MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

実践・論語塾(安岡定子)

『実践・論語塾』(安岡定子

 昭和を代表する陽明学者である安岡正篤さんのお孫さんで、子ども論語塾など論語の講師として活躍されている著者が、論語入門編としてまとめられた一冊です。代表的な言葉の解説を始め、論語に興味を持ち、論語を学びたくなる内容で、記載も平易なのでとても読みやすかったです。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯『論語』とは

・「最も欠点の少ない教訓」(渋沢栄一

・「人生万象の全ての答えがある」(安岡正篤

・普遍の原理原則がある。志を持つ。卑怯なことはしない。私利私欲を捨てる。社会貢献をする。年長者の言葉には耳を傾ける。言動は慎重にする。家族を愛する。

 

◯仁

孔子の中心となる考え方。思いやりこそが人にとって最も大事。

 

◯「吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順(したが)う。七十にして心の欲する所に従えども、矩(のり)を踰(こ)えず」

・15歳:志学

・30歳:而立(じりつ)

・40歳:不惑

・50歳:知命

・60歳:耳順(じじゅん)

・70歳:従心

 

◯「君子は文を以って友を会し、友を以って仁を輔(たす)く」

・よき仲間と共に研鑽を積んでいると、実は皆の仁も大きく育まれていく。孔子は人にとって最も重要な資質は仁だと繰り返し説いている。誠実さや思いやりのこと。その大切な仁が、仲間と学ぶことで身につく。どんなに深い思いやりの心を持っていても、自分一人では発揮することができない。心を通じる、尊敬し合える仲間がいてこそ。

 

◯「人能く道を弘む。道人を弘むるに非ず」

・よき人物こそが、よき道を拓く。

・旧水戸藩の藩校・弘道館はこの言葉から名付けられている。

 

◯「直きを挙げて諸(これ)を枉(まげ)れるに錯(お)けば則ち民服す。枉げれるを挙げて諸を直きに錯おけば則ち民服せず」

・正しい人を採用して、不正をしている人の上に置けば、国民は納得して服従するが、不正をしている人を取り立てて、正しい人の上に置くようなことをすれば、民は服従しない。

・木材を積む時には、反り返ったものを下に置いて、その上にまっすぐなものを積んでいく。やがてまっすぐな板の重みで反り返った板もまっすぐになっていく。

 

 ◯「我は生まれながらにして之を知る者に非ず。古(いにしえ)を好み、敏にしてこれを求めたる者なり」

・学ぶことに勝るものはない。よき資質をそのままにしておいては、何も進歩しない。学ぶことでよき資質が花開き、本物の力を発揮できる。

 

◯「之を知る者は、之を好む者に如かず。之を好む者は、之を楽しむ者に如かず」

・知って、好きになって、楽しむ。物事を究めていく時の三段階。

・生きることを楽しめるのは、富や名誉を得られるからではない。志をもって、自分らしく、真剣に生きられるかどうかが肝心。

 

◯故(フル)きを温(たず)ねて新しきを知れば、以って師となるべし」

・「故き」は、昔の人の教えや過去の出来事。歴史上の偉人や出来事とも言える。あるいは、身近にいる先輩やその先輩の行いと言ってもいい。

・「故きを温ねる」ことから初めてみると、自然に「新しきを知る」につながる。過去を知ることで将来を見通せるようになるから。

 

◯「学びて思わざれば、則ち罔(くら)し。思いて学ばざれば、則ち殆(あやう)し」

・思いを巡らすことは、大いに結構だが、広く人から教えを受けたり、書物から学ぶ謙虚さがないと、自分だけの狭い考えに偏って危険だ。 

 

◯其の以(な)す所を視(み)、其の由る所を観(み)、其の安んずる所を察すれば、人焉(いずく)んぞ廋(かく)さんや、人焉(いずく)んぞ廋(かく)さんや」

孔子なりの人物観察の仕方。「みる」という漢字を使い分けている。

 「見」:目に入ってくるものを見る。

 「視」:見ようとして見る。

 「観」:つぶさに見る。

 「察」:見えないものを見ようとする。

孔子は、3つの観点から人物を判断できると考えた。

①どのように行動するのか

②その動機は何なのか

③結果に満足しているのか

 

◯「譬(たと)えば、山を為(つく)るが如し。未だ成らざること一簣(いっき)なるも、止むは吾が止むなり。譬えば地を平らかにするが如し。一簣を覆すと雖も、進むは吾が往くなり」

・例えば山を作るようなものだ。あと一杯の土で完成するところまでできていて、やめてしまうのは自分に責任がある。例えば地面を平らにするようなものだ。まず一杯の土をあけただけでも、それを進めたのは自分なのである。

・仕事は完成に近づいた時、目標達成が見えてきたときほど、心を引き締めなければいけない。

・物事の最初の一歩と最後の一歩は、物事に取り組む上で大切な心構え。

 

◯「憤せずんば啓せず、悱せずんば発せず。一隅を挙ぐるに、三隅を以って反せずんば、則ち復(ふたたび)せざるなり」

・教えを受けたいと思っている者は、疑問を解決したいという情熱が溢れ出るくらいにならなければ、私はこれを啓(ひら)き導くことはしない。心ではわかっていながら、言葉ではうまく言えなくて、もどかしい気持ちにならなければ、私ははっきりとは教えない。一つの隅を取り上げて示すと、他の三つの隅も自分で推測して説明できるほどでなければ、繰り返し教えることはない。

・教えを請う側に、自ら学ぼう、吸収しようとする熱意がなくては始まらない。

 

◯「人の己を知らざるを患(うれ)えず。人を知らざるを患う」

・人が自分の実力を理解してくれなくても嘆くことはない。他人の実力を自分が見極められないことを心配する。

・正当に評価してほしいという欲求。

 

 『論語』のさわりくらいかもしれませんが、代表的な教えを垣間見ることができ、それを丁寧に解説されているのを読むと、『論語』全体に興味が湧いてきます。自分の人生にどのように活かせるのか?と考えながら読むのは、発見も多く、楽しいですね。

f:id:mbabooks:20181202101800j:plain