MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

こどもたちへ 積善と陰徳のすすめ〜和語陰隲録意訳〜(著:袁了凡、意訳:三浦尚司)

 『こどもたちへ 積善と陰徳のすすめ〜和語陰隲録意訳〜』(著:袁了凡、意訳:三浦尚司)(◯)

 本書は、400年ほど前の中国の明で、著者が自分の人生を振り返りながら、一人息子に書き残した家訓ともいうべき書物『陰隲録』を出版したものが江戸時代に日本に伝わり、日本語訳された『和語陰隲録』の意訳版です。「積善」という謙虚に良い行いを重ね、自分の運命をより良い方向に変えていくという考え方、著者が体験した実例を交えながら語った一冊です。近江聖人と言われた中江藤樹も信奉した『陰隲録』は、タイトルどおり子供にも伝えていきたい内容です。『陰隲録』を解説した本の中でもとてもわかりやすいと思います。『陰隲録』を読むなら、最初の1冊としてお勧めです。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯雲谷禅師との邂逅

・もとより定められた命数(運命)というものは、生まれた時から死ぬ時まで決まった形で生まれてくるもの。しかし最前の人と極悪の人は、善悪の強さに引かれ、点より定める命数の算用と食い違うもの。ただ通常の凡人だけが、この命数に縛られて一生を送る。

・聖人の書いた『書経』という書物の中に、「善を作(な)せば天之に百祥を降し、不全を作せば天之に百殃(ひゃくおう)を降す」とある。つまり人が善いことをすれば百の祥(さいわい)が与えられ、悪いことをすれば天から百の殃(わざわい)が降ってくる。仏教の中には「功名を求めると功名を得る。富貴を求めれば富貴を得る。男女を求めれば男女を得る。長寿を求めれば長寿を得る」とある。

 

◯雲谷禅師の積善の教え

・『易経』には「善は積もらざれば以って名を成すに足らず、悪も積もらざれば以って身を滅ぼすに足らず。小人は以って小善を益無しとして為して為さざるなり。小悪を以って傷無しと為して去らざるなり。故に悪積もり掩(おお)うべからず。罪大いにして解くべからず」と言っている。人々は平生において、少しずつの悪事はそれほど咎めるほどのことはない、このくらいまでは神様も仏様も許してくださるに違いないと考えて、軽々しく思う。

・小さな悪であっても一つ一つは消え失せることはない。しかし、後々には積もり積もって大きな罪となり、ついには自分の身を滅亡させることになる。

・小さくとも善いことは、絶えず行っていけば、後々にそれが積もり積もって大きな善となり、大いなる福徳を得ることになる。『易経』には「積善の家には必ず余慶あり、積不善の家には必ず余殃あり」と言っている。

 

◯薄相を福相に転ずる

・『書経』の太甲篇の中に「天の作(な)せる災はな違(さ)くべし。自ら作せる災は逃るべからず」とある。天命の定まって受けるべき災はそのつとめ方によっては避けることができるが、自分自身が作った災は逃れることはできない。生まれながらにして持ち合わせた福も、つとめ方や行いが悪ければ、たちまちなくなり、自分自身よりつとめて求める福と徳は、すべての神々の恩恵のためであり、悪魔や邪心もそれを奪うことはできない。

 

◯功過格による善事への誓願

・雲谷禅師は、「功過格」という帳面を差し出してこう言った。「日々善いことを行なったら、この帳面に必ず記帳すること。もし仮に思いがけず悪いことをすることがあれば、善と悪を突き合わせて、例えば善が3つ、悪が2つあるならば、差し引いた1善を記帳する。それを実行すれば、善行が3,000回に満たないうちにあなたの願いは成就することでしょう」

  

 ◯息子、天啓に立命の説を諭す

・日々、自分の非を知り自分の過ちを改めなさい。一日自分の非に気づかなければ、一日自分は正しい者と自分を欺くことと同じだ。一日過ちを改めなければ一日善行を後戻りさせることになる。

 

◯積善と陰徳の10カ条

・善い行いを人に知られぬようにすることを陰徳という。「陰徳は耳鳴るが如し」という。耳鳴りは自分は聞こえるのだが他人にはいっこうに聞こえない。積善とは、人が知ることも知らないことも、構わずにひたすら善いことを勇気を持って行うことをいう。善い性根を積み重ねていくことを、積徳と考えて実行すること。陰徳も積徳も、世間の評判や名誉を離れて行うならば、多くの災難は消え失せて、多くの幸福が訪れる早道。

・10カ条

①人と与(とも)に善を為す
②愛敬心に存す
③人の美を成す
④人に善を勧める
⑤人の危急を救う
大利を興し建てる
⑦財を捨てて福を作(な)す
⑧正法を護持する
⑨尊長を敬重す
⑩物の命を愛惜す

 

  本書は、難しいことが書いてあるわけではありません。ただただ心から実践して積み重ねていくことが難しくもあり、そして、難しいなと思うところに色々なエゴや邪念を感じることができます。本書にあるような積徳することで、人生をとても丁寧に生きることができると思います。感謝や徳を積むという行為は、生きる上で多くのことを教えてくれますね。

こどもたちへ 積善と陰徳のすすめ 和語陰隲録意訳 改訂増補版

こどもたちへ 積善と陰徳のすすめ 和語陰隲録意訳 改訂増補版

 

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