『経営者が語るべき「言霊」とは何か』(田坂広志)(〇)
お友達の社長から、「田坂さんの本ならこれ!」と紹介いただいた本です。
お薦めいただいたとおり、これまで読んだ田坂さんの書籍の中で最も経営者視座の書籍で、私のような中間管理職でも「そうそう!」と随所に共感できる良書でした。
内容は、数あるようにみえる経営者の役割は実は1つ、「言葉を語ること」。
ただ、言葉を語るのではなく、力に満ちた言葉、「言霊」を語ることである‥で始まる本書。
経営者の語る、①言葉、②ビジョン、③戦略、④理念、⑤予測、⑥計画、⑦意思決定、⑧志、がなぜ言霊を失ってしまったかという観点から章立てされて書かれています。
(本書の中で印象に残ったところ‥本書より抜粋)
①「言葉」:肚を据えて語る。信ずる力(自分の直感力や洞察力に対する自信)。
②「ビジョン」:未来に対する願望のことではなく、未来に対する洞察。
これから何が起こるのか、これから何を目指すのかを語る。ビジョンと目的を混同していないか。聞く人の想像力を掻き立てているか(優れたビジョンは最適の曖昧さを持っている。中道、中庸。)。
③「戦略」:山登りではなく、波乗り。
変化を感じとり、バランスをとりながら進む。二の矢、三の矢の打ち手だけでなく、二の的、三の的(一石二鳥、一石三鳥)を狙う思考。重層的戦略思考を持たなければ、戦略に力は生まれない(→これは、OBHの講義でも学びました)。
④「理念」:抽象的な理念を抽象的なまま語っていないか?そこに物語はあるか?
⑤「予測」:客観的な予測をするのではなく、主体的な予言(創造)をする。求めるべきは、予言の自己実現。
⑥「計画」:何のために必死に努力をしているのか。矜持を語る。
生き残るためではなく、もっと素晴らしい何かののために頑張っているのではないか?この企業をより良い企業へどう変えるか?この市場をより良い市場にどう変えるか?この社会をより良い社会にどう変えるか?
⑦「意思決定」:決める+説得する+責任を取る
単なる意思決定ではなく、「決断」すること。決断とは、断って決めること。迷い、退路を断ち、覚悟を決めること。
⑧「志」:志を語っているのか、野心を語っているのか?
野心は、己一代で何かを成し遂げようとする願望。志は、己一代で成し遂げ得ぬことを次の世代に託する祈り。その祈りがあれば、経営者の志は必ず社員に伝わるはず。
考えを言語化して人に語れるか‥。現実的には、想いを実現するための最大の難所。本書では、テクニックではない大切なことを学びました。
内省の手がかりを得る良書でした。