MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

インテグラル理論(ケン・ウィルバー)

インテグラル理論』(ケン・ウィルバー

 これはとても難しい内容でしたが、とりあえず最後まで読みました。それでも著者の入門書的位置付けのようです。監訳の加藤洋平氏の紹介文からキーワードを拾うと、

現代社会が抱える多様性・複雑性をより高い次元でまとめあげ、一つの「統合的」なあり方を実現すること」

「個人の内面そして社会・文化の発達度合いという視点」

ティール組織の重要な理論モデルの一つ」

「深い自己理解を実現させていくためには、内と外の両方の視点が必要」

というような言葉並びます。

インテグラル=統合してより上位概念に統合していく世界。相反するものも統合し無境界になっていく世界観とは。

政治・宗教・医療などの領域を例に、内と外の双方を深く理解していく重要性が書かれています。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯発達の螺旋(9つの段階)

①生存の感覚(ベージュ)

 本能と生まれ持った感覚を研ぎ澄ます。
②血族の精神(パープル)

 神秘に包まれた世界の中で調和と安全を求める
③力のある神々(レッド)

 衝動を表現する、自由になる、強い存在になる
④真理の力(ブルー)

 目的を見つけ出す、秩序を生み出す、未来を確実なものにする
⑤努力への意欲(オレンジ)

 分析し、戦略を立て、繁栄する
⑥人間らしい絆(グリーン)

 複数のシステムを統合し調整する
⑦しなやかな流れ(イエロー)

 複数のシステムを統合し、調整する
⑧全体の眺め(ターコイズ

 シナジーを起こす、巨視的な視野からマネジメントする
⑨統合的・ホロン的(コーラル)

(現在ゆっくりと出現しつつある)

 

多元主義

・多くの議論の根底にあるのは、どちらの方が優れた客観的証拠を提示できるかということではなく、議論を行っている人々の主観がどの段階にあるかということ。

・多元的相対主義は、主観主義の傾向があまりにも強いために、自己愛的態度に陥りやすい。これこそが問題の核心。

多元主義は、自己愛を引き寄せる強力な磁石になる。多元主義は図らずも自己愛の文化の温床となっており、そして自己愛の文化は、統合的文化の出現を妨げる(なぜなら、自己愛傾向の強い人は、自分自身の主観的領域の外へと踏み出そうとせず、それゆえ自分以外の誰かが真実を持っていることを認められないから)

・だからこそ、自己愛の文化は、本物の「万物の理論」の実現を妨げる障害の一つだと言える。

 

◯思いやりの螺旋

・発達の螺旋とは、思いやりの螺旋でもある。

・「私」への思いやり、「私たち」への思いやり、そして、「私たち全員」への思いやりへと、その対象が広がっていく。そして、いずれは、統合的な包容力を獲得することになるだろう。

 

◯意識の全スペクトラムを包括する

・全象限、全レベル。4象限とは、①個人の内面、②個人の外面、③集団の内面、④集団の外面。

・人は、ある能力領域においては非常に発達していながらも、別の能力領域においては極めて貧弱な、特に病理的な、発達状態にあるかもしれない。

・統合的アプローチは、全ての象限に含まれる全てのリアリティ(レベル、ライン、ステート、タイプ)を包含しようとするもの。

・存在の全てのレベル(身体・心・魂・スピリット)を尊重するとともに、こうした存在の各レベルを全て、自己、文化、自然の3つの領域において展開させようとするもの。

 

◯科学と宗教

・立場①

 科学は宗教を否定している。

・立場②

 宗教は科学を否定している。

・立場③

 科学と宗教は存在の異なる領域を扱っており、両者が平和的に共存することは可能である。

⇨強いバージョン:認識論的多元主義

 科学は通常、相対的に提示の領域である物質と身体の領域を扱っており、宗教は通常、相対的に工事の領域である魂とスピリットの領域を扱っている。科学と宗教はどちらも等しく、「大きな地図」を構成する要素。

⇨弱いバージョン:重なることのない2つの領域(NOMA)

 科学と宗教はそれぞれ異なる領域を扱っているが、両者は根本的に比較困難なものであり、なんらかの「大きな地図」へと統合することは不可能。

・立場④

 科学そのものがスピリットの存在を支持している。多くの科学的事実や科学的発見によって、スピリチュアルな現実は直接に指示されている。

・立場⑤

 科学が与えるのは、世界に関する知識ではなく、世界に関する一つの解釈に過ぎない。したがって、科学の妥当性とは、芸術や詩の妥当性と全く同程度である。

 

◯政治

・リベラル派は外面的な要因を重視しがちであり、保守派は内面的な要因を重視しがち。

・典型的なリベラル派は外面的な社会制度を非難する傾向にあり(「あなたが貧乏な生活を送っているのは、社会によって不公平な扱いを受けているからだ」)

・それに対して、典型的な保守派は、内面的な要因を非難する傾向にある(「あなたが貧乏な生活を送っているのは、あなたが怠けたからだ」)。

・内面的な要因(価値観、意味、倫理、意識の発達段階など)と外面的な要因(経済的な状況、物質的な豊かさ、テクノロジーの進歩、社会的なセーフティネット、周囲の環境など)の両方に注意を向けなければならない。

・要するに統合的な政治は、内面領域の発達と外面領域の発達の両オフを重視するものになるはず。

 

 ヘーゲル弁証法の正反合で上位概念に発達していく考え方と近いのか。これで入門編かぁと思ってしまいますが、奥が深そうでワクワクもします。次に著者の本の中で読む本として『無境界』という本を選びました。難解そうです・・・。

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