『実践ポジティブ心理学』(前野隆司)(◯)
心の病になっていなくても、そうならないように気をつけたり、心の病にかかっていない今の状態をよりよくして幸せな状態に持っていくことを目指す「ポジティブ心理学」。心が普通の状態にある人が、今よりもっといい状態になって幸せになることのできる学問です。ポジティブ心理学を学ぶことで、さらに幸せになることの時代。どのように不安やストレスに対処できるのか、どうやって怒りの感情を処理するのか、どうすれば幸せになれるのかといったことについてまとめられています。
(印象に残ったところ・・本書より)
・ポジティブ心理学とは、「幸せの研究」。
・ポジティブ感情対ネガティブ感情の比率が3:1であれば、人生のあらゆる面が好転していくという研究成果がある。
・100%ポジティブでいる必要はない。ポジティブもネガティブも両方認めよう。
◯楽観的説明スタイル
良い出来事が起きたとき、その出来事の原因を
・内的(自分自身に原因がある)
・永続的(これからも長く続く)
・普遍的(あらゆる場合に作用する)
に捉える。
◯幸せのための5つの条件(セリグマンの「PARMA」)
①Positive Emotion(ポジティブ感情)
前向きな感情や良いフィーリングのこと。
②Engagement(エンゲージメント)
今の活動に没入すること。何かに没頭して、他のことを全て忘れて集中している状態のこと。
③Relationships(関係性)
周りの人々と本質的につながっていること。
④Meaning(意味・意義)
人生の意味。なんのために生きているのか、ということ。
⑤Achievement(達成)
何かを成し遂げ成功した感覚がある人は幸せな人である。
◯SPARKレジリエンス・プログラム(ボニウェル)
なんらかの出来事が起きたとき、人はそれをどのように捉え、どのような感情が湧き、どのような思考パターンに陥るのか、その結果どう行動し、そこから何を学ぶのかを示したもの。
①Situation(出来事そのもの)
何が起きたのか、事実に目を向け状況を把握する。
②Perception(出来事に対する捉え方(7つのオウム))
起こった出来事を感情を入れずに受け止め解釈する。
③Auto Pilot(自動的に生じてくる感情)
解釈によって自分の中でどのような感情が自動的に生まれてくるかを把握する。
④Reaction(反応・行動)
捉え方のパターンがどのように行動に影響するのかを理解する。
⑤Knowledge(捉え方のパターンとそれに伴う感情・行動についての学び)
その状況から何を学んだかを理解する。
◯心に潜む7種類の思い込みオウム(捉え方パターン)
①批判オウム(他人を非難しがち)
②正義オウム(何が公平で正しいかを気にしがち)
③負けオウム(自分と他人を比較し、落ち込む)
④あきらめオウム(何をするにも「自分にはできない」と決めつける)
⑤心配オウム(将来に対して悲観的)
⑥謝りオウム(自らを攻めた結果、自己評価や自尊心を下げる)
⑦無関心オウム(何事にも「我、関せず」)
◯レジリエンスが高まる4つの方法(ボニウェル)
①I can(私は◯◯できる)
過去に自分が経験したこんな状況を思い出す。
②I have(私には友人・知人がいる)
過去に大変お世話になった人を書き出す。
③I like(私は◯◯が好きだ)
自分の大切な人の写真や楽しかったことを考える。
④I am(私は〇〇である)
自分の得意なこと、強みを考えてみる。
◯幸せな人が長生きする
・幸せを感じている人は、そうでない人に比べて7.5〜10年長生きするという研究結果がある。
・幸せな人が長生きする2つの理由
①幸せな人は、良い生活習慣を持つ傾向にある。
裏を返せば、不幸な人はストレスが多いため、飲酒やタバコを吸うなどの不健康な生活習慣に陥りやすい。
②幸せそのものが、身体に直接良い影響を与える。
笑うことで免疫力が高まり病気になりにくい。笑っているときは、自然と腹式呼吸になっている。腹式呼吸で筋肉が使われることで、体内に酸素が多く取り込まれ、血行促進や新陳代謝に繋がる。
◯幸せの4つの因子
①「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)
・コアコンピタンス(私は有能である)
・社会の要請(私は社会の要請に応えている)
・個人的成長(私のこれまでの人生は、変化、学習、成長に満ちていた)
・自己実現(今の自分は「本当になりたかった自分」である)
②「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
・人を喜ばせる(人の喜ぶ顔が見たい)
・愛情(私を大切に思ってくれる人たちがいる)
・感謝(私は、人生において感謝することがたくさんある)
・親切(私は日々の生活において、他者に親切にし、手助けしたいと思っている)
③「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)
・楽観性(私は物事が思い通りにいくと思う)
・気持ちの切り替え(私は学校や仕事での失敗や不安な感情をあまり引きずらない)
・積極的な他者関係(私は他者との近しい関係を維持することができる)
・自己受容(自分は人生で多くのことを達成してきた)
④「ありのままに!」因子(独立とあなたらしさの因子)
・社会的比較思考のなさ(私は自分のすることと他者がすることをあまり比較しない)
・制約の知覚のなさ(私に何ができて何ができないかは外部の制約のせいではない)
・自己概念の明確傾向(自分自身についての信念はあまり変化しない)
・最大効果の追求のなさ(テレビを見るときはあまり頻繁にチャンネルを切り替えない)
◯ハッピーエクササイズ
「毎晩寝る前に、その日あった『3つの良いこと』を書き出し、これを1週間続ける」
・人は1日の終わりにその日を振り返るとき、その日いろいろなことがあったにも関わらず、今日あった嫌なことに焦点を当ててしまい、そのことで頭がいっぱいになってしまう傾向がある。
・嫌なことばかりに目が向いてしまうと、その日にいいことが10個あって、嫌なことは2個だったとしても、その日は嫌な日だったと認知してしまう。
・これに対し、「3つの良いこと」を書くと、それまで漫然と過ごしていた1日の中にも良いことがあったのだと気づくことができ、それをもとにして、1日を良い方に見直すことができる。
実は、4つの因子が大体当てはまるようにここ数年で気持ちや捉え方が変わってきている感じがします。「3つの良いこと」は3つではなく1つですが、もうかれこれ1年半ほど継続しています。認知が変わると思考・行動が変わり、結果が変わり、感情・捉え方が変わっていくという好循環は、確かに存在するなという実感があります。ネガティブを無理やりポジティブに置き換えるような発想ではなく、「捉え方」をどうするかという感覚で臨めば、割とすっと入ってくる考え方だと思います。