即身成仏儀(空海)
『即身成仏儀』(空海)
本書は、角川ソフィア文庫のビギナーズ日本の思想シリーズの一冊。空海の著書である『即身成仏儀』『声字実相義』『吽字義』の3冊の要点がまとめられています。正直、どれもパッと理解できる内容ではなく、難しいです。できればYouTubeなどで概要を掴んで、興味を持った段階で書籍の方に移る方が自然かも。私は、高野山大学のレポート作成のために、密教の基本的な書籍を幅広く読む一環で本書、特に『即身成仏儀』を読みました。難しいなりに、理解が曖昧なりに、それはそれで現状として受け止めつつ、レポートに活かせそうな要点のみピックアップしてみたいと思います。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯円鏡力の故に実覚知なり
・大日如来は五智五仏の重層的な広がりで示されるように凡夫一人一人とも深く関わっていて、基本的に凡夫である自分とも一体といえる。空海は、著作の処々に「覚れる者をば大覚と号し、迷える者どもをば衆生と名づく」と述べているが、我即大日という大原則に衆生はただ気づいていないだけなのである。仏と自分との深い関わりを、確認できるか否かが分かれ目なのである。だから真言密教で最も重要なことは、これまで述べてきたような脈々とした法身大日をどうとらえ、凡夫の自分と一体であることを認知することであり、これを即身成仏と表現するのである。
・真言密教では、人間は本来、仏と一緒であり同等なのである。ただし法身大日の実在に気づかなければダメなのである。ただこの理に気づきさえすれば、煩悩にまとわれたこの肉身のままで、大日にいだかれている自分を発見できるのである。この意味から、即身成仏思想というのは、仏身観の大転換であり、あえて言えば、発想のどんでん返し、と言えるのである。
◯真言密教の人間観
・中核となるのは、なんといっても、既成の一切の価値の根本に、法身大日如来という共通の根っこの如き生命体が存在していることである。その大日は、曼荼羅にすでに図示されている通り、五智五仏を備え、その五智はあらゆるものにまで広がり、五智無際智として末は虚空に遍満し、われわれ凡夫にも行き渡り、その結果、われわれ凡夫の一人ずつがすべて大日と一体になっている、という仏陀観と人間観なのである。こうした深い趣きを知れば、われわれは大日と同じだ、ということに気づくのであり、この趣きを胸に置いて毎日を生きるのが即身成仏思想なのである。本来的には、凡夫もすべて大日に等しいのであるが、この趣きを「覚れる者をば大覚(仏陀、つきつめれば大日如来)と号し、迷える者をば衆生と名づく」だけのことなのである。
本書を読んだ先にまとめないといけないレポートのテーマの一つがこれ。
◯密教ではマクロコスモス(宇宙・大日如来)とミクロコスモス(自己・人間)とは本質的に一つであるという。それは具体的には密教思想のどのような点において確認することができるのか。またそれはどのような理論において主張されているのかについて論じなさい(3,800〜4,000字)
でもって、補足説明が続きます。
・密教における人間観とはどのようなものであると考えられるのか。六大説の変遷(要素→象徴)ならびに密教の修行法との関係に焦点を当てて論じてください。その際、マクロコスモス・ミクロコスモス・宇宙・生命といった語句が何を意味しているのか、自分自身の言葉で定義しつつ説明できるように心がけてください。
なかなかハードです。