MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

不合理だからうまくいく(ダン・アリアエリー)

『不合理だからうまくいく』(ダン・アリアエリー)

 人間の自然な行動を紐解く行動経済学。著者の書籍がわかりやすくてまとめ買いした4冊の最後が本書です。職場、家庭にスポットを当てて、直面しやすいテーマを取り上げ、豊富な事例や実験をもとに、日常で起こっていることってこんなことだったのかぁという気づきがある一冊です。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯高い報酬は逆効果

・一般に報酬が高くなるほど成績も上がるように思われるが、高すぎる報酬は、逆効果になる場合がある。特に単純な課題よりも、認知スキルが要求される課題の場合に、この傾向が強い。

・金銭的報酬だけでなく、誰かに認められるといった社会的報酬についても同じことが言える。

 

・「モチベーション過剰」になってしまうと、なかなか集中できず、その結果、もっと少ないボーナスをもらうために頑張っていた時よりもかえって成績が下がってしまう。

・例えば、ボーナスを何度かに分けて少額ずつ支給するとか、ボーナスの算定基準を長くして、過去1年間だけでなく過去5年間の業績に応じて支給するなどの工夫も一案。

 

◯イケア効果(なぜ自分の作るものを過大評価するのか)

・労力をかけて何かこしらえると、その作品に愛着を感じ、過大評価するようになる。

・ただし作品を最後まで完成させないと、イケア効果は満喫できない。

・カスタマイゼーションの手間と、お手軽さのバランスをうまく図れば、顧客が大きな価値を感じるような製品を作れるだろう。

・人間の労力に関する4つの原則

①何かに労力を注ぎ込む時、労力をかける対象が変わるだけではない。私たちも変わり、私たちがその対象に与える評価も変わる。

②労力をかければかけるほど、愛着も大きくなる。

③自分で作ったものを過大評価する性向は根深いので、他の人も自分と同じ見方をしているはずだと思い込んでしまう。

④多大な労力をつぎ込んだのに、完成させられなかったものには、あまり愛着を感じない。

 

◯自前主義のバイアス

・自分で生み出したアイデアには愛着を感じ、高く評価してしまう。「自分たちが発明したものでなければあまり価値がない」という考え方。

・自前主義バイアスは、自分で考えたいという思い込みでも生じる。

・愛着が過ぎると、他人の優れたアイデアを排除してしまう恐れがある。

・自分がアイデアを生み出したと感じると、所有意識が高まり、「自分の」アイデアを実際以上に有用で重要だとみなすようになる。

 

◯順応

・人生を変えるほどの大きな出来事にも、いつか順応する。

・良いことが起きても思ったほど幸せにはならないし、悪いことが起きてもそれほど不幸にならない。

・順応するプロセスを中断すると、順応が遅くなる。これを利用して厄介なことは一気に片付け、楽しいことは休み休みにすれば、満足度が大いに固まる。

・私たちは、暗い映画館から日の当たる場所に出たとき何が起こるかは、正確に予測できるが、快楽順応の程度や速度については、予測を外すことが多く、大抵、どちらの面も予想どおりにはならない。長い目で見れば、良いことが起こっても思ったほど幸せにはならないし、悪いことが起こってもそれほど不幸にはならない。

 

◯短期的な感情が及ぼす長期的な影響

・感情はすぐに消えるが、いっときの感情に任せた決定が、長い期間にわたって行動を左右することがある。

・全く無関係な感情でさえ、決定に影響を及ぼす。

・強い感情にとらわれている間は、何も決定を下さないのが賢明。

・横並び運動(ハーディング)。一旦何かを決定するや否やそれが適切な決定だと思い込み(不適切なはずない)、したがって繰り返す(自己ハーディング)。

 

  本書の中では順応の話が特に興味深く、ネガティブなことは順応効果を狙って中断させない。逆に、楽しいことは中断すると順応が遅くなるので、意図的に中断を挟むようにすると楽しさが続く。まだ具体的に生活の事例として落とし込めていませんが、アンテナを張って、「楽しい!」がきたときに「中断ってどうするのか?」というのを試してみたいと思いました。

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