MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

スティーブ・ジョブズII(ウォルター・アイザックソン)

スティーブ・ジョブズII』(ウォルター・アイザックソン)(◯)

 上下巻800ページ以上に渡り詳細にジョブズの一生が語られています。キレることが多く言葉も悪く、「一緒に働いたらさぞかし大変だろうなぁ」と何度も思って読み進めました。最後の最後にジョブズ自身の言葉で「自分は何をしてきたのか、自分は何を残すのか」について6ページ分語った部分があります。これが感動的!この6ページのために、ここまで読み進めてきたんだなと思います。まとめは、この最後の言葉より抜粋。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯僕はいつまでも続く会社を作ることに情熱を燃やしてきた。すごい製品を作りたいと社員が猛烈に頑張る会社を。それ以外は全て副次的だ。原動力は製品であって、利益じゃない。スカリーはこれをひっくり返して、金儲けを目的にしてしまった。ほとんど違わないというくらいの小さな違いだけど、これがすべてを変えてしまう。

 

◯「顧客が望むモノを提供しろ」という人もいる。僕の考え方は違う。顧客が今後、何を望むようになるのか、それを顧客本人よりも早く掴むのが僕らの仕事なんだ。僕は市場調査に頼らない。歴史のページにまだ書かれていないことを読み取るのが僕らの仕事なんだ。

 

◯文系と理系の交差点。この「交差点」が僕は好きだ。アップルが世間の人たちと心を通わせられるのは、僕らのイノベーションはその底に人文科学が脈打っているからだ。すごいアーティストとエンジニアはよく似ていると僕は思う。どちらも自分を表現したいという強い想いがある。

 

◯すごい製品を作りたいと情熱に燃えていれば、統合に走るしかない。ハードウェアとソフトウェアとコンテンツ管理をまとめるしかないんだ。すべて自分でできるように、新しいところを拓きたいと考えるはずなんだ。他者のハードウェアやソフトウェアに対してオープンな製品にしようと思えば、ビジョンの一部をあきらめなければならないからね。

 

◯スタートアップを興して何処かに売るか株式を公開し、お金を儲けて次に行く。そんなことをしたいと考えている連中が自らを「アントレプレナー」と呼んでいるのは、聞くだけで吐き気がする。連中は、本物の会社を作るために必要なことをしようとしないんだ。それがビジネスの世界で一番大変な仕事なのに。先人が遺してくれたものに本物を何か追加するにはそうするしか方法はないんだ。一世代あるいは二世代あとであっても、意義のある会社を作るんだ。それこそウォルト・ディズニーがしたことだし、ヒューレットとパッカードがしたこと、インテルの人々がしたことだ。彼らは後世まで続く会社を作った。お金が儲かることだけじゃなくてね。

 

◯何が僕を駆り立てたのか。クリエイティブな人という音は、先人が遺してくれたものが使えることに感謝を表したいと思っているはずだ。僕がいろいろできるのは、同じ人類のメンバーがいろいろしてくれているからであり、すべて、先人の肩に乗せてもらっているからなんだ。僕らの大半は、人類全体に何かをお返ししたい、人類全体の流れに何かを加えたいと思っているからなんだ。そして、人類全体に何かをお返ししたい、人類全体の流れに何かを加えたいと思っているんだ。それはつまり、自分にやれる方法で何かを表現するってことなんだ。僕らの先人が遺してくれたあらゆる成果に対する感謝を表現しようとするんだ。そして、その流れに何かを追加しようとするんだ。

 

◯死んだ後も何かが残るって考えたいんだ。こうしていろいろな体験を積んで、多分、少しは知恵もついたのに、それがふっと消えてしまうなんて、なんだかおかしな気がする。だから、何かが残ると考えたい。もしかすれば自分の意識が存在するのかもしれないって。でも、もしかしたら、オン・オフのスイッチみたいなものかもしれない。パチン!その瞬間にさっと消えてしまうんだ。だからなのかもしれないね。アップルの製品にオン・オフのスイッチをつけたくないと思ったのは。

 

 生き様こそが後世に遺す最大のものとは、『後世への最大遺物』(内村鑑三)で述べられていたことですが、本書を読んで、まさに生き様を後世に伝え、そして生き様が製品となり社会の文化として根付いたというすごい方だなと改めて感じました。まだ読んでいない方がいらっしゃれば、おすすめの書籍です。

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