『Think right』(ロルフ・ドベリ)
「自分の知識を過小評価するよりも過大評価する方が多い」「何かを手に入れる時よりも、何かを失う危険がある時の方が素早く反応する」など、傾向を知っていると自分の行動の間違いに気づきやすくなります。本書は、合理的に考えたり、論理的で理性的な行動を取ろうとしたりするときに、一定の法則に従って陥る「思考の落とし穴」についてまとめた行動経済学の書籍です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯フレーミングの罠
・「脂肪分99%カット」と「脂肪分1%」、どっちを選ぶ?
表現の仕方で受ける印象が違う。これを「フレーミング効果」という。
◯希少性の錯覚の罠
・「珍しいものには価値がある」と思い込んでいる。
「希少なもの」に反応しているときには、論理的には考えられない。価格だけでなく、それがどのくらい役立つかを基準に判断しよう。
◯「あなたが好き」の罠
・伝説のセールスマンの成功に成功の秘訣は、「自分がその客のことを大好きだと客に信じ込ませることほど良い方法はない」
・誰かのことを「感じがいい」と思えば思うほど、その人から商品を買ってしまったり、その人を助けてあげようという気になってしまったりする。
・ものを買うときは、売り手の人柄の商品の価値を判断しないようにしよう。相手は存在しないか、その人は感じの悪い人と考えること。
◯ストーリーの罠
・人間は物語で説明しようとする性質を持っている。
・自分の人生をなんとか「1本の線」で繋げようとする。
・すべては、「意味のある」物語に仕立て上げられている。その結果、真実は歪められる。
→つまり、後付けのストーリーが作られて、理路整然と語られるということ。自分の記録を一つずつ、個別に観察するといい。
◯倍々ゲームの罠
・「倍々に増加していく」と思考停止になってしまう。
・紙(厚さ0.1㎜)を50回折りたたむとどのくらいの厚さになるのか。答えは、およそ1億キロメートル。地球から太陽までの距離の2/3の距離に匹敵する。
・①「これから30日間、毎日10万円ずつプレゼントされる」のと、②「1日目は1円、2日目は2年、3日目は4円、4日目は8円と、毎日2倍に増やしていく」のと、どちらを選ぶ?
→①は300万円、②は10億円を超える
・人は、一定数量で増加する関数を感覚的に理解している。しかし、2倍ずつ増加する指数関数と呼ばれるタイプの増加や、100分率(%)で表された増加に対しては感覚的にわからなくなる。
◯過剰行動の罠
・自分がそれまでに経験したことがない、あるいははっきりしない状況で現れやすい現象。
・「投資において、積極性は成果と何ら関係がない」(ウォーレン・バフェット)
・私たちは、早く判断し、過剰に行動に移す傾向がある。状況がはっきりしないときには、何もしないこと。
◯不作為の罠
・手を下すよりも、何もしなかった方が、罪は軽いと訴える感情のこと。
・行動しなくても同じ結果になる場合、大抵の人は行動しないこと(不作為)を選ぶ。その方が同じ損害が発生しても、罪が軽かく感じられるから。
行動経済学の本は好きで、時々読みますが、その度に思うのは、「自然体には怖い面もある」ということ。マーケティングなんかは、行動経済学を研究し尽くして施策が打たれていると思いますが、他人の思惑に知らない間に乗ってしまうということも生じてしまうので、時々、行動経済学の視点で自分を振り返ることも大切だなと感じます。人間の自然な行動パターンを意識することで、自分にとって納得感のある選択ができるのだろうと思います。