MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

原始仏典(中村元)

『原始仏典』(中村元)(◯)

 ブッダの教えを最も忠実に伝える原始仏教の経典の数々を仏教思想学の大家である著者がわかりやすいく解説した一冊です。著者は、従来、中国語訳された仏教経典を日本語訳するのが主流であったところ、原典のサンスクリット文字から日本語訳に取り組んだ世界的にも有名な方です。「続くものには訳がある」。仏教もそんな一つではないでしょうか。武力なしに世界に広まった数少ない宗教。そこには、人間が生きる上で大切なことが数多く記されています。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯「人生は苦である」

・「苦」とは、「思い通りにならないこと」

・苦をなくすためには、本当に自分の望ましいこと、理想とすることを実現するために実践すべきである。

・それを実現するために説かれたのが、「4つの真理」(四諦)。

・具体的な実践に移って説いていくということになると、正しい生き方ということが問題になる。そのあり方に8つあるので「八正道」という。原則的に言えば「中道」ということ。

 

◯『スッタニパータ』

・最も古く、したがって釈尊の思想なり、その頃の人々の生活を最もよく伝えているであろう著書。

・「見よ、神々並びに世人は、非我なるものを我と思いなし、名称と形態(個体)に執着している。これこそ真理であると考えている」(756)

⇨我々の執着の根源を見通した言葉。

釈尊の教えを一貫する精神は何かということになると、人々に対する暖かい気持ち、人々の身になって考えるというその気持ちが世の中を明るく保ち、なだらかに進めていくことになる。これを仏教では「慈悲」という。「慈」は、本当の友人関係、つまり真実の友人の間で実現される純粋な真実の心構え。「悲」は、共に悲しむこと。

・「究極の理想に通じた人が、この平安の境地に達してなすべきことは、次のとおりである。能力があり、直く正しく言葉やさしく、柔和で思い上がることのないものであらねばならない。足ることを知り、わずかの食物で暮らし、雑務少なく、生活もまた簡素であり、諸々の感官が鎮まり、聡明で昂ぶることなく、諸々の人のうちで貪ることがない」(143〜144)

 

◯『サンユッタ・ニカーヤ』

・仏典の中ではおそらく最も古い資料。

・人に何かを与える時には「三輪清浄」ということが必要。つまり、施す主体と、施される相手と、その間に渡されるものと、その3つが清らかでなければならない。

・「罪は欲望から生じ、苦しみは欲望から生じる。欲望を制することによって、罪が制せられ、欲望を制することによって、苦しみが制せられる」

・良い言葉とは

①みごとに説かれた言葉のみを語り、悪しく説かれた言葉を語らず

⇨最上の言葉を語れ

②理法のみを語って、理に適わぬことを語らず

⇨正しい理を語れ

③好ましいことのみを語って、好ましからぬことを語らず

⇨好ましい言葉を語れ

④真実のみを語って、虚妄を語らない

⇨真実を語れ

・自己というのはどういうものだろうという、この探求が原始仏教における大きな課題となっていた。やがて我々の存在を①物質的なかたち(色)、②感受作用(受)、③表象作用(想)、④形成作用(行)、⑤識別作用(識)という5つの構成要素に分けて、そのいちいちについて無常・苦・非我を述語として説くようになった。

 

◯『シンガーラへの教え』

・いろいろな人間関係について、どのように行動すべきであるか、ということを説いている経典。

・父母は5つの仕方で子を愛す。

①悪から遠ざけ
②善に入らしめ
③技能を習学させ
④適当な妻を迎え
⑤適当な時期に相続させる

・弟子は5つの仕方で師に奉仕すべきである

①座席から立って礼をする
②近くに侍する
③熱心に聞こうとする
④給仕する
⑤うやうやしい態度で学芸を受ける

・師は次の5つの仕方で弟子を愛する

①善く訓育し指導する
②善く習得したことを受持させる
③すべての学芸の知識を説明する
④友人朋輩の間にかれのことを吹聴する
⑤諸方において庇護してやる

・夫は5つの仕方で妻に奉仕すべきである

①尊敬すること
②軽蔑しないこと
③道を踏み外さないこと
④権威を与えること
⑤装飾品を提供すること

・妻は5つの仕方で夫を愛する

①仕事を善く処理し
②眷属を良く待遇し
③道を踏みはずことなく
④集めた財を保護し
⑤為すべきすべての事柄について巧妙にしてかつ勤勉である

・良家の子は、次の5つの仕方で友人・朋輩に奉仕する

①施与と
②親しみのある優しい言葉と
③人のために尽くすことと
④協同することと
⑤欺かないことによってである

 

  それにしても仏教は深い。さすがに世界3大宗教と言われるだけあって、歴史の積み重ねがすごいです。とても全体像を把握できる気がしないですが、自分が生きていく上で、必要な要素を取り入れられれば、それでいいかなぁというような気楽な感じで引き続き、勉強してみたいと思います。

原始仏典 (ちくま学芸文庫)

原始仏典 (ちくま学芸文庫)

 

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