MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

独学の技法(山口周)

『独学の技法』(山口周)(◯)

 本書は知的戦闘力を向上させるための「独学の技術」をまとめた一冊。独学を単なるテクニックや効率化ではなく、システム化してその枠組みの中で質を高めていく取り組みが紹介されています。システムは、①戦略、②インプット、③抽象化・構造化、④ストックという4つのステップで成り立ち、システムの出力はボトルネックに規定される、すなわち、①〜④をバランスよく向上させないと、独学の質は落ちるということ。学びは、基本は毎日の独学でもあるため、押さえておきたい内容でした。

 

【本書の学び】

①戦略⇨インプット⇨抽象化・構造化⇨ストックというシステム。システムの出力はボトルネックに規定される。

②知識の不良資産化。学校で学んだ知識は急速に陳腐化する。

③人生三毛作。現役年齢の延長と企業・事業の旬の短命化

④問いのないところに学びはない

⑤「食欲がないのに食べると健康を害するのと同じように、欲求を伴わない勉強は記憶を損なう」(レオナルド・ダ・ヴィンチ

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯重要なのは、「覚えること」を目指さないこと

・インプットされた知識の多くが極めて短い期間で陳腐化し,効用を失うことを前提にして独学のシステムを組む必要がある。

・「知るということは、時代遅れになりつつある」(MITメディアラボ創設者:ニコラス・ネグロポンテ

 

◯独学の戦略

・テーマが主、ジャンルが従。

・自分が学ぶべきジャンルは2つのジャンルのクロスオーバーを考える。ジャンルは自分が持っている本性や興味の起点で考える。

(例)テーマ:組織における権力構造、ジャンル:歴史文学×政治哲学、映画×動物行動学⇨様々なジャンルの知識が組み合わさり、独自の示唆や洞察が生まれる。

 

◯インプット

・読書の4つの目的

①短期的な知識で必要な知識を得るためのインプット(主にビジネス書)

②自分の専門領域を深めるためのインプット(ビジネス書+教養書)

③教養を広げるためのインプット(主に教養書)

④娯楽のためのインプット(なんでもあり)

・インプットは「短期目線」でいい。クランボルツ(スタンフォード大学)の調査では、キャリアの8割は本人も予想しなかった偶発的な出来事によって形成されていることが明らかになった。長期的計画を持って、その目的達成のために一直線の努力をするというのはあまり意味がない。

・キャリアの目標を明確化し、自分の興味の対象を限定してしまうと、偶然に「ヒト・モノ・コト」と出会う機会を狭めることになる。

・将来の目標を設定して、その目標から逆引きして読む本を決めてそれに集中するというのは、効果的でないどころか、むしろ危険ですらある。

・「インプットはアウトプットが必要になった時にすればいい」「アウトプットの目安がついていないインプットは非効率」という意見はミスリーディング。無目的に興味の赴くままに、ひたすらインプットする時期がないと、長い期間に渡って継続するような真に強力でユニークな知的戦闘力は身につけられない。

機会費用を小さくするには、「本を書いて欲しい」「アドバイスをして欲しい」「手伝って欲しい」と言われていない時期、時間が腐るほどあるという時期、そういう時期に思いっきりインプットをする。これしかない。

・「ガベージイン=ガベージアウト」。ゴミのようなインプットを繰り返していれば、いつまでたってもゴミのようなアウトプットしか生み出せない。

 

◯抽象化・構造化

・抽象化とは、細かい要素を捨ててしまってミソを抜き出すこと。「要するに◯◯だ」とまとめてしまうこと。

・ストックの際に、常に「学んだ知識」と「抽象化によって得られた仮説」をセットにしてストックすることを心がける。

・得られた知識は何か?

・その知識の何がおもしろいのか?

・その知識を他の分野に当てはめるとしたら、どのような示唆や洞察があるか?

 

◯ストック

・重要なのは「常識を疑う」という態度ではなく、「見送っていい常識」と「疑うべき常識」を見極める選球眼。これを与えてくれるのが「厚いストック」。

・本のアンダーラインは最初のステップ。本を「汚く読む」ができないと先に進めない。本はノートと同じ感覚。「事実」「洞察」「示唆」「行動の指針」にアンダーラインを引く。

①アンダーラインを引く

②選り抜き(5〜9箇所)

③転記(エバーノートなど検索できる状態にする)。10分以内で行うと費用対効果が高い。

 

 インプットは、計画的にやるのではなく、常日頃から範囲を意識的に広げて情報に触れておくことが大切だなと感じました。必要に迫られてからのインプットと、インプットの習慣化は別物。領域を広げながら読書するような毎日の積み重ねはやがて、点と点が繋がって、ユニークな発想や柔軟な対応力、幅広い的揚力につながっていくという実感があります。

知的戦闘力を高める 独学の技法

知的戦闘力を高める 独学の技法

 

f:id:mbabooks:20190822073847j:plain