『ガンディーの言葉』(マハートマ・ガンディー)
非暴力・不服従運動で、インドを独立に導いたガンディー(1869〜1948)。
英国で弁護士資格を取得し、南アフリカで22年を過ごして45歳でインドに帰国。インド人の弾圧に対し暴力ではなく、英国綿織布のボイコット運動のため糸紡ぎを日課とし、塩の専売に抗議し「塩の行進」を行い逮捕・投獄されるなど、身を賭してインド独立に尽力されました。その際に果たした大きな役割は、「インドの人々の心から恐怖を取り除いた」こと。南アフリカ時代やインド帰国後には新聞を発行して情報発信されており、言葉も多く残されています。
ガンティーの著書もたくさんありますが、本書は、岩波ジュニア新書なので難しすぎず易しすぎず、手頃な読みやすさです。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯両親と家族
・父は宰相。子供の頃は恵まれていたが、贅沢というよりは質素な生活。
・病気の父の看病を経験し、人に奉仕することによって、大きな満足と喜びを得られただけでなく、神に近づくことができるのだと悟った。
・兄達にも深い愛情を持っており、恩義を感じる気持ちと、人が自分のためにやってくれると意識を持つことで、謙虚さと慈悲の心を知るようになる。
・タバコのために召使いのお金を盗んだことがあった。借金をする兄の純金の腕輪から金を少し削り取って売って借金を清算した。この盗みに耐えられなくなって、父親に盗みを告白。無言の叱責に深く心を動かされ、自分を恥じ、二度と盗みをしないと決心した。
◯教育
・弁護士資格取得後、弁護士の仕事で南アフリカに渡る。南アフリカで共同自治農園を開設(トルストイ農園)。農園に住むすべての子ども達の教育を引き受けた。
・最も関心を持ったのが教育。どの子供も教育を受ける権利があると考えた。
・理想的な教育とは、子供にただ文字を教えるのではなく、体と心を鍛えて、子供に自信を与えること。
・職業訓練を重視して、若者が生活する糧を得られるように、伝統的な手工芸や技能を教えた。
・教科書を読んで学ぶより物語にして教える方が、授業内容をよく理解できるが、一方で暗記も脳を鋭くはっきりさせるとても良い方法だと考えていた。
・全てのプログラムから、女性を閉めださないことを決めていた。
◯サッティヤーグラハとアヒンサー
・『新約聖書』にある「”目には目を”は、世界を盲目的にする」という言葉が真実だと確信した。
・全ての人に対して愛と善意を持つことで、どんなに頑固な的に心も変えることができるのだと気付き、受動的抵抗、即ち、非暴力による抵抗を始めた。
・サット(真)+アーグラハ(主張・固執)=サッティヤーグラハ(真への固執・正しさの堅持)を提案。サッティヤーグラハの運動家(サッティヤーグラヒ)が宣誓すること。
1)反対する者の考え方を、誠実に理解するように努める
2)どんな挑発があっても、決して暴力に訴えないこと
3)無限の忍耐力を持ち、愛と思いやりによって、迫害者の心や考え方を変えるように努める
4)目的が達成されるまで、どんな苦しみや困難にも耐える覚悟を持つ
◯誠実と心理
・常に正直でいなさいと奨励した。正直には次のような効用がある。
1)悪いことをしなくなる
2)自分がした結果に喜んで向き合えるようになる⇨臆病でなくなる
3)どんな目標のためにも闘うことができるようになる。なぜならその目標は正当なものでしかありえないから。
4)どのような的にも打ち勝つことができる
5)誠実、高潔、勇気といった、道徳的に優れた全ての特質を持つようになる。
◯チャルカーとカーディー
・ガンディーの願いは、インドの貧富の差をなくすこと。底辺と先端にあまり違いのない、平らな状態を見たいと願っていた。これを実現する唯一の方法は、村の自治と独立であると考えていた。
・「紡ぎ車を通して伝えたいのは、搾取しようとする心を、奉仕する心に変えること」
◯受託制度
・欲しいものを手に入れるために、私たちはやがて、それが公正なものであろうとそうでなかろうと、どんな手段にでも訴えるようになる。そうならないように、受託制度を考えるようになった。
・「与えられた貴重な自然の資源に気を配り、守り育て、せめて受け取ったものの一部だけでも返すのが、私たちの責任である。私たちは所有者でなく、保護者であり世話人に過ぎない。税金を高くしたり、協同所有者を設定することによっては、良い結果は出ない。どちらのやり方も、怒りや暴力を引き起こす。人類は互いに思いやりや優しさ、気遣い、愛を示すようにならなければならない」
・最大多数の最大幸福ではなく、全員の最大幸福を信じていた。
・大変宗教的な人。自分をヒンドゥー教徒と呼ぶことに誇りを持っていた。ある一つの宗教型の宗教に優っているということはあり得ないといった。
・「すべての宗教は、どれもそれぞれに意義があり平等なもの。私たちはみな、巨大な木に茂る葉。その木の根は地底の奥深くにあって、その幹は揺らぐことがありません。どんなに強烈な風が吹いたとしても、動くことがないのです」
・「国家は例外なく非宗教的でなければならない。そうすれば、すべての国民は、法律のもとで平等になる。しかし、どの人もこモンローを破らない限り、どんな邪魔や妨害も受けることがなく、自由に宗教を求めることができる。」
まっすぐに思いを貫いた信念の人というのが第一印象です。弁護士の仕事がきっかけで20年以上暮らすことになった南アフリカでの迫害と英国支配下にあったインドへの帰国後の迫害、宗教的対立。どちらの国においても新聞に寄稿し、思いを伝え、それを自ら行動で示し続けた。その発信と行動にインド国民は心を打たれたのだろうと想像しました。あと数冊、さらに深めたいと思います。