MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

ブラック校則(荻上チキ、内田良)

『ブラック校則』(荻上チキ、内田良)

 著者は評論家で「ブラック校則をなくそう!プロジェクト」スーパーバイザーの荻上氏と「学校リスク」について広く情報を発信している大学院准教授の内田氏の共著。アンケート調査に基づき、校則の実態を調査した上で、ブラック校則がもたらす害悪などについて論じた一冊。「へー、こんな校則があるの?生徒も息苦しい、過ごしにくな」と驚く一方、規律を保ちたちたい学校側の意向。「ルールだから」「伝統だから」と説明のような説明でないような学校側の回答など、中高校を中心とした実態が垣間見れます。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯ブラック校則の具体事例

①髪染め強要

・子供の髪の地色が茶色く、そのことを指導されたため美容院で黒く染めたが、翌日まだ茶色と指摘された。許可が出るまでは、毎日早めに登校し別室で一人過ごすことに。白髪染めを何度も使い、カツラのように真っ黒になったらやっと許してもらった。以降も毎月「光を当てたら髪色がまだら、染めているはず」と言われる。実際には、毎月指導のせいで黒染めしているためまだらになっているのでは。(私立高校・保護者)

・髪が茶色くなるからドライヤーの使用禁止という校則も意味がわからない。(公立高校・保護者)

 

②パーマ禁止

・子供がくせ毛であることは申請し許可されているのに、それを伝えても「ストレートパーマに伸ばすように」と注意されたこともあった。保護者から生徒指導や担任・学年主任へ訴えたが改善せず。(公立高校・保護者)

 

③細かな毛髪指導

・髪を切ったばかりの時に、くせ毛の自分に「まっすぐ伸ばせば『まゆに前髪がかかる』という禁止事項に引っかかる」と注意された。禁止の理由を尋ねたが、「校則を守れない奴は社会に出られない」と言った的外れな回答のみ。(公立高校・当事者)

・2カ月に一度服装検査があり、頭髪や服装を厳しくチェックされる。ある時は髪を短めにしていたのに、くせ毛の前髪を手で伸ばされ、「眉毛にかかっているからアウト」と指導された。その夜に自分で前髪を切ったが、翌日の再検査で「自分ではなく床屋で切ってもらって領収書を見せろ」と要求された。(公立高校・当事者)

 

④服装規定

・女子は、髪型は前髪がまゆにかかってはいけない。肩に髪がついたら結ばなくてはいけない。触角、三つ編み、編み込みなどは禁止。髪ゴムとピンは飾りのついていない紺・黒・茶の物で、パッチピンやリボンは禁止。スカートは膝下、ストッキング、靴下は色指定で、アンクルタイプは禁止。男子はソフトモヒカン禁止。眉・襟・耳に髪がかからないようにする。第一ボタンまでしか開けてはならない。靴も、内履きも外履きも、スノートレッキングシューズも指定。私たちは軍隊にいるようだ。(公立中学校・当事者)

・靴下は白のみ。保護者の洗濯が大変。タイツは認められていないため、冬は女子生徒が寒い思いをしている。マフラー・ネックウォーマーをつけてはいけないので、冬場に耳がしもやけになる。長靴も禁止。雨の日に濡れて、次の日もつぐが乾かない。

・靴下は、長さと黒・ワンポイントまでという指定の校則があり、1度目はグレーだった。2度目は足首丈だった。3度目は校則の通りにしていたのに、ワンポイントのアメリカ国旗の色使いが派手、という理由で指導され反省文を書かされた。(公立高校・保護者)

・どんなに寒くても女子のタイツ着用禁止。どんなに暑くても女子は指定のハイソックス。タイツなどに関しても「なんでダメだんですか?」と先生に聞いたら、「おしゃれの一環になる」とのこと。(私立高校・当事者)

・理解できない校則が多く、特にひどいのがマフラー・ネックウォーマー・スヌードの禁止。遠方からの生徒は片道40分近く歩いて通学するのに、これらの禁止で冬の登下校は本当に辛い。生徒は禁止なのに先生たちはマフラーやネックウォーマー、耳当てをしていることも腹立たしい。保護者懇談会で話したが「校則だから」の一言。(公立中学校・保護者)

⇨規則が最も不合理な形で現れるのが、防寒や暑さ対策の禁止。こうしたルールは「規則のための規則」であり、合理性はない。よく言われる「我慢することが教育につながる」というのは幻想で、空調の効いた部屋で授業に集中した方が、効率がいいのは明白だ。

 

⑤セクハラ的指導

・「汗をかくから」という理由で、地域全体で小・中の体育の授業では肌着着用が禁止。男女一緒で、倒立の練習など服がはだけるような運動もしている。低学年ならわかるが、高学年では第二次性徴期に入るというのに驚いた。子供が嫌がって体育の授業を休みたがっていた。担任に訴えたが埒があかず、学年主任の女性教師に相談したところ、替えの肌着を持参するなら可ということになった。(公立小学校・保護者)

・制服の下に着る服の色を白のみと指定されていた。夏場に黒シャツを中にいていたら、脱ぐように強要され、下着一枚の上に制服を着ることになり、目立って恥ずかしく辛かった。なぜ黒ではいけないのか?と尋ねても、「決まりだし、黒だからいけない」と全く納得できない答え。そもそも校則には載っておらず、先生たちが後付けで決めたもの。(公立中学校・当事者)

 

⑥部則

・運動部だったが、一科目でも赤点を取れば丸坊主にすると言われた。バリカンで丸坊主にされ、部員全員の前で叱咤されたことがショックで不登校に。(公立高校・保護者)

・1年生が全員、部活動に関係なく剣道や柔道などの寒稽古を朝早くから強要された。怪我をするだけなのに、なぜそんなことをするのか疑問。(公立高校・当事者)

 

⑦その他

・学校にお菓子を持ってきた人がいることがわかり、アンケートが行われた。そんなかの「この状況をどう思うか?」という設問に「なぜお菓子を持ってきてはいけないのか。ゴミが出る、授業の妨げになるのはわかるが『中学生らしくない行動』と言われる理由がわからない」と書いて提出。学年集会で叱られた際、「お菓子を持ってきてはいけないという校則に疑問を持つ人は、自己中心的で社会に出たらやっていけない。ダメなものはダメ」と呼びかけられた。

 

 などなど、「ん?」って思う校則が山盛りです。何らかの理由があってできたルール。疑問を投げかけられた時に、「ルールだから」「伝統だから」では、納得が得られないのは当然で、ルールを運用する以上説明責任が付いて回るはずなのにと思ってしまう、学校だけではなく、会社などいろいろな組織に当てはまる問題かと思いました。いろんなルールには、それぞれメリット・デメリットがあり、最後は判断の問題に行き着くのだろうと思いますが。

ブラック校則 理不尽な苦しみの現実

ブラック校則 理不尽な苦しみの現実

 

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