『一倉定の社長学シリーズ⑧』(一倉定)<市場戦略・市場競争>(◯)
著者(1918−1999)は、経営指導歴35年、我が国の経営コンサルタントの第一人者で、大中小約5,000社を指導。本書は、著者の社長学シリーズ(10冊)の第八弾「市場戦略・市場競争」。昭和60年の作品です。ランチェスター戦略を中心に、中小企業であっても大企業にどのように勝つのか。市場原理の盲点をつく戦略をまとめた一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
・数量に関することは割り切ってしまい、質的な要因だけを考えれば良い。
・局地戦にのみに限定される法則であって、総合戦の法則ではない。
・局地戦の法則なるが故に、総合戦力では劣っていても、一つ一つの戦場においては、ランチェスターの法則を適用して敵に勝つことができる。
・2つの法則
①一騎討ちの法則
1)兵力の多い方が勝つ
2)占有率の大きな会社が勝つ
→戦いには必ず敵に勝る兵力を投入せよ、敵の強いところを攻めるな、いくら全体で強くとも局地において弱ければその地では勝てない。作戦地域の選定が必要となる。
②集中効果の法則
→A軍3名、B軍2名の場合、両軍とも一人1分間に6発敵に射かけたとき、A軍3名の危険度とB軍2名の危険度は?A軍は2名×6発=12発を3名→4発/人。B軍は3名×6発=18名を2名→9発/人。つまり、4発:9発。危険度の比率は人数の2乗に逆比例する。
いかに数というものが決定的な要因になっているかを知ること。
→企業の戦力は企業規模の2乗に比例する
→局地戦においては、両軍の総戦力とは無関係に、ここの局地における両軍の投入兵力の2乗に比例した戦力となる。
→ここでは、マーケットが大きいからと東京や大阪などの大都市圏に営業所を出そうとする経営者を悪い事例として多数紹介されています。
・占有率を高めることこそ最優先するべきなのに、多くの社長はそれをやるよりも広い地域に売ることを第一に考えるという困った習性を持っている。
・多くの社長の犯す誤りの第一は、カバレッジ(カバーをしている率・・問屋・小売店の何%をカバーしているかということ)を最も重視して占有率に関心を示さないこと。
・第二の誤りは、進出している地域のうち、最も売上額の小さな国・都市・得意先の売り上げをもっと上げなければならないと思い込んでいること。
・戦いというものは、占有率は市場における戦力のバロメーター。自らの戦力と敵の戦力との、絶対的戦力と相対的戦力とのさまざまな組み合わせによって、どうしたら最も有利に戦いを進められるかを考え、戦略を立て、作戦を練り、戦闘行動を開始するもの。
◯市場専有率のランク
・70%以上:独占的な断然たる強みを発揮できる
・40%以上:怖い相手はいなくなる。
・25%以上:不安定な一流。
・10%以上:一流ではないが限界的でもない二〜三流
・10%未満:限界的専有率。限界企業の運命は消え去るのみ。戦略とはただ一つ、徹底した一点集中。敵の弱みで知らなければならないのは質的なもの。それはサービス。お客様サービスこそ、専有率の大小に関係なく、すべての会社にとって最大の武器。
◯ナンバーワンを作る
・「何がなんでもNo. 1」これこそ社長が夢にも忘れてはならない専有率確保の条件。
・No. 1の目標を決めなければならない。
①地域No. 1になる
②商品でNo. 1になる
③得意先でNo. 1になる
→どれにするかではなく、どれとどれを組み合わせるか。
◯蛇口作戦を展開する
・蛇口作戦において、敵に勝る兵力を投入することこそ、勝利を不動のものとする。
・その兵力とは、セールスマンの数ではなくて、特定のテリトリーまたは特定得意先における訪問回数。それも単にセールスマンの訪問回数ではなくて、社長・役員・管理職・セールスマンの訪問回数の総計。
・社長の蛇口訪問一回は、セールスマンの100回の蛇口訪問に勝る。
・訪問回数の法則
①セールスマンの売上高は過去二年間の訪問回数に比例する
②特定会社に対する競合会社の売上比率は過去二年間の訪問回数の2乗に比例する
本書では、とにかく戦う領域を絞り込み、そこに戦力を注ぎ込み、圧倒的な占有率を確保することに焦点が当てられています。営業所の出し方も、顧客への訪問についても、すべて絞り込んだ領域と投入する戦力に関すること。占有率こそ自由競争の中で、大企業・中小企業が共に戦う中で、企業規模を超える要素だということが、本書を読むとよくわかります。