのような軸でどのような値をどのように比較するか」ということを具体的に設計する。分析とは比較、すなわち比べること。

②イメージの具体化

 数字が入ったイメージをつくる(差がある、変化がある、パターンがある)

③方法の明示(どうやってデータを取るか、検討内容、調査の役割、調査手法)

 

◯アウトプットを生み出すとは

・いきなり飛び込まない(いきなり分析や検証活動を始めない)

・答えありきではない。かなり高い確率で誤解が起きる。「自分たちの仮説が正しいと言えることばかり集めてきて、本当に正しいのかという検証をしない」

・トラブル対策

①欲しい数字や証明が出ない

→構造化して推定する、足で稼ぐ、複数のアプローチから推定する

②自分の知識や技では埒があかない

→人に聞きまくる(他力)、さっさとその手法に見切りをつける

 

 ビジネススクールでも最初にクリティカルシンキングを学びましたが、その際も、「イシューは?」が口グセになっていたように記憶しています。社会人にとっても基本中の基本となるテーマだと思います。実際に学んでみて、ビジネスでも日々活用してみて、やはりイシューは何か?から始めると、結果的に速くゴールに辿り着くことができ、生産性も高まっているように思います。ビジネススキルの基礎のひとつではないでしょうか。