密教（正木晃）
『密教』（正木晃）
高野山大学のレポート作成の参考書籍として読みました。密教とは何か？密教のキーワード、マンダラの理論、修行と日本密教などの観点からまとめられており、「そもそも密教って何？」という入り口の疑問を解決するために役立つ一冊でした。
（印象に残ったところ・・本書より）
◯密教とは
・インド大乗仏教の最終段階において展開された神秘主義的・象徴主義的・儀礼主義的な傾向の強い仏教である（松長有慶）
・大乗仏教が誕生したのは紀元前後くらいからで、密教はその大乗仏教の中から五、六世紀頃芽生え始め、本格的な密教は七世紀から後の成立ということになる。密教と顕教は二項対立の概念。
◯即身成仏
・「ただ真言密教だけが、即身成仏を遂げるための行法を説き、そのほかの様々な教えはこのことについて触れてはいない。・・・もし真言密教の行者がホトケの知恵を求めて菩提心に達し得たなら、その時彼は父母から生まれた肉身のままで、速やかに大いなるホトケの境地を得るだろう」（『菩提心論』）
・なぜ密教は即身成仏が可能か。「「世間の三つの妄執を越えて、出世間の心が生ず」という文言は、こういう意味だ。・・サンスクリット語のカルバという言葉には、二つの意味がある。一つは時間に関わることであり、もう一つは妄執に関わることである。顕教の解釈によれば、三つのカルバ（劫）というほとんど無限大の時間をかけて、ようやく正しい悟りを得ることになる。しかし、密教の解釈によると、これら三つのカルバ（妄執）を乗り越えることができれば、そのまま今この生において、悟りを得ることができる」（『大日経琉』の巻二）
・あらゆる人間の身体には、生まれながらに、地・水・火・風・空・識からなる「六大体大（六大の理論）」と呼ばれる宇宙の根源的な起動因が蔵されている。また、人間の身体は、大曼陀羅・三昧曼陀羅・法曼陀羅・羯磨曼陀羅の四種の曼陀羅の働きを受けつつ、身口意の三密にも対応している。したがって、父母より生まれ出た身のままで、清浄きわまりなく、すでにホトケになっているという。これが「即ち身成れる仏」と訓む理具成仏の論旨である。
・しかし、理具成仏が真実ではあっても、現実の世界では、人間は生まれながらの清浄な状態を到底保ち得ない。煩悩のほむらに焼かれ、無明の闇に迷う哀れな存在でしかない。したがって、本来の清浄な状態にしようとすれば、いわゆる三密加持の行法をいとまなければならなくなる。手に印契を結び、口に真言を誦しつつ、意（心）は霊妙なる境地に入って、ホトケと融合し、一体化する。これが「身に即して仏に成る」と訓む加持成仏の論旨である。
・だが、その加持成仏といえども、いったん三密加持の霊境から出てしまえば、途端に元の煩悩や無明が支配する世界に立ち戻らざるを得ない。三密加持を常に行じているうちに日常のありとあらゆる行為の一つ一つにホトケの境地を実現し、生ける身体そのままでホトケの知恵と行動を顕得、つまり体現できるように成る。これが「即かに身、仏と成る」と訓む顕得成仏の論旨である。
◯入我我入
・大宇宙の真理＝大日如来が我の中に入り、我が大宇宙の真理＝大日如来の中に入る。結果として、大日如来と我は融合し一体化して、区別がつかなくなる。現代の用語を使うなら、マクロコスモスとミクロコスモスのコレスポンダンス、つまり大宇宙と小宇宙の等質対応。
・空海からこのかた、整備された段階の日本密教では、入我我入を実現するための行法として、三つの観法が最秘とされてきた。その三つとは、①入我我入観、②正念誦、③字輪観である。これらはいずれも三密に対応している。入我我入観が身密に、正念誦が口密に、宇宙観が意密にである。
・三つの観法に分けられてはいても、実はこれら三つは全体で入我我入のために、連続する修行法であることを示している。
「密教入門」というレポートを提出するにはしましたが、正直言葉の表面をなぞっているような感じで、腑に落ちているかと言えば、よくわからないというところです。これが、何度も書物を読みつつ、日常の中で意識して体感することが増えていけば、また感覚が変わるかもしれません。その変化のためにも、よくわかっていない今をしっかり受け止めておこうと思います。
