MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

幸福学(編:ハーバード・ビジネス・レビュー編集部)

『幸福学』(編:ハーバード・ビジネス・レビュー編集部)

 本書は、ハーバード・ビジネス・レビューからEI(Emotional Intelligence)シリーズとして刊行された論文集です。幸せな従業員は、不幸せな従業員よりも、創造性が3倍高く、生産性が30%高く、欠勤率が低く、離職率が低く、組織を助け、外向的で、知的で、創造的で、情緒が安定し、健康であり、長寿でもあるそうです。幸せについて探求するきっかけにもなる、とても読みやすい一冊でした。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯職場での幸福

・幸福な人ほど有能な働き手である。仕事と同僚に対してエンゲージメント(意欲や愛着、一体感など)を持っている人は、より懸命に、そしてより賢明に働く。

・私たちの感情のあり方は、思考のあり方と連動している。つまり、思考は感情に影響し、感情は思考に影響する。

・感情、思考、行動の間には、神経学的に明白なつながりがある。

・職場で十分にエンゲージメントと幸福感を得るための3つのこと

①将来に向けた有意義な展望

②意義のある目的

③素晴らしい人間関係

 

◯「否定的な感情がない」ことが「幸福」ではない

ポジティブ心理学研究の基礎「PERMA)

①P:ポジティブな感情

 安らぎ、感謝、満足、喜び、インスピレーション、希望、好奇心、愛などの感情

②E:エンゲージメント

 タスクやプロジェクトに没頭すると、我を忘れ、いつの間に時間が経っているという経験

③R:関係

 他者と有意義で肯定的な関係を持つ人は、そうでない人よりも幸福である

④M:意味

 誰もが人生の意味を必要としている

⑤A:達成・業績

 より良い自分になるために何らかの努力を続ける必要がある

・幸福の誤解

「幸福ビジネスが犯している最大の考え違いは、幸福を手段ではなく目的にして、望みのものを得たら幸せになれると考えていること。しかし、実際の脳の働きは逆で、目標を達成してしまうと幸福感が低減することが判明している」

「私たちは”幸福であること”を最終的なゴールとみなしがちですが、本当に重要なのはそこに至るプロセスであることを忘れています。何をしている時が一番幸せかを発見し、その活動に定期的に関わることで、私たちは充実した人生を送ることができるのです」

 

◯インナーワークライフの質を高める「進捗の法則」

・「進捗の法則」

 仕事中に「感情」「モチベーション」「認識」を高める可能性があるすべての要素のうち、最も重要なのは「有意義な仕事の進捗を図る」ことである。

・創造的な仕事の生産性を促すのは、主として職場におけるその人のインナーワークライフ(感情、モチベーション、認識の相互作用)の質。

・「最良の日」をもたらす一番の出来事は、個人やチームの仕事の進捗。「最悪の日」をもたらす一番の出来事は、仕事の挫折や後退。

・「進捗の法則」をわかりやすく表現すると、ある人が一日の終わりにやる気と満足を感じていたら、きっとその人には何か進捗があったのだ。進捗と挫折はインナーワークライフの3つの側面すべてに影響することがわかった。

・前向きの認識、達成感、幸福感、そして場合によっては高揚感が、進捗の後に生じる。

・認識の悪化、フラストレーション、悲しみ、場合によっては嫌悪感が、挫折の後に度々生じることもわかった。

・進捗の法則が働くには、仕事がそれをする人にとって有意義なものでなければならない。

 

◯幸福のマネジメント

・成功している社員の特徴

①活力をみなぎらせている

②たゆまぬ学習

⇨これら2つは車の両輪のような関係にある。

・仕事への熱意を引き出し続ける方法

①判断の裁量を与える

 「仕事を任されている」と感じ、業務のやり方について積極的に発言するようになり、学習の機会も増える。

②情報を共有する

 自分の仕事が所属する組織の使命感や戦略とどう調和するかを納得すれば、より良い貢献ができる。

③ぞんざいな扱いを極力なくす

 職場でぞんざいな扱いを受けた人の半数は仕事に傾ける努力を意識的にセーブ市という結果が得られている。

④成果についてフィードバックを行う

 フィードバックは学習の機会をもたらし、働き手の熱意を引き出す。フィードバックを受けるとモヤモヤが消えるため、社員たちは自分と組織の目標に向けて脇目も振らず邁進する。

 

 様々な実験検証に基づき裏付けを取って分析されているので、読んでいても納得感がありました。幸福学はふわっとした議論になりがちなので、人に説明できる論拠があると嬉しいですね。人により感じ方、考え方が異なるので、難しい領域であることは間違いないのですが、人生にとって大きなテーマなので、自分なりに考えが整理できるといいですね。

ハーバード・ビジネス・レビュー[EIシリーズ] 幸福学 (ハーバード・ビジネス・レビュー EIシリーズ)

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