MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

原始仏典 長部教典I(第1巻)(監修:中村元)③

『原始仏典 長部教典I(第1巻)』(監修:中村元)③(◯)

 原始仏典シリーズ第1巻(全部で19巻あります)。続きです。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

【阿摩書経

◯概略

バラモン優位説は容易に王族優位説により論破されることを示し、その後で、人の優劣は四姓によるものではなく、明知と実践によるとして、仏教の戒と明知を説く。

 

◯実践と明知の完成

・生まれの議論にとらわれ、氏姓の議論にとらわれ、自尊心の議論にとらわれ、嫁のやりとりにとらわれる者は、まったく無上の明知と実践の完成にほど遠い。このような囚われを捨てるなら、無上の明知と実践の完成を、自分の目で見ることができる。

 

◯明知について

・心が安定し、清浄となり、浄化された、汚れのない、小さな煩悩を離れた、柔軟で、活動的であって、そのもの自身が堅固不動なものになると、かれは知識による洞察に心を傾け、心を向ける。

・そしてかれは、「私のこの身体は、形をもち、四種の要素(地水火風)からなり、父母から生まれ、米飯と粥で成長し、恒常的なものではなく、絶えず衰え、消耗し、分解し、崩壊する性質があるものである。しかも、私のこの意識はこの身体に依存し、密着している」と知る。これが修行僧の明知のひとつ。

 

◯意から成る智

・心が安定し、清浄となり、浄化された、汚れのない、小さな煩悩を離れた、柔軟で、活動的であって、そのもの自身が堅固不動なものになると、かれは心(意)から成り立つ身体を創りだすことに心を傾け、心を向ける。

・かれはこの物質的な身体とは、異なった、形はあるが心から成り立ち、四肢もすべて備え、感覚器官もかけることなく備わった身体を創りだす。これもまた修行僧の明知のひとつ。

 

◯神の耳

・ 心が安定し、清浄となり、浄化された、汚れのない、小さな煩悩を離れた、柔軟で、活動的であって、そのもの自身が堅固不動なものになると、かれは、神の耳(天耳通)に心を傾け、心を向ける。

・そしてかれは、その清浄な、超人的な神の耳によって神々と人類との両方の声、遠近いずれの音も聞くことができる。これもまた修行僧の明知のひとつ。

 

◯他人の心を知ること

 ・ 心が安定し、清浄となり、浄化された、汚れのない、小さな煩悩を離れた、柔軟で、活動的であって、そのもの自身が堅固不動なものになると、かれは、他人の心のありさまを知ること(他心通)に心を傾け、心を向ける。

・そしてかれは、他の生き物、他の人々の心のありさまを心でとらえて知る。

すなわち、

欲望のある心を、欲望のある心であると知る

欲望を離れた心を、欲望を離れた心であると知る。

怒りのある心を、怒りのある心であると知る。

怒りを離れた心を、怒りを離れた心であると知る。

迷いのある心を、迷いのある心であると知る。

迷いを離れた心を、迷いを離れた心であると知る。

集中した心を、集中した心であると知る。

散漫な心を、散漫な心であると知る。

広い心を、広い心であると知る。

狭い心を、狭い心であると知る。

まだ上のある劣った心を、まだ上のある劣った心であると知る。

無上の心を、無上の心であると知る。

安定した心を、安定した心であると知る。

安定していない心を、安定していない心であると知る。

解脱した心を、解脱した心であると知る。

解脱していない心を、解脱していない心であると知る。

これもまた修行僧の明知のひとつ。

 

◯煩悩の汚れと消滅を知ること

・ 心が安定し、清浄となり、浄化された、汚れのない、小さな煩悩を離れた、柔軟で、活動的であって、そのもの自身が堅固不動なものになると、かれは、煩悩の汚れの消滅を知ること(漏尽通)に心を傾け、心を向ける。

かれは、

「苦しみは、これである」とあるがままに知ります。

「苦しみの起こる原因はこれである』とあるがままに知ります。

「苦しみの消滅は、これである」とあるがままに知ります。

「苦しみの消滅に至る道は、これである」とあるがままに知ります。

「もろもろの煩悩の汚れは、これらである」とあるがままに知ります。

「もろもろの煩悩の汚れの起こる原因は、これである」とあるがままに知ります。

「もろもろの煩悩の汚れの消滅は、これである」とあるがままに知ります。

「もろもろの煩悩の汚れの消滅に至る道は、これである」とあるがままに知ります。

・このように知り、このように見るとき、その人の心は、欲望の汚れから解放され、生存の汚れから解放され、無知の汚れから解放される。解放されたときには「解放された」という知識が生じる。

・「再生のみちは尽きた。清らかな修行は成し遂げられた。なすべきことはなされ、もはや再び、この生存の世界に生まれることはない」と知る。これもまた修行僧の明知のひとつ。

 

◯真理の教え

・苦しみ(苦)

・苦しみの起こる原因(集)

・苦しみの消滅(滅)

・苦しみの消滅にいたる道(道)

 

「明知」とは「はっきりと知ること」という意味。本書では、何をはっきりと知ることが必要なのかという点についてまとめられています。本書を読んでいると、「へぇ、普通じゃーん」と思ってしまいがちですが、主観・偏見なく、ありのままに見るということは実は難しいこと。簡単に理解できるようで実践すると深い分野です。

原始仏典〈第1巻〉長部経典1

原始仏典〈第1巻〉長部経典1

  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 春秋社
  • 発売日: 2003/02/01
  • メディア: 単行本
 

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