MBA男子の勝手に読書ログ

グロービス経営大学院を卒業したMBA生の書評と雑感。経営に関する基本書、実務書のほか、金融、経済、歴史、人間力、マネジメント力、コミュニケーション力、コーチング、カウンセリング、自己啓発本、ビジネススキル、哲学・思想など、幅広い教養を身につけ、人間性を磨く観点で選書しています。

生命の海<空海>(宮坂宥勝・梅原猛)

『生命の海<空海>』(宮坂宥勝梅原猛

 角川ソフィア文庫の仏教12巻シリーズの9巻目「空海」。文庫本ですが内容がしっかりしていて読み応えありです。①密教とは何か?②共著お二人の対談、③空海の人生について。①を読むだけでも空海の思想について、しっかり学ぶことができます。シリーズ制覇まではまだまだですが、着実に読んで全体の流れを掴んでいきたいと思います。

 

(印象に残ったところ・・本書より)

◯『虚空蔵菩薩求聞持法経』の教え(『三教指帰』より)

・「もし正しい方法によって、ここに示してある真言を一百万回唱えると、あらゆる経典の文句をすべて暗記することができる」

・これは仏のお言葉であるから間違いないと信じ、木をこすって火を出すように少しの間もおこなることなく修行に励んだ。すなわち、阿波の大滝山にのぼり、土佐室戸岬坐禅をした。果たして谷はこだまし、明星が姿を現し、奇跡を示した。それ以来、私は名誉や財産に対する欲望がなくなった。

 

 ◯『三教指帰』より

儒教道教も本質的にいって自己自身だけの世界に閉じこもった、利己的な世界観・人生観の域を出ない。ところが、仏教は己をも含めた生きとし生けるもの、一切衆生の救いを究極の目標とする広大無辺な教えである。

 

衆生救済

密教によれば、自らはどこまでも高い宗教的心理を追求するとともに、己の悟りを求めることを差し置いても他の者を救済し、他に利益を与えることに努めなければならない。そこで、そうした衆生救済のための多くの事業がなされている。その一例として821年6月より8月までの3ヶ月間に四国讃岐の満濃池を修築したことが挙げられる。

 

密教

・言葉で表現されるとすれば、当然それは言葉の機能によって限定されざるを得ない。いわゆる顕示の教えということになる。一方は内に秘められた、無限定の絶対の世界であり、他方は外に顕わされ、限定された相対の世界である。

・それは非日常的な言葉で象徴的に語られるか、日常的な言葉で説明的に語られるかといった違いがあるといっても良い。

・宗教的世界は直接体験の世界である。直接体験を他に伝達する場合には言葉を用いなければならないが、言葉の機能には自ずから限界がある。言葉は単に概念を伝える道具に過ぎない。宗教的世界は日常的な言葉の働く領域を超えたところの直接体験の世界。ここに、日常的な言葉とは異なった陀羅尼が存在する理由が認められる。

 

◯即身成仏

空海は現世において宗教的な最高の自覚が得られたならば、直ちにこの肉体を持った自己の全存在を挙げて、そのまま宗教的理想の境地に到達することを力強く説き示した。

・その論理的な根拠は、絶対者及び曼荼羅世界が生きとし生けるものすべてのものに本来、平等に備わっているとするところにある。

 

◯瞑想の世界(『即身成仏義』より)

・即身成仏の理論と実践(原文より)

 六大無碍にして常に瑜伽なり。

 四種曼荼(曼荼羅の略称)おのおの離れず。

 三密加持すれば速疾に顕はる。

 重々帝網なるを即身と名づく。

 法然に薩般若を具足して

 心数心王刹塵に過ぎたり。

 各々五智無際を具す。

 円鏡力の故に実覚智なり。

・「六大」:地水火風空識。地などの5つは、物質的存在。識は、精神的存在であるが、これらはともに一つの実在において不可分の状態にある。

・「三密加持」:仏教では我々の身体の働きと言語活動と精神の働きとを身・口・意の3つの働き(三業)と言っている。心の働きが言葉の働きになって現れ、言葉の働きが身体の働きとなって表現されるところに、我々の人格的行為の一応の完結が認めうる。

 

 空海の世界はまとめるのがとても難しく、印象に残ったところを断片的に取り上げる形となりますが、それは密教が言葉で表現できない世界観であることも大きく影響しているなと感じます。「瞑想の世界」の原文は、もう少し掘り下げて味わってみようと思います。

 

生命の海「空海」―仏教の思想〈9〉 (角川文庫ソフィア)

生命の海「空海」―仏教の思想〈9〉 (角川文庫ソフィア)

 

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