『幸福論』(ヒルティ)
世界三大幸福論(他に、アラン、ラッセル)の一つである本書。哲学者である著者(1833〜1909)らしく、感じるというよりは、考えさせられる内容。幸せに向かって思考が動き始める感じ。8章立てになっていますが、そのうち、「仕事の要領」「よい習慣」「暇を見つける工夫」などは、日常にすぐに取り入れられる即戦力です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯仕事
・仕事をする要領というものは、あらゆる要領の中でも一番大切。それをのみ込んでしまえば、ほかの知識や能力は、全て大変楽に得られるから。
・働く気が起こるのは、よく考え(熟考)、事にあたってみる(経験)以外に手はない。
・遊び半分の仕事でない限り、すべて本当の仕事には、まじめに打ち込めば嫌でもすぐ面白くなってくるという性質がある。人を幸福にするのは仕事の種類ではなくて、創造と成功の喜びである。
・人生に対するに「享楽」をもって臨むことは絶対不可能であって、実を結ぶように計画して行く心構えでなければならぬ。
◯仕事を軽減するコツ
①障害の本体を知ること
・邪魔しているのは怠け癖。
・低い動機(病み付き、野心、貪欲、生活維持の必要)
・高尚な動機(責任感、愛情)
・高尚な動機は、持続性があり、事の成否に左右されず、従って、失敗したからといって飽き飽きするといったことのために、その強さを失うことはない。
②習慣の偉大な力
・人間のどんな徳でも、それが習慣となりきってしまわないうちは、確実な所有とは言えない。
・着手しうること。一度ペンを手にして最初の一画を書き下ろしてしまえば、あるいはまた鍬を手にして最初の一打ちをやり終えてしまえば、事はすでに大いに楽になってしまっている。
③仕事の区分、仕事の序論のために時間と咸興を失っていることに気づく
・一番優しいところから始める。とにかく始める。完全に遺漏なくやろうと思ってはならない。
④清新の気と勉強する気が無くなったら勉強を続けないこと
⑤たくさん仕事をしでかそうというには、力を節約しなければならない。
・無駄な活動の第一は、新聞を読みすぎること
・度を越した団体活動や政治活動
⑥繰り返すこと
・何度も手がけること。人の精神は、一度この仕事に打ち込むという本当の勤勉を知れば、絶えず働いてやまないもの。
◯よい習慣
・人間存在の理想は、一切の善は習慣によって自明的となり、一切の悪は肉体的に感ぜられるほどの不愉快な印象を与えるまでに天性にもとるという風になった生活。こうならない限り、すべてのいわゆる徳も信心も、なお善き志向というにとどまり、実行の上では、善へおもむく可能性があるのと全く同様に、悪へ落ちる可能性もまたあるということにすぎない。
・あらゆるよい習慣の完全な表をまずもって作るよりは、現実に一つのよい習慣を持って始める方が、はるかに目的にかなっている。その際の困難、本来唯一の困難は、天性自然の我欲を心から取り除くこと。
・生活上で一番優れたよい習慣
①消極的にある習慣を止めようとするよりか、むしろ常に何らかの習慣をつけようと心がけねばならぬこと
②恐怖心を抱かぬということ
③恐怖のきっかけになるのは、通常人生の財宝の問題。なるべく、若いときに、つまらぬ財宝よりか、少しでもマシな宝を選ぶ習慣を身につけるべき。
④人はいかなる値を払っても、己自身のために、習慣的にすべての人を愛するように努めねばならぬ。
⑤生半可は不可。一切の小細工は抜きにして、全面的な一大決心だけが実行を可能にする。
⑥他人の計略にかかってはならない。表面上だけでもそれはいけない。
⑦悪は激しく叱ったり非難したりするには及ばない。大概の場合は、明るみに持ち出すだけで十分である。
⑧有徳であっても、深い愛情がなかったらとかく退屈な代物になる。
⑨すべての人間に対して一様に親切であることは、所詮できぬ相談。常に優先すべきは、この世の弱者、貧しき者、愚かな者、教養なき者、子供達であるべきで、決して反対に上流人士であってはならない。
◯暇を見つける工夫
・暇がない。これは別段正式でもない義務や仕事を免れようとする時に使われる一番ありふれた、最も普通の逃げ口上だけでなく、いかにも本当らしい中身と見かけを多分に持っている言い草。
・あまりに多くの息抜きをしないでも、しかもなお焦らずに暮らして、相当の仕事をするということが、可能であるに違いない。そのために必要なのは、意志なきもののごとく、一般の流れに押し流されないで、反対する決意であり、仕事の奴隷にもならず快楽の奴隷ともならないで、自由な人間として生きようとする決意。
・暇を見つける工夫
①規則正しく仕事をすること
②規則正しい仕事を非常に楽にするのは、一定の職業。
③仕事に対して1日をどういう風に区分するか
④時間、場所、位置、気分なんかについて暇をかけた準備は不要。やりかけてしまえば、自然に気が乗ってくる。
⑤小さい時間の細切れを利用すること
⑥仕事の対象を変えていくこと。対象を変えることは、完全な休息とほとんど匹敵する。
⑦迅速に仕事をすること。単なる外形にはあまり重きを置かないで、常に内容に重点をおくこと
⑧全てのことを、単に「間に合わせ」的に、一次的に仮のこととしてやらないで、直ちに本式にやること。
⑨秩序立っていること、原点を直接読むこと
⑩暇を見つける工夫の肝心なことは、無用なことの一切を自分の生活から追放すること
仕事、習慣、時間を生み出す工夫。幸福を生み出すベース作りのような感じでした。自分の時間も気力も好きなこと、周りのことに注ぎ込むためにも、まずそれを作り出せるベースを作りましょう、という感じです。
これで、三大幸福論を読み終えました。ラッセル⇨アラン⇨ヒルティの順で読みましたが、この順番は正解でした。ラッセルで「幸せ」について考え、アランの日常生活感で「幸せ」具体化し、ヒルティで「幸せ」を生む原動力を作り出す。
今一度、自分の習慣化を見直し、成長だけでなく、自分なりの「幸せ」に向けた毎日の積み上げを考えて見たいと思います。