『スイッチ!』(チップ・ハース、ダン・ハース)(◯)
感情は「象」、理性は「象使い」に喩え、「変われない」を「変わる」に変えるステップをまとめた一冊。自己変革するにあたって押さえておくべきポイントがわかりやすく解説されていて、心、頭、環境を変えていきたい方におすすめの一冊です。ハヤカワノンフィクションシリーズは、良書を文庫本化して再販しており、いい本が多いのが特徴です。
(印象に残ったところ・・本書より)
◯「変化」の3つの意外な事実
①単純な変化の問題をすぐに複雑な変化の問題に置き換えてしまう。
・人間の問題に見えても、実は環境の問題であることが多い。
・ポップコーンを食べる量を減らしたいなら、解決方法は簡単。容器を小さくすればいい。相手の知識や考え方にまで気を回す必要はない。
②怠けているように見えても、実は疲れ切っている場合が多い。
・セルフコントロールは消耗資源。自己管理が心身を消耗させる。起こそうとしている変化が大きければ大きいほど、セルフコントロールは奪われていく。
③抵抗しているように見えても、実は戸惑っている場合が多い。
・人を変えたければ、とびきり明確な指示を与えなければならない。
◯本書のフレームワーク
①象使いに方向を教える
1)ブライト・スポットを見つける
・うまくいっている部分を探し真似をする。
・困難な状況に直面すると、象使いはあちこちに問題を見つけて「分析麻痺」に陥る。
・変化を進めるには、象使いに方向を教える必要がある。
・どこへ向かうのか、どう行動するのか、どんな目標を追い求めるのかを伝える必要がある。
・変化を起こそうとしている時、象使いに道を案内するこの上希望になる。
2)大事な一歩の台本を書く
・全体像で考えず、具体的な行動を考える。
・私たちは、より多くの選択肢に直面するほど「負担を背負いきれなくなる。こうなると選択肢の自由は私たちを解放するどころか、萎縮させるものになる。」
・曖昧さは象使いを疲れさせる。変化の難しい部分、つまり麻痺を引き起こす部分はまさに詳細の中にある。
3)目的地を指し示す
・目的地はどこか、そこへ向かうメリットは何かを理解すれば変化は楽になる。
・「もっと健康的な食生活を送る」といった総括的な目標は、必ずと言っていいほど不明瞭。そして、その曖昧さが象に言い逃れの余地を与え、失敗を正当化しやすくなる。
②象にやる気を与える
1)感情を芽生えさせる
・知識だけでは変化を引き起こすには不十分。感情を芽生えさせよう。
・人は変化を引き起こそうとして何も変わらないと、理解不足のせいにすることが多い。しかし、変化に失敗するのは理解不足が原因ではない。
・変化すべき理由を非の打ちどころがないくらい合理的に説明しても、人々は行動を変えない。
2)変化を細かくする
・象が怯えないくらいまで、変化を細分化しよう。
・人は、短い旅の出走ゲートにいるよりも、長い旅が途中まで終わっている方がやる気を出す。思っていたよりもゴールラインの近くにいると感じさせるのが、行動を促す一つの手段。
・5分間お掃除レスキュー。タイマーで5分間セットしてお掃除する。とりあえず重い腰を上げることができる。それが最も難しい部分。面白くもない作業を始めるのは、それを続けることよりも難しい。
3)人を育てる
・アイデンティティを養い、しなやかにマインドセットを育もう。
・結果モデル:人は決定を下す時、選択肢の費用と便益を評価して、満足度が最大になる選択を行う。
・アイデンティティモデル:自分は何者か?自分はどのような状況に置かれているか?自分と同じ状況にいる人々ならどう行動するか?アイディンティティは、人々の意思決定において中心的な役割を果たす。
③道筋を定める
1)環境を変える
・環境が変われば行動も変わる。したがって環境を変えよう。
・人は巨大な容器を渡されると大喰らいになる。大事な約束に20分も遅れてハンドルの前に座れば、その人は乱暴なドライバーになる。
・人間の問題に見えても、実は環境の問題であることが多い。
2)習慣を生み出す
・行動が習慣になれば、象使いの負担はなくなる。習慣を促す方法を探そう。
・環境は習慣を強化(阻害)することで、私たちに知らず知らずの影響を与える。
・良い行動を自動運転で自然と行えるというのは、大きなプラス。
3)仲間を集める
・行動は伝染する。行動を広めよう。
セルフマネジメントする前に環境をどう整えるかというのは、一つのポイントだなと思います。環境を整えて、その中でいい行動、考え方を習慣化していくと実に楽なもの。よりより環境づくりを求めて、少しずつチューニングして、場所、時間を変えてみるという行動は意味のあることだなと、自分の行動を裏付けしてもらったようでちょっと嬉しくなりました。