MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

Think smart(ロルフ・ドベリー)

『Think smart』(ロルフ・ドベリー)

 行動経済学視点で日常生活に活かせるポイントをまとめた一冊。先行して販売されている姉妹本『Think clearly』と合わせて読むと全体像がより見えてきます。ちょうど現在並行して読んでいる、ダン・アリエリーさんの行動経済学シリーズと重なるところも多いので(本書でも引用されています)、行動経済学を中心に世で論じられているテーマを集めて読みやすくまとめた内容というふうに感じました。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯先延ばし

・「始めてから成果ができるまでに時間がかかる」。先延ばしを避けるには、自制心を絶えず維持し続けることは不可能。

・なんと言っても効果的なのは、期限を設定すること。

 

◯カチッサー効果

・行動に理由を添えるだけで、その行動は周りからの理解と譲歩を得やすくなる。驚くべきことに、その理由が意味をなしているかどうかは重要ではない。「◯◯なので」というだけで、その行動が正当化される。

 

◯注意の錯覚

・運転中に携帯電話を使用している時の反応速度は、飲酒運転をしている時と同じくらい低下する。携帯電話を手に持っている場合でもハンズフリー通話をしている場合でも、この状況は変わらない。

・注意力不足を裏付ける証拠は何もない。そのため私たちは、「重要なことはすべて認識できている」という危険な錯覚に陥ってしまう。

 

◯努力の正当化(IKEA効果)

・努力して手に入れたものの価値を過大評価してしまう。

・何かに時間と労力を費やした時には、必ずその結果を見るようにする。距離を置いて結果だけを見ること。

 

◯初頭効果と親近効果

・脳は、後ろの方のものより初めの方のものに重きを置く。会議では、意見があるときは躊躇わずに最初に口を開くといい。そうすればあなたは同僚に大きな影響を与えられ、彼らを自分の側に引き込むことができる。逆に後から入ってきた情報の方が記憶に残りやすいという「親近効果」というものもある。

・何においても、途中で受ける印象にはあまり影響力がない。

 

◯金銭が意欲を低下させる

・金銭的な理由で行っているわけではないことに金銭を介在させると、進んで物事を行おうとする意欲を減退させてしまう。「金銭的なモチベーション」を持つと、その人の「非金銭的なモチベーション」は駆逐されてしまう。

 

◯偽の合意効果

・他の人たちと自分の意見の一致具合を過大評価する傾向にある。他の人たちも自分と同じように考え、同じように感じているのだろうと、ついそう思い込んでしまう。

 

◯ハウスマネー効果

・賭け事に勝ったり、偶然拾ったり、遺産として受け取ったお金の扱いは、働いて稼いだお金よりもぞんざいになる。予想外の利益を手にすると、リスクに無頓着になる傾向がある。「悪銭身につかず」。

 

◯フォアラー効果

・人間には、他の多くの人にも適合する性格描写を、自分だけに当てはまるように感じてしまう傾向がある。

・次の文章、自分に当てはまりませんか?86%の人が当てはまるそうです。

「あなたにはかなりの才能があるのにそれを活かし切れていない。しっかりしていて自制心もあるように見えるが、本当は臆病で自信がない。自分の決断が正しいかどうか疑問を抱くときもある。適度な変化を好み、何かを禁じられたり制約を設けられたりすると不満を覚える。独自の考えに誇りを持っているため、他の人の言うことを根拠もなく受け入れたりはしない。軽々しく他人に心を開くのは賢明でないと思っている。外交的で気さくで開放的に振る舞うときもあるが、内向的で懐疑的で控えめになるときもある。どちらかと言えば非現実的な願望を抱くこともある」

 

プラセボ効果

・期待によって脳が変化し、それによって体全体に変化が起きる。形はないが、期待には影響力がある。現実を変える力がある。

 

◯ねたみ

・ねたみは二人の人間がいれば成立する。やきもちは3人の人間が必要。ねたみは、年齢や職業や暮らしぶりの似ている相手がその対象になる。

・「あなたがねたみを感じていいのは、あなたがこうなりたいと目標にしている人に対してだけ」

 

◯チェリー・ピッキング

・都合の悪いものは見せたくない心理。

・「独自に設定した目標」と言う言葉を耳にしたら、要注意。それでは、壁に向かってダーツの矢を放ち、その矢が刺さった場所の周りに的の絵を描くようなもの。

 

◯職業による視点の偏り

・「道具がハンマーしかない者は、どんな問題の中にも釘を見るものだ」

・誰もが自分の得意分野に偏ったものの見方をする。

 

◯情報バイアス(敵に情報を与えたほうがいいわけ)

・情報が多すぎると決められなくなり、決断の質も下がる。

 

◯ニュースの錯覚(ニュースを一切見ない実験)

・脳は、人間同士の話でスキャンダラスで衝撃的で、騒々しく変化の激しい刺激には過度に反応するが、抽象的で複雑で、自分なりに解釈を加えなくてはならない情報にはあまり反応しない。ニュースの製作者はこの現象を利用する。

・ニュースは私たちと無関係。人生やキャリアや仕事に関する決断を下すときに役立ったのはどのくらいあっただろう。

・ニュースは時間の無駄。

 

 脳がそんなふうに判断しているんだという発見が多い内容でした。無意識に判断していると不合理なことが意外と多いもんですね。無意識の意識化。まずは、学んで、気づくこところから。そんなきっかけになる一冊でした。

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