『天才を殺す凡人』(北野唯我)(◯)
これはいい本でした!組織で働く人を大きく3つのタイプに分けて、この3者がどういう関係性であるかを俯瞰的に捉えた一冊です。3者の中間タイプにも触れつつ、どういう人間関係を取っていくと組織はうまく回るのかということを考えさせられる内容で、「あるある!」がたくさん。親近感を持ちつつ、複雑な人間関係をシンプルに捉えていることに本書の価値があると感じました。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯定義と関係性
①天才
・「創造性:で評価される
・独創的な考えや着眼を持ち、人々が思いつかないプロセスで物事を進められる人
・秀才には、興味がない
・凡人には、理解して欲しいと思っている。
②秀才
・「再現性」で評価される
・論理的に物事を考え、システムや数字、秩序を大事にし、堅実に物事を進められる人。
・天才には、ねたみと憧れの相反する感情
・凡人には、心の中で見下している
③凡人
・「共感性」で評価される
・感情やその場の空気を敏感に読み、相手の反応を予測しながら動ける人
・天才には、理解できないから排斥する
・秀才には、天才だと勘違いしている。
◯天才を殺す要因
・「天才⇄凡人」の間にある「コミュニケーションの断絶」こそが天才を殺す要因。
・コミュニケーションの断絶の要因は2つ
①軸:その人が「価値」を判断する上で、前提となるもの。絶対的。
②評価:軸に基づいて「Goodや「Bad」を評価すること。相対的。
・「共感できるかどうかで決めること」は絶対的。「評価」は対話によって変わることがあるが、「軸」は変わることがない。したがって、「軸が異なる」ことによるコミュニケーションの断絶は、とてつもなく「平行線に近いもの」になる。
・天才と秀才と凡人は、この「軸」が根本的に違う。
①天才:創造性
②秀才:再現性≒論理性
③凡人:共感性
・凡人には武器がある。それは「多数決」。
・凡人は、成果を出す前の天才には冷酷。しかし成果を出した途端手のひらを返す。そして、天才もゲームのルールが変われば失敗するし、間違える。すると、途端に凡人は意見を変える。あいつは終わったと。凡人は天才を二度殺す。
◯アートとサイエンス
・この2つをぶつけてはいけない。必ずサイエンスが勝つ。サイエンスは証明できるし説明能力が高い。これは天才と秀才の関係。両者がでディベートしたら、絶対に秀才が勝つ。再現性は才能の中で一番「説明能力」が高いから。
◯共感性
・「共感性」は一番厄介。「共感されるものは強い」。でも「共感による意思決定は危うい」。
・共感性は多数決の世界。皆がいいと言っているものがいいし、悪いと言っているものは悪い。
・皆がいいと信じていることというのは、実はそれだけで破壊的パワーがある。そして、半分くらいは、そこに理屈は実はない。「よくよく考えると、理屈はないけど、皆が信じているもの」には極めて強いパワーがある。
・共感性は一見すると根深そうに見えるが、実は「すぐひっくり返るもの」でもある。
・大事なのは、「どの部分を切り取り、見せるか」
・そもそも説明能力とは、行き着くところ、目的に基づいた論理と、多数決しかない。
・革新的イノベーションとは、「組織の飽き」をモチベーションにした「世の中の余白」に対する天才の指摘によって生まれる。
・飽きるとは、①世の中から飽きられる、②自分が飽きる
◯エリートスーパーマン(天才×秀才×凡人)
・天才と秀才の橋渡し。創造性もあり、再現性もある。一代で大企業を作り上げるような社長。何よりビジネスが好きで、常に研究者であり挑戦者でもある。「外から見るとすごいが、部下につくと大変」
◯最強の実行者(秀才×凡人)
・秀才と凡人の橋渡し。再現性と共感性を武器にもつ。どの会社にもいる「エース」。プロジェクトマネジャーとしても活躍。新しいことをやらせると「既存サービス」の焼き直しになり、革新的なものは生まれない。
◯病める天才(天才×凡人)
・天才と凡人の橋渡し。創造性と共感性を武器にもつ。世の中の人々の心を動かすか?インサイト(潜在的な欲求)に届くかどうか?まで直感的にわかる。プロダクトや事業などの責任者に就任すると、圧倒的なスピードでサービスを拡大できる。ただし、構造的に捉えることは苦手。
◯異なる主語
・天才:主語を、世界や真理など、超越した何かで語る。
⇨天才は、さらに2タイプに分かれる
①世界は何でできているかという「存在」に興味が向く
②人々は世界をどう認知するのかという「認識論」に興味が向く
・秀才:組織やルールなどの、善悪で語る。
⇨秀才はさらに、2タイプに分かれる
①主語が知識(自分が知っていること、経験していること)
②主語が善悪(組織にとっての利益や明文化されているルール)
・凡人:人をメインで語る。
⇨凡人はさらに、3タイプに分かれる
①主語が自分
②主語が相手
③主語が家族や仲間
組織の人間関係を紐解くのにとても役立つ予感がします。一度勉強会で深掘りしたくなる内容です。一度読まれて、興味ある方がいらっしゃったらお声掛けください。