MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

予想どおりに不合理(ダン・アリエリー)

『予想どおりに不合理』(ダン・アリエリー)(◯)

 行動経済学研究の第一人者である著者。2008年に刊行された本書は、米国各メディアのベストセラーリストを席巻した一冊です。著者の行動経済学シリーズの中では基本書にあたります。導入としては、入門編の別本から入ったほうがいいと思いますが、行動経済学を深めていくのに適しています。学問的すぎず、実験と解説がわかりやすく表現されていて読みやすいと思います。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯恣意の一貫性

・恣意の一貫性の基本的な概念は、たとえ最初の価格が恣意的でも、それがいったん私たちの意識に定着すると、現在の価格ばかりか、未来の価格まで決定づけられる。

 

◯アンカリング

・ひとつの品物について出してもいい金額が決まると、同じカテゴリーの別の品物にいくら出すかも、最初の価格(アンカー)との比較で判断されるということ。

・値札そのものがアンカーとは限らない。値札の価格は、私たちが商品やサービスをその価格で買おうと思ったとき、初めてアンカーになる。

 

◯ハーディング

・行列のできるレストランは、「素晴らしいレストランに違いない」と考えて列の後ろに人が並ぶ。他人が前にとった行動をもとに物事の良し悪しを判断して、それにならって行動するときに起こる。

・ハーディングには自己ハーディングと呼ぶ別の種類のものもある。「前にもスターバックスに入って、気持ちよくコーヒーを楽しんだのだから、これは私にとっていい決断に違いない」と次も思う。

 

◯無料の本当の魅力

・無料になると私たちは悪い面を忘れ去り、無料であることに感動して、提供されているものを実際よりも価値あるものと思ってしまう。それは、人間が失うことを本質的に恐れているからではないかと思う。無料の本当の魅力は、恐れと結びついている。無料のものを選べば、目に見えて何かを失う心配はない。

・値段ゼロは単なる値引きではない。ゼロは全く別の価格だ。

 

◯決意表明でなりたい自分になる

・誘惑と戦い、自制心を少しずつ身につけていくのは人間の共通目標。

・最善の策は、人々に望ましい行動の道筋をあらかじめ決意表明する機会を与えることではないかと思う。この方法は、独断的な扱いほど効果的ではないかもしれないが、正しい方向に押し出す助けにはなる。

・給料から貯金できないなら、会社の自動積立制度を利用してもいい。一人で規則正しい運動を続ける気になれないなら、友人と一緒に運動する約束を取り付けてもいい。このように事前に決意表明するためのツールは存在し、自分がなりたい自分になるのを助けてくれる場合がある。

・単純化とペナルティを組み合わせる。

 

◯予測の効果

・見せ方の効果を侮ってはいけない。料理学校で料理を芸術的に盛り付ける方法を学ぶことが、焼いたり揚げたりする方法を学ぶことと同じくらい重視されているのには、訳がある。

・それぞれのワインにあったグラスを買うことに全力を尽くしてもいい。正しいグラスを渡されると味覚に大きな違いを感じる。

・人を映画に誘うとき、とても評判のいい映画だと言い添えれば、相手を一層楽しませることができる。

 

 人間の脳っておもしろいし、判断している場では、本を読んでいるように冷静には判断せず、直感や経験に従って判断しているのだなということも改めて感じます。行動経済学の領域は、知っていると知らないのでは大違い。一度立ち止まって考えれるかという行動にも直結しています。

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