『第1感』(マルコム・グラッドウェル)
サブタイトルが「最初の2秒のなんとなくが正しい」。瞬時に下した判断も、慎重に時間をかけて下した結論と比べて、決して見劣りしない事実に目を向けてもらうことを目的にした本書。「第1感を信じていい場合と信じてはいけない場合を区別することは可能なのか」「第1感は養うことができ自由に操れるもの」といった興味深い内容をテーマにした一冊です。「なんとなく直感が働いて・・」という点を多くの事例や研究で検証しており、興味深い内容です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯輪切り
・輪切りは、様々な状況や行動パターンを、ごく断片的な観察から読み取って瞬間的かつ無意識のうちに認識する能力のこと。
・人の性格を判断するという作業は、輪切りがいかに効果的かを示すのに好都合。
・表情から他人の動機や位置を推理する行為は、典型的な「輪切り」。瞬時に、微かな手がかりを見つけて人の心を読む。人間の直感的な反応のうち、これほど基本的かつ自動的で、しかも大抵の場合に適切な答えを出せるものは他にないだろう。
◯適応性無意識の力
・一気に結論に達する脳の働きを「適応性無意識」と呼ぶ。適応性無意識は、フロイトの精神分析でいう無意識とは別物だ。フロイトの無意識は暗くぼんやりしていて位、意識すると心を乱すような欲望や記憶や空想をしまっておく場所だ。対して、適応性無意識は強力なコンピュータのようなもので、人が生きていく上で必要な大量のデータを瞬時に、なんとかして処理してくれる。
◯ひと目で見抜く力
・輪切りは限られた人だけの能力ではない。輪切りの能力は人間として生きるうえで最も大切な要素だ。初対面の人に会うとき、何かを短時間で理解しなければならないとき、新しい状況に直面した時に、私たちはいつもこの能力を利用している。「輪切り」をするのは必要に迫られるからだ。世の中にはたくさんの「筆跡」が隠れていて、たった数秒でも輪切りにした断片に注目すれば、いろんなことがわかってくる。だから私たちはこの能力に頼っている。
◯第一印象を操作する
・第一印象の前で私たちは全く無力なわけではない。第一印象は無意識、すなわち脳の閉じた扉の奥から生じるものかもしれないが、意識の外にあるからといって操作できなくはない。
・第一印象は経験と環境から生まれる。つまり第一印象を構成する経験を変えれば、第一印象を生む輪切りの方法を変えられる。
本書はほとんどが事例紹介です。最初の2秒の世界がいかに大切かということを事例を通じて伝える内容なので、まとめにするとわずか。事例を通じて最初の2秒の判断とそのための「輪切り」の世界を垣間見てください。
- 作者: マルコム・グラッドウェル,沢田博,阿部尚美
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/02/23
- メディア: 単行本
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