『EVX EVトランスフォーメーション』(リブ・コンサルティング)
本書は、中堅・ベンチャーをメインとした経営コンサルティング会社のモビリティインダストリーグループがEVの事業の現在と未来についてまとめた一冊。具体的には、EVシフトが進展している背景といった基礎知識、EVX領域でのビジネスの枠組みを整理した10のビジネスモデルについて書かれています。モビリティ領域のプレイヤーがエネルギービジネスに参入し、エネルギー領域のプレイヤーがモビリティ関連ビジネスを始めるという、相互乗り入れの時代。自動運転とも相まって、社会インフラにもなるであろう、EVの未来。興味深い内容です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯EVはガソリン車よりも単純
①部品点数の減少
・ガソリン車の部品点数はおよそ3万点。これがEVになると2万点かそれ以下。
②組み立ての容易化
・調達した部品やモジュールを組み合わせる「組み立て型」の開発スタイルが主流になっていくと考えられる。
③参入障壁の低下
・部品点数が減り、従来のすり合わせによる開発の必要性が減少したことで、ファブレス生産がしやすいというのがEVの特徴のひとつ。
◯EVX新ビジネスモデル10
①EV×Maas(Uber Japan(株))
→カーシェアや座席を共有するライドシェア、タクシーやバスなどのオンデマンド化。一つのアプリで車や電車、バス、タクシーなど公共交通サービスの経路検索や決済が可能になる交通統制型Maas。出光興産は、飛騨高山でオートシェアというEVカーシェアサービスを展開。
②EV導入支援サービス(住友三井オートサービス(株))
→ガソリン車からEVに乗り換えることで、どのような課題が発生するのかなどの不安を払拭し、EVの導入をスムーズに進めるための支援。
③EV+エネルギーセット販売(トヨタユナイテッド静岡(株))
→EV充電場は自宅やオフィス。つまり電気代が上がる。そのため、ディーラーでは、自社専門の電力プランを用意して、「当社でEVを購入していただければ、特別な電力プランをご紹介できます」といったセット販売を行うビジネスが登場している。
④BCP(パナソニック(株)
⑤充電インフラ(ENEOS(株))
→自宅や事業所の駐車場などでの基礎充電、目的地に着くまでに足りない分を補う経路充電、商業施設や観光地など目的地で行う目的地充電。
⑥Baas((株)EVモーターズ・ジャパン)
→バッテリー交換式モデル。日本で社会実装するには大きな壁がある。車検を通らないこと、規格の標準化という壁。
⑦EMS(エネルギーマネジメントシステム)(自然電力(株))
→エネルギー使用の効率化によるコスト削減
⑧VPP(関西電力(株))
→仮想発電所(バーチャルパワープラント)。太陽光発電、家庭用燃料電池、蓄電池、EVなど地域のそこかしこに分散している電力を高度なマネジメント技術によって束ね、あたかも一つの大規模発電所のように機能させること。
⑨V2X(イオンモール(株))
→「Vehicle to ◯◯」の略。いってなどの電動車と何かを繋げることで生まれる価値。「◯◯」にグリッド(電力網)が入ればV2G、ホームが入ればV2H。
⑩EVフリート(富士通(株))
→フリートとは法人所有の車両。法人や団体で所有している車両の管理と運行管理。この煩雑な管理を最適化、効率化するためのマネジメントがフリート管理。
2035年ガソリン車販売廃止、電気自動車の普及、自動運転、空飛ぶ車・・・、自動車業界ってこれからどうなるの?という疑問。関連企業も多いだけに、業界がガラッと変わっていくこれからの10年。スマホをいじるように、車もお手軽にいじるような感覚に家電化していくのか?充電インフラはどのように街や住宅を変えていくのだろう?などなど、興味の尽きない自動車業界の未来。携帯→スマホのように、しっかり、キャッチアップしていきたいと思います。