MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

はじめて哲学する本(藤原和博)

『はじめて哲学する本』(藤原和博

 リクルートから杉並区立和田中学校長、現在は奈良市立一条高校校長を勤めていらっしゃる著者が、2010年に中学生に向けて書かれた「哲学」に関する一冊。「哲学」といっても固いものではなく、身の回りの日常にあること(人間関係や仕事や生き方など)がテーマとなっており、とても読みやすい内容です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯大人はどうして仕事に行くの?

・大人の世界では、相手がやっている仕事を確かめたいときに「あなたは、何でメシを食っているんですか?」と聞くこともある。だから、まずは「衣食住」という生活の基本を守るために、「仕事」をしていると言える。

・「衣」=服を着て、

・「食」=食べて(必ずしも米のメシじゃなくてもいいから)、

・「住」=安心して生活できるところに住まうため。

・「衣食住」が事足りると、人間には、もう少し高い欲求が生まれる。ちょうどピラミッドを底辺から積み重ねていくように、「衣食住」のベースの上に「遊学働」の2回そう目が乗っていると感がてみてほしい。

・「遊」=いかに遊び、

・「学」=いかに学び、

・「働」=いかに働くか、だ。

・「遊学働」のいずれもが一人でやっていてもさみしい活動だから、誰と一緒にやるかが大事になる。

・大人たちは「衣食住」の生活基盤を固めると同時に、「遊学働」を通じて「自己実現」をはかっている。

 

◯どうして大人は、学力、学力って言うの?

・「知徳体」という言葉がある。子供が成長するには、「知」「徳」「体」のバランスが大事というように使う。

・「知育」=頭を鍛えること

・「徳育」=心を鍛えること

・「体育」=体を鍛えること

・成熟社会では、「1+2=3」というように、「正解が一つ」であることが圧倒的に少なくなってしまう。だから、20世紀の世界より、思考力、判断力、そして表現力が要求される。

・よく考えて、キミ自身が納得すると同時に、キミにかかわる他者をも納得させられるような解を導く必要がある。

 

◯情報編集力の世界

・情報処理力=ジグソーパズルを早くやり遂げる力。

・情報編集力=レゴをやるときに要求される力。想像力次第で、世界観を作り出す力。

・情報編集力を進化させる5つの技術

①コミュニケーションする技術

②ロジックする技術

③シミュレーションする技術

④ロールプレイングする技術

⑤プレゼンテーションする技術

 

◯誰でも天才になれるの?

・一般的に大人は、「子どもの個性も、あらかじめ素質や才能として宿っていて、それを磨けばいいと考える。キミが個性的な才能を発露するかどうかは、もっぱら、キミ自身の努力と指導者の考え方の賜物だ」と勘違いしている。

・のちに「天才!」と呼ばれることになる人たちも、実は生来の「才能や資質」によるのではなく、「その後に置かれた環境と練習量(もちろん試合や発表会での場数を含む)」によることの方が大きい。

・なんでもマスターとなるには1万時間の練習が不可欠なのだそうだ。逆に、1万時間の練習を経れば、誰でも天才になれる。だとすれば、キミも今から取り組めば、何にでもなれるってことだ。「1万時間の法則」は、人間の可能性に限りない自身を与えてくれる素晴らしい発見だと思わないか?

 

◯挨拶できない子ってそんなに、へん?

・大人になると「挨拶」が途端に形式的になったりする。

・「建前」と「本音」がすごく分かれてきて、「こんなヤツとは金輪際付き合いたくない!」と心では思っていても、「挨拶」しておいたほうが得だと判断すれば、ニコニコしながら「おはようございます」なんて台詞を吐くこともできる。

・大人はみんな、さまざまな社会の舞台で俳優のように役割を演じているんだ。

・その意味では、朝の不機嫌なときに、明るく「おはよう!」だなんて言えないよ、というキミの方が正直なのかもしれない。

・でもそのうち気づくと思うけれど、ダルかったり、機嫌が悪かったり、不調だったりするときこそ、カラ元気でいいから、わざと大声で「挨拶」を繰り返すと、だんだん元気が出てくるから、人間は不思議だ。これを「自己暗示」の効果という。

・「挨拶」には、「ボクはOK!」「ワタシは大丈夫」と、自分を暗示にかける効果がるということ。

・「挨拶」は、他人のためにするだけのものだと勘違いしていたキミ。だから、めんどい、ウザいと決めつけていたかもしれないけれど、自分のために挨拶するという面もあることを、よく覚えておいて欲しい。

 

 目線が読み手である中学生目線である(気持ちを汲み取る)ところが本書の良い点。私の人生モットーである「よく働き、よく遊び、よく学ぶ」にも通じる内容。話し手(大人)目線で読むと、諭している感じがすると思われることも、読み手(中学生)目線で読むと、生きるヒントを教えてもらっており、「もっと教えて」「もっと話して」って思える。読み手の興味を引く、これが「話す」コツかもしれないと思いながら読みました。

はじめて哲学する本

はじめて哲学する本

 

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