『自分を鍛える』(ジョン・トッド、訳・解説:渡部昇一)
著者は約200年前の米国人。本書は、習慣、集中力・記憶力、読書、時間、話し方・交際術、頭・体・気力、のテーマについて、「こうあるべし」というあり方、考え方がまとめられています。英国でも15万部売られたということで、この時代では大ベストセラーとなった。約25年後に出た、サミュエル・スマイルズの『自助論』(1859年)の最初の30数年分に匹敵する驚異的な部数。前向きに、懸命に人生を生きたい人が自らを鍛えるための一冊です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯考える頭には限界がない
・ものを手に入れるには、必ず努力しなければならない。いやしくも自分が所有したり他人に提供したりする価値のあるものには、すべて努力という対価が必要。この事実には例外がない。
・人間の偉大な業績というのは、ささやかな、しかし継続した努力の賜物。
・謙虚な人の方が、生意気な人間よりも、同胞からはるかに思いやりや善意を受けやすいもの。その謙虚さが揺るぎないものであるためには、それは正しい自己認識に基づいていなければならない。そしてこれこそ勉学の成果。
◯いい習慣を作る
・人となりというのは、その人が身につけている諸々の習慣のこと。人間とはすなわち、習慣の塊。時間の使い方や仕事の仕方、考え方や感情に、ある特定のパターンが生ずるようになる。第二の天性。
・「寝坊しがちな人間は、一日中あたふたし、夜になってもまだ仕事が山積みになっている(ベンジャミン・フランクリン)
・「朝寝坊をする人間で一角の人物になった者など一人もいない」(『ガリヴァー旅行記』の著者スウィフト)
・一度に一つのことだけしかやらず、それだけをまず断固としてやり遂げるように努力する。
・自分の置かれている境遇に満足するようにする。不平不満ほど、たちどころにその人間を不愉快な人間にし、本人自身の心の平安をもみ出すものはない。
◯集中力・記憶力アップ
・長時間勉強するより、意識を精一杯集中して短時間みっちり勉強した方がはるかにいい。勉強は午前中にやること。
・一つの授業、1冊の本を完全に徹底的に理解している方が、10の授業、10冊の本を生半可に理解しているよりずっとためになる。
・「復習の積み重ねは、信じられないほど効果的な進歩を生み出す」(デンマークの古典学者ヴィッテンバッハ)
◯読書法
・「読書は充実した人間を作り、会話は機転の効く人間を作り、執筆は緻密な人間を作る」(フランシス・ベーコン)
・読書によって成長しようと考えているなら、まず丁寧に読むこと。読書はゆっくりとあるいは慎重になされるべきである。
・書物があふれている時代に、片っ端から全部読めるなどとは思わないこと。まず1章だけ読んでみると良い。その本が読むに値するものかどうかわかる。ワインの良し悪しであればグラスに1〜2杯飲んでみる。樽の中身を全部飲む必要はない。または、他の人が試して、その効用が実証されてから手を出す。
・「人に語る」ことで、その本のエッセンスは確実に物にできる。
・読書にかけた時間の4分の1を考察に充てる。
◯持ち時間を最大限に活かす
・何か新しい有意義なことを成し遂げるのに、普段の生活を大きく、あるいは目立って変える必要はない。ただ現在、無駄にしている時間を残らず活用しさえすれば良い。
・予定に追いまくられていたのでは、落ち着いて自由にものを考えることはできない。ギリギリになるまで取りかからないのでは、自分自身をコントロールしているとは言えない。
・几帳面さは人格に重みを与える。
・手をつけてはおしまいで完全にやり遂げないような習慣を小さいときに身につけてしまうと、その害は一生を通じてますますひどくなる。
◯話し方・交際術
・会話の才能を磨くことほど、我々がなおざりにしているものはない。しかし、これほど楽しさを増してくれる有益なものは他にない。
・少人数の集まりであれ、そこにいない人の悪口を言えば、間違い無く相手の耳に全部届くもの。
・他人の悪口を言う人間は、他でもない自分自身を一番欺いている。
書かれていることはまさにその通りという内容。内省本としての使い方が向いているなと感じました。どういう時間を積み重ねていくのか、その積み重ねが人格を作り、人生を作っていくのだなぁと思います。