『干支の活学』(安岡正篤)
本書は、昭和38年〜昭和55年までに連載された干支に関する解説です。干10種類と支12種類の組み合わせで60通りある干支ですが、その語源や60年周期で歴史上どのような出来事があったのかということについて解説されており、とても興味深く、内容も濃く、じっくりと読む本です(私も時間がかかりました)。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯干支
・干支は、干と支を組み合わせてできる60の範疇に従って、時局の意義ならびに、これに対処する自覚や覚悟というものを幾千年の歴史と体験に徴して帰納的に解明・啓示したもの。
・干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)
もっぱら生命・エネルギーの内外対応の原理を10種類に分類したもの。
・支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)
生命・細胞の分裂から次第に生命を組織構成して成長し、やがて老衰して、ご破算になって、また元の細胞・核に還る。これを12の範疇に分けたもの。
◯癸卯(きぼう・みずのとう)
・万事道筋を立てて処理してゆけば、繁栄に導くことができるけれども、道筋を誤ると、こんがらがって、いばらやかやのようにあがきのつかぬことになる。その果ては混乱・動乱、あるいはぶち壊し・ご破算になるぞという意味。
・癸:百姓一揆の揆と同じ文字で、物事をはかるという意味。
・卯:陽気の衝動。草木で言えば芽や葉が茂ることになり、卯は茂に通じる。
◯甲辰(こうしん・きのえたつ)
・ちょうど春になって、新芽が古い殻から頭を出すのであるが、まだ余寒が厳しくて、勢いよくその眼を伸ばすことができないと同じように、旧体制の殻を破って、革新の歩みを進めなければならぬのであるが、そこにはいろいろな抵抗や妨害があるために、その困難と闘う努力をしながら、慎重に伸びてゆかねばならぬということ。
・甲:甲は鎧で、よろいをつけた草木の芽が、その殻を破って頭を少し出した。
・辰:理想に向かって辛抱強く、慎重に抵抗や妨害と闘いながら歩みを進める。
◯乙巳(いつし・きのとみ)
・いかに外界の抵抗力が強くとも、それに屈せずに、弾力的に、とにかく在来の因習的生活にけりをつけて、雄々しくやってゆく。
・乙:草木の芽が曲がりくねっている。新しい改革創造の歩みを進めるけれども、まだまだ抵抗力が強い。しかしいかなる抵抗があっても、それを進めてゆかねばならぬ。
・巳:今まで冬眠しておった蛇が春になって、ぼつぼつ冬眠生活を終えて地表にはい出す形。
◯丙午(ひのえうま)
・在来の支配的代表勢力が多いに伸びて盛んになるが、反面に、それに対する反対勢力が内側から突き上げてきておる。
・丙:一昨年、昨年の容器が一段とはっきり発展すること。
・午:「午」の上の字は地表を表す。下の「十」の「一」は陽気。「|」は陰気が下から突き上げてまさに地表に出ようとする。
◯丁未(ていび・ひのとひつじ)
・好むと好まざるとにかかわらず、在来の勢力と新しい勢力とが衝突する。いろいろ煩わしいこと、よくないことを思い切って払い落とさなければならない。
・丁:新旧勢力を意味している。
・未:「くらい」と読む。暗くしてはいけない。不昧でなければならぬ。
◯戊申(ぼしん・つちのえさる)
・現実に紛糾してくる様々な勢力・動きというものを果断に処理してゆかねばならない。
・戊:樹木が茂ると、風通しや日当たりが悪くなって、虫がついたり、梢枯れしたり、根上がりしたりして、樹が痛む。悪くすると枯れる。そこで思い切って剪定しなければならぬ。
・申:伸と同じで、のびるという意味。善悪両方の意味においていろいろ新しい勢力、動きというものが伸びてくることを表す。
◯己酉(こゆう・つちのととり)
・物事がうまく進展しないで、とかく屈曲が多く、利己的になる形成。
・己:とかくひん曲がり悪がたまりになる。糸のかがまりの象形であり、これをまっすぐに伸ばすこと。筋道を通す。
・酉:酒甕を表し、甕の中に溜まっている麹の発酵を表す。中に醸されている新しい勢力の爆発・蒸発。
◯庚戌(こうじゅう・かのえいぬ)
・思い切ってあらゆる停滞・沈滞を一掃することによって、今年ならまだ維新・一心することができる。
・庚:前年からのものを断絶することなく継続して、いろいろの罪・汚れを浄めて償うとともに、思い切って更新していかねばならぬ。
・戌:枝葉末節が茂って、日当たりが悪くなり、風が通らなくなること。
◯辛亥(しんがい・かのとい)
・何が発生するやらわからない。しかもその発生はただの発生ではなくて、爆発的な発生である。
・辛:今まで潜伏していた活動エネルギーが、いろんな矛盾・抑圧を排除して上に発現する。
・亥:何事かを生もうとしている。いろいろのエネルギー・問題をはらんでいる。
◯壬子(じんし・みずのえね)
・利口な狡い人間が、野心を持った時局便乗型の人間が、たくさん出てくる。
・壬:亥の内在するものが増大する
・子:増える
◯癸丑(きちゅう・みずのとうし)
・善かれ悪しかれ新しく局に当たった者が法則・原理・原則に基づいて企画・政策を立て、それをどんどん実行していかなければならない。
・癸:冬になって草が枯れ、木々の葉が落ちて、見渡す限り遮るものもない冬枯れの景色の中に、それまで隠れて見えなかった四方の水路がはっきり現れてきた。
・丑:母のお腹の中におった嬰児が体外へ出て、右の手を伸ばした象形文字。始める。結ぶ。掴む。
ここでは60種類は書けませんが、干10と支12の漢字の意味を知ることからスタートし、それを組み合わせるとどういう意味を持つのか。時の流れ、時代の流れ、何か目に見えない力が働いているということを帰納法的にまとめた「干支」については、これまであまりにも表面的・断片的にしか情報に接していなかったんだなぁと思います。